第62話「三年後」
――それから、蓮がダンジョンに入って三年の月日が流れた。
15歳だった蓮は、18歳になっていた。
この三年間、蓮はただひたすらにダンジョンの奥へ進み続けた。
11階層。
12階層。
13階層。
階層が深くなるほど、魔物は強くなった。
それでも、蓮は歩みを止めなかった。
戦って。
傷ついて。
休んで。
また戦う。
それを繰り返した。
◇
11階層では、探索中に宝箱を見つけた。
中に入っていたのは一本の剣。
それまで槍を使っていた蓮にとって、新しい武器だった。
最初は思うように扱えなかった。
だが、何度も実戦で使い続ける。
そして――
『生存適応が発動しました』
『スキル《剣術》を獲得しました』
それをきっかけに、蓮は剣を主な武器として使うようになった。
◇
探索を続ける中で、魔物の存在を感じ取れるようにもなった。
『スキル《気配察知》を獲得しました』
見えない場所にいる魔物。
遠くから近づいてくる敵。
その存在を、以前より早く察知できるようになった。
さらに危険な状況を何度も経験することで――
『スキル《危機察知》を獲得しました』
罠や強敵。
危険な場所。
そうしたものに対して、身体が自然と警戒するようになった。
毒や麻痺を使う魔物との戦いもあった。
何度も苦しめられた。
それでも戦い続けた結果――
『スキル《状態異常耐性》を獲得しました』
身体そのものが、少しずつ変わっていった。
◇
15階層を越えた頃。
蓮は、初めて魔法を使う魔物と遭遇した。
魔物が放った炎を避けながら、《魔力感知》を使う。
魔物の身体から魔力が集まり、炎へ変わっていく。
その流れが、はっきりと感じ取れた。
「……魔力を、こうやって使ってるのか」
それまで蓮は、魔力を身体強化や武器に流すことしか知らなかった。
だが、この戦いで新しい可能性を知った。
蓮は何度も試した。
魔力を集める。
形を変える。
失敗する。
また試す。
そして――
『生存適応が発動しました』
魔力の扱いが、さらに身体へ刻み込まれていく。
やがて、蓮の手のひらに小さな炎が生まれた。
『スキル《火魔法》を獲得しました』
「……火か」
それが、蓮にとって初めての魔法だった。
最初は小さな炎しか出せなかった。
それでも、使うたびに少しずつ扱えるようになっていった。
◇
16階層。
17階層。
18階層。
19階層。
20階層。
強敵を倒すたび、蓮のレベルも上がっていった。
身体能力が上がる。
HPとMPが増える。
《身体強化》が成長する。
《魔力操作》が成長する。
《魔力感知》も、より細かな魔力の流れを感じ取れるようになった。
《鑑定》も、長い年月の中で少しずつ成長していった。
そして、危険な戦いのたびに――
『生存適応が発動しました』
蓮は新しい環境に適応していった。
◇
21階層。
22階層。
23階層。
24階層。
25階層。
26階層。
27階層。
28階層。
29階層。
そして――
30階層。
◇
蓮は30階層の通路に立っていた。
ダンジョンに入って三年。
15歳だった少年は、18歳になっていた。
身長も伸びた。
身体つきも大きく変わった。
腰には、11階層で手に入れた剣。
三年間の戦いを共にしてきた、今では蓮にとって欠かせない武器だった。
蓮は立ち止まった。
「……三年か」
ダンジョンに入ったばかりの頃を思い出す。
あの頃とは、何もかもが違う。
蓮は自分自身へ《鑑定》を使った。
「鑑定」
『名前:黒瀬 蓮』
『年齢:18歳』
『種族:人間』
『レベル:48』
『HP:680/720』
『MP:610/700』
『スキル』
『《無限成長》』
『《生存適応》』
『《鑑定 Lv.7》』
『《身体強化 Lv.6》』
『《魔力操作 Lv.6》』
『《魔力感知 Lv.5》』
『《アイテムボックス Lv.3》』
『《剣術 Lv.5》』
『《気配察知 Lv.5》』
『《危機察知 Lv.4》』
『《状態異常耐性 Lv.4》』
『《火魔法 Lv.4》』
「……かなり増えたな」
三年前には、こんなに多くのスキルはなかった。
それでも――
蓮にとっては、まだ通過点だった。
30階層の奥から、強い気配が伝わってくる。
「……この先か」
蓮は腰の剣に手をかけた。
三年間。
ずっとダンジョンの中で生きてきた。
そして今も、まだ先へ進める。
「行くか」
蓮は30階層の奥へ歩き始めた。




