第65話「冒険者の誕生」
魔物を倒すことで、人間にも特殊な能力が発現する。
その事実が世界に広まるまで、そう時間はかからなかった。
最初はごく一部の人間だけだった。
だが、ダンジョンへ入る者が増えるにつれて、能力を得る人間も少しずつ増えていった。
「また能力者が確認されたぞ」
「今度はどんな能力だ?」
「身体能力が上がったらしい」
「こっちは炎を出せるようになったって話だ」
発現する能力は、人によって違っていた。
身体能力が向上する者。
魔力を感じ取れるようになる者。
特殊な感覚を得る者。
中には、炎や水を操るような力を得る者まで現れた。
世界は少しずつ、その力を受け入れ始めていた。
◇
一方で、問題も増えていた。
ダンジョンは危険だった。
魔物は強く、奥へ進むほど危険度も増していく。
それでも、ダンジョンには価値があった。
魔石。
未知の鉱物。
特殊な植物。
魔物から採れる素材。
どれも、これまでの世界には存在しなかったものだった。
研究者たちは、それらの性質を調べ始める。
企業も資源としての価値に目を向ける。
そして――
ダンジョンへ挑む人間が増えていった。
◇
しかし、誰でも攻略できるわけではない。
「また負傷者が出たぞ!」
「第2階層で撤退したらしい」
「スキルを持っていても、簡単には進めないか」
ダンジョン攻略には危険が伴う。
経験の浅い者が無理をすれば、命を落とすことさえあった。
各国政府は対策を迫られた。
軍だけでは、すべてのダンジョンを管理することはできない。
民間の能力者たちを組織し、安全に攻略させる必要があった。
そこで各国は、ダンジョンへ挑む者を登録・管理する制度を作り始めた。
◇
そして、ある国で一つの呼び名が生まれた。
ダンジョンへ入り。
魔物と戦い。
未知の資源を集め。
その奥を目指す者たち。
彼らは――
冒険者
そう呼ばれるようになった。
◇
冒険者には、能力や実績、攻略経験などに応じてランクが設定された。
低いランクから始まり、実績を積むことで上位ランクへ昇格する。
強い魔物を倒した者。
より深い階層へ到達した者。
危険なダンジョンを攻略した者。
そうした者ほど、高い評価を受ける。
やがて各国で同じような制度が整えられていった。
ダンジョンの出現から、まだそれほど時間は経っていない。
それでも、人類は少しずつ新しい世界に適応していた。
◇
冒険者という新しい職業が生まれた。
ダンジョンを攻略する者。
魔物と戦う者。
そして、未知の世界を切り開く者。
人々はまだ知らなかった。
ダンジョンの奥に何があるのか。
どこまで続いているのか。
そして――
この世界が、これからどれほど大きく変わっていくのか。
こうして、人類とダンジョンの新しい時代が始まった。




