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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第一部 10年ぶりの帰還

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第81話 決着

100階層に、二つの存在が向かい合っていた。


 古龍。


 そして、蓮。


 先ほどまでとは、明らかに空気が違う。


 古龍は蓮を睨みつける。


 目の前に立つ人間から、先ほどまでとは比べものにならないほどの力を感じていた。


「グォォォォォッ!!」


 古龍が咆哮を上げる。


 その巨体が、一気に動いた。


 地面が砕ける。


 巨大な身体が蓮へ迫る。


 鋭い爪が振り下ろされた。


 ――だが。


 蓮の姿が消える。


「……」


 次の瞬間。


 蓮は古龍の横を通り過ぎていた。


 爪は空を切る。


「……遅い」


 蓮は振り返る。


 古龍が驚いたように蓮を見る。


 先ほどまで。


 古龍の攻撃を避けることに、蓮は全神経を集中させていた。


 それでも完全には避けきれなかった。


 だが、今は違う。


 古龍の身体の動き。


 筋肉の動き。


 魔力の流れ。


 攻撃へ移る直前の僅かな変化。


 全てが手に取るように分かる。


 古龍は再び距離を詰める。


 右の爪。


 左の爪。


 尾。


 そして噛みつき。


 次々と繰り出される攻撃を、蓮は紙一重でかわしていく。


 一歩。


 半歩。


 身体を僅かにずらすだけ。


 攻撃が、蓮の身体を掠めることすらない。


「……」


 蓮は冷静に古龍を見ていた。


 速い。


 力も強い。


 防御力も圧倒的だ。


 それでも――


 今の蓮には、全てが遅く見えていた。


 古龍が翼を大きく広げた。


 一気に空へ飛び上がる。


「グォォォォッ!!」


 上空から急降下する。


 その巨体そのものを武器にした突撃。


 蓮は魔剣を構える。


 古龍が迫る。


 そして――


 蓮の身体が横へ滑った。


 古龍が地面へ激突する。


 ――ドォン!!


 地面が大きく陥没した。


 蓮はその横を走り抜ける。


 魔剣を振る。


 ――ザンッ!!


 古龍の龍鱗が裂けた。


「グォッ!?」


 古龍が初めて、明確な苦痛の声を上げる。


 血が流れる。


 蓮は魔剣を見る。


 刀身には、僅かな血が付着している。


「……斬れる」


 先ほどまでは、龍鱗を破ることすら簡単ではなかった。


 今は違う。


 魔力を纏わせた魔剣が、龍鱗を容易く切り裂いている。


 古龍が怒りに任せて吠える。


「グォォォォォォォッ!!」


 周囲の魔力が一気に膨れ上がった。


 火。


 風。


 雷。


 三つの属性が古龍の周囲へ集まっていく。


 古龍が魔力を操作する。


 複数の属性が荒々しく混ざり合い、巨大な魔力の塊へ変わっていく。


 空気が震える。


 地面が焼ける。


 そして――


 古龍の口が大きく開いた。


「……」


 蓮は動かない。


 次の瞬間。


 凄まじいブレスが放たれた。


 炎と風と雷。


 膨大な魔力を含んだ破壊の奔流が、100階層を埋め尽くすように蓮へ迫る。


 逃げ場はない。


 だが――


 蓮は逃げなかった。


 魔剣を構える。


 刀身へ魔力を集中させる。


 これまでとは違う。


 魔力が、完全に意思へ従っている。


 一本の刃へ。


 極限まで凝縮されていく。


「……」


 そして――


 一閃。


 ――ズァンッ!!


 魔力を纏った魔剣が、ブレスを真っ二つに切り裂いた。


 巨大な奔流が左右へ分かれる。


 蓮の身体を掠めることすらない。


「……」


 蓮は静かに魔剣を下ろした。


 古龍が動きを止める。


 信じられないものを見るように、蓮を見つめている。


 自分の最大級の攻撃。


 それを――


 正面から斬られた。


「……グル……」


 古龍が後ずさる。


 初めてだった。


 目の前の人間に対して、古龍が明確な警戒を見せた。


 だが――


 蓮はすでに動いていた。


 一瞬で距離を詰める。


 古龍が爪を振る。


 蓮はその下を潜り抜ける。


 魔剣を振る。


 龍鱗を斬る。


 反対側へ回る。


 再び斬る。


 古龍が尾を振る。


 蓮は跳ぶ。


 空中で身体を捻り、そのまま古龍の背後へ着地する。


「……これで終わりだ」


 蓮が魔剣を構える。


 古龍が振り返る。


 だが、遅い。


 蓮の一閃が、古龍の身体を深く斬り裂いた。


「グォォォォォッ!!」


 古龍の巨体が大きく揺れる。


 膝をつく。


 それでも立ち上がろうとする。


 《自己再生》Lv.10が発動する。


 傷が急速に塞がっていく。


 蓮はその様子を冷静に見ていた。


「……厄介だな」


 だが――


 次の瞬間には、すでに古龍の懐へ入っていた。


 魔剣が閃く。


 再生したばかりの身体を、再び斬り裂く。


 さらに一撃。


 もう一撃。


 古龍の再生速度を上回るほどの攻撃が叩き込まれる。


 古龍は反撃することすらできない。


 圧倒的だった。


 ついさっきまで、自分より強い存在だった古龍。


 その古龍を――


 今の蓮は、完全に上回っていた。


「……」


 蓮は最後の一撃を振り抜く。


 古龍の巨体が、ゆっくりと崩れ落ちた。


 ――ドォォン。


 100階層に、巨大な音が響き渡る。


 古龍は動かない。


 蓮は魔剣を下ろした。


「……終わった」


 静まり返った100階層。


 そこには、古龍を圧倒した蓮だけが立っていた。

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