第61話「魔力感知」
グレートオーガが倒れた。
蓮はしばらく、その場から動けなかった。
「……疲れた」
槍を杖代わりにして、ゆっくりと身体を起こす。
全身が重い。
呼吸もまだ落ち着いていない。
それでも、蓮は自分の状態を確認することにした。
「鑑定」
表示が現れる。
『名前:黒瀬 蓮』
『種族:人間』
『レベル:12』
『HP:72/220』
『MP:38/220』
『スキル』
『《無限成長》』
『《生存適応》』
『《鑑定 Lv.4》』
『《身体強化 Lv.3》』
『《魔力操作 Lv.2》』
『《アイテムボックス Lv.1》』
「……12か」
蓮は表示を見つめた。
10階層までの戦闘。
そして、最後のグレートオーガとの戦い。
それだけの経験が積み重なっていた。
「HPもMPも増えてるな」
最大値は以前より大きくなっている。
ただ、今は戦いの直後だ。
現在値はかなり減っている。
「しばらく休まないとな」
蓮は小さく息を吐いた。
そして、グレートオーガを見る。
「……《生存適応》も発動した」
あの瞬間。
自分の身体が、戦い方を理解していくような感覚。
魔力をどこへ流せばいいのか。
いつ使えばいいのか。
それが以前よりはっきりと分かる。
「これも、俺の力になったのか」
蓮は手を握る。
まだ完全には理解できていない。
だが、確かに以前とは違う。
そのときだった。
グレートオーガのいた場所の奥で、何かが光った。
「……?」
蓮は顔を上げる。
そこには、一つの宝箱が置かれていた。
「宝箱……」
蓮は警戒しながら近づいた。
まずは《鑑定》。
『名称:宝箱』
『状態:良好』
『罠:なし』
「罠はないか」
蓮はゆっくりと蓋へ手をかける。
そして、開いた。
中に入っていたのは――
一つの白い球だった。
「……スキルオーブか?」
以前にも見たことがある。
蓮は白い球を手に取った。
「鑑定」
『名称:スキルオーブ』
『種別:特殊アイテム』
『状態:良好』
『効果:使用することでスキルを習得できる』
「……スキルを覚えられるのか」
蓮は白い球を見つめる。
以前のスキルオーブで《アイテムボックス》を手に入れた。
今回も、何か新しい力を得られるらしい。
「今の俺に必要なのは……」
蓮は考える。
《魔力操作》を覚えてから、魔力を使った戦い方ができるようになった。
だが、魔力そのものについては、まだ分からないことが多い。
「もっと魔力を上手く扱えるようになれば……」
蓮はスキルオーブを握った。
「これを使ってみるか」
その瞬間――
白い球が淡い光を放った。
光が蓮の手から腕へ。
そして身体の中へ流れ込んでいく。
「……っ」
一瞬、頭の中が熱くなる。
だが、それもすぐに収まった。
『スキルを習得しました』
『《魔力感知》を獲得しました』
「……魔力感知?」
蓮は目を閉じた。
すると――
「……!」
感じる。
今まで、ただ何となく感じていたもの。
身体の中を流れる魔力。
槍に流した魔力。
そして、この空間に残っている魔力。
それらが、はっきりと分かる。
「……これが、魔力か」
蓮はゆっくりと呼吸する。
今までなら、魔力を使った後に何となく感じていた程度だった。
それが今は、どこを流れているのかまで分かる。
「これなら……」
蓮は《魔力操作》を使う。
身体の中を流れる魔力を感じながら、ゆっくりと動かしていく。
以前よりも、ずっと細かく操作できる。
「……なるほど」
《魔力感知》があることで、《魔力操作》が使いやすくなっている。
今まで感覚だけでやっていたことが、少しだけ分かりやすくなった。
「これは使えそうだな」
蓮は小さく頷いた。
新しいスキルを得た。
これで、今までよりも魔力を上手く扱えるようになる。
蓮はスキルオーブのなくなった手を見る。
「10階層まで来た意味はあったな」
新しいスキル。
新しい力。
そして、自分がまだ成長できるという実感。
蓮はゆっくりと立ち上がった。
まずは身体を休める。
それから――
11階層へ進む。
10階層を越えた先には、まだ見たことのない世界が広がっている。
「……行けるところまで行ってみるか」
蓮は槍を握った。
そして、ボス部屋を後にした。




