第68話 水属性の結晶
蓮は宝箱の蓋に手をかけた。
10階層のボスを倒したときにも、宝箱があった。
その中から手に入れたスキルオーブによって、《魔力感知》を覚えた。
20階層のボスを倒したときには、魔力回復の指輪を手に入れた。
「今回も何か入ってるのか」
蓮は宝箱を開ける。
中に入っていたのは――
一つの青い結晶だった。
「……なんだ、これ?」
手のひらほどの大きさ。
透明に近い青色をしていて、内部には水が流れているような模様が浮かんでいる。
蓮は結晶を手に取った。
「鑑定」
すぐに表示が浮かぶ。
『名称:水属性魔力結晶』
『種別:魔力結晶』
『品質:高品質』
『状態:良好』
『属性:水』
『魔力含有量:高』
『魔力純度:高』
『特性:魔力を注入することで水属性魔力を蓄える』
『効果:蓄えた水属性魔力を水へ変換する』
『生成水:飲用可能』
「……水を作れるのか」
蓮は表示を見つめた。
水属性魔力を蓄える。
そして、それを水へ変換する。
「便利だな」
ダンジョンの中では、水は貴重だ。
今までは水場を見つけて、そこから水を確保していた。
この結晶があれば、水場を探す必要もなくなる。
「試してみるか」
蓮は結晶を握り、魔力を流す。
すると――
青い光が結晶の内部へ吸い込まれていった。
「……入っていく」
蓮は《魔力感知》を使う。
結晶の内部に、自分が注いだ魔力が流れている。
だが、ただの魔力ではない。
結晶の中で、少しずつ性質が変化している。
「……これが水属性魔力か」
蓮はさらに魔力を注ぐ。
青い光が強くなる。
そして――
結晶の先端から、一滴の水が落ちた。
「……!」
ポタッ。
床に小さな水滴が落ちる。
蓮は目を見開いた。
「本当に水になった」
もう一度、魔力を注ぐ。
今度は先ほどより多くの水が流れ出した。
「……飲めるんだよな」
蓮は鑑定結果を確認する。
『生成水:飲用可能』
「よし」
手のひらに水を受ける。
そして、口に含んだ。
「……普通の水だ」
味に変なところはない。
蓮は残った水を飲み干した。
「これなら、水場を探さなくてもいい」
ダンジョンの奥へ進むほど、水を確保するのは難しくなる。
この結晶があれば、その心配が大きく減る。
「かなり使えるな」
蓮は結晶を見つめる。
だが――
もう一つ、気になることがあった。
「……さっきの魔力」
蓮は再び《魔力感知》を使う。
結晶の中には、先ほど注いだ魔力が残っている。
それは最初に注いだときとは違う。
水のように流れ。
ゆっくりと循環している。
「……魔力が変わってる」
蓮は結晶を通して、その流れを感じ取る。
火魔法のときとは違う。
熱くない。
激しくもない。
ただ静かに流れている。
「水属性の魔力って、こういうものなのか」
蓮はしばらく結晶を観察した。
魔力を注ぐ。
変化を感じる。
そして、水が生まれる。
何度か繰り返すうちに、少しずつ水属性魔力の性質が分かってきた。
「……面白いな」
今はまだ、水を作ることしかできない。
自分の魔力だけで水を生み出すこともできない。
それでも――
この結晶は、水属性魔法を理解するための大きな手がかりになりそうだった。
「しばらく使ってみるか」
蓮は水属性魔力結晶をアイテムボックスへ収納した。
これで、水の確保がさらに楽になった。
そして同時に、新しい属性の魔力を知ることもできた。
「……31階層に行くか」
蓮は剣を手に取る。
ボス部屋を出る。
その先には、まだ見たことのない階層が続いている。
蓮は一度だけ振り返った。
そして――
31階層へ向かって歩き始めた。




