↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第一部 10年ぶりの帰還

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
79/98

第79話 古龍の逆鱗

古龍は、吹き飛ばされた蓮へ向かって突進した。


 《竜の咆哮》には、強力な麻痺効果がある。


 古龍は、蓮の身体が麻痺によって動かなくなったと思っていた。


 巨大な身体が、一気に迫ってくる。


 だが――


「……まだまだだな」


 蓮は立ち上がった。


 身体は、問題なく動く。


 《竜の咆哮》による麻痺は、蓮には効いていなかった。


 《状態異常耐性》EX。


 その効果によって、麻痺を完全に無効化している。


 古龍の目が見開かれた。


 動けないはずの相手が、普通に立っている。


 予想外のことに、古龍の動きが一瞬だけ止まった。


 その隙を――


 蓮は見逃さなかった。


「……ここだ」


 蓮は地面を蹴った。


 一瞬で古龍との距離を詰める。


 魔剣へ魔力を流す。


 刀身に風が纏う。


「――はっ!」


 蓮は全身の力を乗せて、魔剣を振り抜いた。


 ――ズバッ!


 古龍の鱗が深く裂けた。


 黒い鱗が数枚、地面へ落ちる。


 そして――


 傷口から血が流れた。


 古龍の動きが止まる。


 自分の身体から流れる血を見つめる。


 これまで傷つけられることのなかった身体。


 そこに、明確な傷が刻まれていた。


 古龍の瞳が大きく見開かれる。


 次の瞬間――


「グォォォォォォォォォッ!」


 咆哮が、100階層全体を震わせた。


 古龍の身体から、凄まじい魔力が噴き出す。


 空気が震える。


 地面が揺れる。


 周囲の魔力が、一気に古龍へ吸い寄せられていく。


 古龍は、目の前の蓮だけを睨みつける。


 その瞳には、明確な敵意が宿っていた。


 古龍の口元に、赤い光が生まれる。


 火の魔力。


 その周囲を、風の魔力が激しく渦巻いていく。


 火が大きく燃え上がる。


 風がそれを包み込む。


 だが、古龍はそこで止めなかった。


 《魔力操作》によって、二つの魔力を自在に操る。


 渦巻いていた火と風が、徐々に一点へ集められていく。


 巨大だった火が圧縮される。


 風もさらに速度を増し、火の周囲を高速で回転する。


 圧縮されるほど、魔力の密度が高くなっていく。


 周囲の空気が歪む。


 熱が一気に上昇する。


 それでも、古龍はさらに魔力を注ぎ込む。


「……!」


 蓮の表情が変わった。


 明らかに、これまでの魔法とは違う。


 古龍が持つ膨大な魔力を、一点に集中させている。


 やがて――


 古龍の口元にあった巨大な火が、異様なほど小さく圧縮された。


 だが、その小ささとは反対に、そこへ込められた魔力は凄まじい。


 周囲を回る風も、さらに速度を増していく。


 火を中心に、風が何重にも渦を巻く。


 古龍が大きく口を開いた。


 そして――


 圧縮されていた魔力が、一気に解放された。


 ――ドォォォォォン!!


 巨大な火と風の奔流が、凄まじい速度で放たれた。


 最初は一本の巨大な奔流だった。


 だが、進むにつれて風が周囲の空気を巻き込み、その規模を急激に広げていく。


 火が渦を巻く。


 その周囲を風が激しく回転する。


 地面が次々と吹き飛び、焼けた岩が宙へ舞い上がる。


 まるで巨大な災害そのものだった。


「……!」


 蓮はすぐに横へ跳んだ。


 速度なら、自分の方が上。


 そのまま攻撃範囲の外へ逃げる。


 だが――


 火と風の渦は、蓮が逃げた方向へ広がっていく。


「……広がるのか!」


 蓮はさらに速度を上げる。


 右へ。


 そして左へ。


 それでも、逃げた先まで火と風が押し寄せてくる。


 風が周囲の空気を巻き込みながら、攻撃範囲を広げていく。


 逃げれば逃げるほど、避けるための場所がなくなっていく。


「……くそっ!」


 蓮はさらに身体強化を強めた。


 全力で駆ける。


 だが――


 間に合わない。


 火と風の奔流が、蓮の身体へ迫る。


 蓮は咄嗟に魔力を集中させた。


 それでも、完全には避けきれなかった。


 ――轟ッ!


 凄まじい衝撃が、蓮の身体を飲み込んだ。


「ぐあっ……!」


 身体が吹き飛ばされる。


 地面へ叩きつけられ、そのまま何度も転がった。


 全身に激痛が走る。


 骨が砕け、筋肉が裂ける。


 焼けた皮膚から血が流れる。


 蓮は、そのまま動かなくなった。


 その瞬間――


 蓮の指にはめられていた指輪が、淡い光を放った。


 ――パキン。


 指輪が砕ける。


 砕けた指輪の光が、蓮の身体へ吸い込まれていく。


 次の瞬間――


 蓮の身体に刻まれていた致命傷が、完全に消えた。


 指輪が、蓮の命を肩代わりした。


 だが――


 凄まじい衝撃によって受けた損傷は、残っている。


 その直後。


 蓮の身体に変化が起きた。


 《高速自己再生 Lv.8》。


 その力が発動する。


 焼けた皮膚が、急速に再生していく。


 裂けた筋肉が繋がっていく。


 砕けた骨が、元の形へ戻っていく。


 流れ出ていた血も止まり、傷口が次々と塞がっていく。


 《高速自己再生》によって、蓮の肉体は凄まじい速度で修復されていた。


 だが――


 意識だけは戻らない。


 あまりにも強烈な衝撃によって、蓮の意識は深く沈んでいた。


 古龍がゆっくりと近づいてくる。


 地面に倒れた蓮を見下ろす。


 動かない。


 そして――


 先ほどまで感じていた蓮の気配が、消えている。


 古龍は、蓮が死んだと判断した。


 それ以上攻撃することなく、蓮から離れていく。


 だが――


 蓮の身体では、すでに再生が続いていた。


 傷は塞がり。


 骨は繋がり。


 肉体は、少しずつ元の状態へ戻っていく。


 そして――


 ほんの一瞬後。


 蓮の指先が、わずかに動いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。