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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第一部 10年ぶりの帰還

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第64話「人類の変化」

ダンジョンが世界各地に現れてから、しばらくの時間が流れた。


 各国はダンジョンの調査を進めていた。


 内部には未知の植物や鉱物が存在し、さらに人類がこれまで一度も見たことのない生物――魔物まで存在していた。


 そして、調査が進むにつれて一つのことが分かってきた。


 魔物は、普通の動物とはまったく違う。


 身体能力が異常に高い。


 銃器がほとんど通用しない個体もいる。


 その一方で、刃物などの武器は有効だった。


 各国はダンジョン内での戦闘方法を模索し始めていた。


     ◇


 ある日。


 一人の調査隊員が、ダンジョン内で魔物と戦っていた。


「来るぞ!」


 黒い獣が地面を蹴る。


 隊員は横へ飛び、爪をかわした。


 すぐに立ち上がり、手にした剣を構える。


「……今度こそ!」


 魔物が再び飛びかかってくる。


 隊員はタイミングを合わせ、剣を振り抜いた。


 ザシュッ。


 刃が魔物の身体を切り裂く。


 魔物が倒れた。


「……倒した」


 隊員は荒い息を吐きながら、倒れた魔物を見つめる。


 その瞬間だった。


 身体の奥から、突然熱が広がった。


「……なんだ?」


 視界に、見たことのない文字が浮かぶ。


『魔物の討伐を確認しました』


『スキルを獲得しました』


『《身体強化》を獲得しました』


「……スキル?」


 隊員は呆然とした。


 意味が分からない。


 だが――


 明らかに、身体に変化が起きていた。


 握っている剣が軽い。


 身体が先ほどまでとは違う。


 試しに腕へ力を込める。


「……嘘だろ」


 今までなら両手で動かしていた重さの物を、片手で持ち上げることができた。


 その報告は、すぐに上層部へ送られた。


     ◇


「魔物を倒した直後に、特殊な能力が発現した?」


「はい。本人の証言だけではありません。身体能力も明らかに変化しています」


「偶然ではないのか?」


「その可能性も考えました。しかし――」


 別の調査隊でも、同じ現象が確認された。


 魔物を倒した人間。


 その一部に、身体能力の向上や特殊な感覚など、これまで存在しなかった能力が発現していた。


 さらに調査を続ける。


 魔物を倒す。


 能力が発現する。


 別の魔物を倒す。


 新しい能力が発現する。


 少しずつ、共通する法則が見えてきた。


 そして研究者たちは、一つの結論へたどり着く。


「……魔物を倒すことが、能力発現の条件なのか」


 まだ確実ではない。


 それでも、これまでの記録を見る限り、その可能性は極めて高かった。


     ◇


 この情報は、やがて世界中へ広がった。


『魔物討伐後、一部の人間に特殊能力』


『魔物を倒すことで能力を獲得できる可能性』


『世界各地で能力発現者を確認』


 人々のダンジョンに対する認識が変わり始めた。


 ダンジョンは、ただ恐ろしい場所ではない。


 そこには、人間の常識を超えた力が存在する。


 そして――


 その力を手に入れる方法もある。


 魔物を倒すこと。


 それが、今のところ唯一確認されている方法だった。


     ◇


 各国は本格的にダンジョン攻略へ乗り出した。


 軍人。


 警察官。


 特殊部隊。


 そして、一般人の中からも魔物との戦いを志願する者が現れ始める。


 やがて、彼らは一つの名前で呼ばれるようになった。


 ――冒険者。


 人類は少しずつ、ダンジョンという未知の世界へ踏み込んでいった。


     ◇


 その頃。


 誰も知らない場所。


 誰も到達したことのない深さ。


 30階層。


 蓮は一人、ダンジョンの奥を歩いていた。


「……」


 手には一本の剣。


 周囲には、すでに倒した魔物の姿がある。


 蓮にとって、魔物を倒すことは特別なことではなかった。


 それは、三年間繰り返してきた日常だった。


 外の世界で、今まさに人類が知り始めた力。


 それを蓮は――


 すでに三年前から使い続けていた。

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