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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第一部 10年ぶりの帰還

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第69話 31階層・水エリア

31階層へ続く階段を下りた蓮は、足を止めた。


「……これは」


 目の前に広がっていたのは、これまでとはまったく違う光景だった。


 巨大な湖。


 その先には、水路のように続く川。


 階層全体に水が広がっている。


 ただし、蓮が立っている場所にはしっかりとした地面が残っていた。


「水の階層か」


 蓮は周囲を見渡す。


 水面は静かだった。


 だが――


「……いるな」


 《気配察知》が反応する。


 水の中から、複数の気配が近づいてくる。


 蓮は剣を抜いた。


 次の瞬間。


 バシャッ!


 水面から、一匹の魔物が飛び出した。


「鑑定」


『名称:アクアリザード』


『種別:魔物』


『状態:良好』


『危険度:中』


『筋力:中』


『防御力:中』


『敏捷性:高い』


『魔力:中』


『攻撃方法:噛みつき・水弾』


『弱点:雷属性』


「水属性の魔物か」


 アクアリザードが口を開く。


 その周囲に魔力が集まっていく。


「……これか」


 蓮は《魔力感知》を使った。


 魔力が集まり、形を変えていく。


 そして――


 バシュッ!


 水の塊が飛んできた。


 蓮は横へ避ける。


 水弾が地面に当たり、大きな音を立てた。


「水を魔力で作ってる……」


 蓮は魔物を観察する。


 魔力の流れ。


 集める場所。


 形を作る順番。


 30階層で手に入れた水属性魔力結晶と同じような魔力の性質を感じる。


「……やっぱり、水属性魔力だ」


 アクアリザードが再び水弾を放つ。


 蓮は避けながら、魔力の流れを追い続けた。


 何度も。


 何度も。


 魔物の動きを観察する。


「……なるほど」


 蓮は右手を前へ出した。


 魔力を集める。


 火魔法とは違う。


 無理に形を作ろうとするのではなく、流れを作る。


 イメージする。


 水。


 流れ。


 形。


「……いけるか?」


 手のひらに魔力が集まる。


 だが――


 何も起こらない。


「……まだか」


 蓮は魔物の動きを見る。


 もう一度、水弾が飛んでくる。


 避ける。


 そして再び試す。


 魔力を集める。


 流す。


 形を作る。


 失敗する。


 また試す。


 何度も繰り返す。


 少しずつ、水属性魔力の感覚が分かってくる。


「……これなら」


 蓮は手のひらに意識を集中させた。


 魔力が集まる。


 そして――


 ポタッ。


 一滴の水が落ちた。


「……!」


 成功した。


 ほんの一滴。


 それでも間違いなく、水だった。


「できた……」


 蓮は驚きながら手のひらを見る。


 だが、まだ終わらない。


 アクアリザードが再び襲いかかってくる。


「今度は……!」


 蓮は水の流れを意識する。


 魔力を集める。


 形を作る。


 そして――


『生存適応が発動しました』


 身体の奥が熱くなる。


 魔力の流れが、さらに鮮明になった。


 水属性の魔力。


 その性質が、感覚として身体に刻み込まれていく。


 次の瞬間。


『スキル《水魔法》を獲得しました』


「……!」


 蓮は目を見開いた。


「《水魔法》……」


 初めて手に入れた、火以外の魔法。


 蓮は手のひらへ魔力を集める。


「水魔法」


 すると――


 シュッ。


 手のひらの上に、小さな水球が生まれた。


「……できた」


 水球はゆっくりと浮かんでいる。


 まだ小さい。


 けれど、確かに自分の意思で生み出した水だった。


「火とは全然違うな」


 蓮は水球を眺める。


 火は燃え上がる。


 水は形を変える。


 扱い方も違う。


「もっと練習しないとな」


 蓮は水球を消した。


 そして、目の前のアクアリザードを見る。


「まずは、こいつを倒すか」


 剣を構える。


 水魔法を覚えたばかり。


 まだ使いこなせるわけではない。


 それでも――


 蓮に、新しい力が加わった。


 31階層。


 水に囲まれた新しい階層で。


 蓮の戦い方は、また一つ広がった。

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