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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第一部 10年ぶりの帰還

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第60話「初めてのボス戦」

グレートオーガが棍棒を振り上げた。


 蓮は身構える。


 次の瞬間――


 巨大な棍棒が振り下ろされた。


 ドンッ!


 地面が大きく砕ける。


「……!」


 蓮は横へ飛んでかわした。


 そのまま距離を取る。


 今の一撃。


 まともに受ければ、ただでは済まない。


「速さは……俺の方が上か」


 蓮は魔力を脚へ集中させた。


 身体強化。


 魔力操作。


 これまで何度も繰り返してきた動きだ。


 一気に踏み込む。


 グレートオーガの懐へ入り、槍を突き出す。


 魔力を纏わせた穂先が、分厚い皮膚へ突き刺さる。


「……浅い!」


 槍を引く。


 グレートオーガが腕を振り回した。


 蓮は後ろへ跳ぶ。


 棍棒が目の前を通り過ぎる。


 風圧だけで身体が揺れる。


「こいつ……」


 攻撃の威力が桁違いだ。


 蓮は再び踏み込む。


 今度は脚。


 身体。


 腕。


 それぞれへ瞬間的に魔力を集中させる。


 グレートオーガの攻撃をかわしながら、槍を何度も叩き込む。


 少しずつ傷が増えていく。


 だが――


 倒れない。


「まだか……!」


 グレートオーガが吠える。


 巨大な拳が迫る。


 蓮はかわした。


 その直後。


 横薙ぎに振られた棍棒が迫ってきた。


「っ!」


 避けきれない。


 咄嗟に槍を横に構える。


 ガンッ!


 凄まじい衝撃。


 蓮の身体が吹き飛んだ。


「ぐっ……!」


 地面を転がる。


 身体中に痛みが走る。


 蓮はすぐに立ち上がった。


 だが、息が乱れている。


 魔力もかなり消費していた。


 もう一度、グレートオーガを見る。


 まだ立っている。


「……強いな」


 ここまでの魔物とは違う。


 これまで覚えてきた戦い方だけでは、簡単には倒せない。


 グレートオーガが再び棍棒を構えた。


 蓮も槍を構える。


 だが――


 身体が重い。


 魔力も残り少ない。


「このままじゃ……」


 勝てない。


 グレートオーガが踏み込む。


 蓮も動く。


 だが、わずかに遅れた。


 棍棒が迫る。


「……!」


 その瞬間。


『生存適応が発動しました』


 世界が、一瞬だけ静かになった。


『現在の脅威への適応を開始します』


『身体強化と魔力操作の連携を最適化します』


「……!」


 頭の中に、今までとは違う感覚が流れ込んでくる。


 魔力の流れが見える。


 どこへ流せばいいのか。


 いつ流せばいいのか。


 身体が理解していく。


 蓮は迫ってきた棍棒を――


 紙一重でかわした。


「……今のは」


 身体が軽い。


 違う。


 軽いのではない。


 無駄がなくなっている。


 魔力を全身へ流していたわけではない。


 必要な瞬間だけ。


 必要な場所へ。


 ほんの一瞬だけ、最大限の力を引き出している。


「これなら……!」


 蓮は踏み込んだ。


 脚へ魔力。


 一瞬で加速する。


 グレートオーガが振り向く。


 その前に蓮は懐へ入っていた。


 槍へ魔力を集中させる。


 穂先だけではない。


 槍そのものへ魔力を流す。


 魔力が一本の槍に沿って走る。


「――いけっ!」


 突き出す。


 ズンッ!


 槍がグレートオーガの身体を深く貫いた。


「グォォォォッ!」


 グレートオーガが叫ぶ。


 蓮は槍を引き抜く。


 すぐに距離を取る。


 グレートオーガが大きくよろめいた。


 それでも倒れない。


「まだ……!」


 蓮はもう一度踏み込んだ。


 魔力を脚へ。


 身体へ。


 腕へ。


 そして槍へ。


 すべてを一瞬だけ繋げる。


 グレートオーガが棍棒を振り下ろす。


 蓮はその軌道を見切った。


 横へ。


 さらに一歩。


 懐へ入り込む。


「これで――!」


 槍を突き出す。


 今度は完全に防御を貫いた。


 グレートオーガの巨体が揺れる。


 そして――


 ドォンッ!


 巨体が地面へ倒れた。


「……はぁ……」


 蓮はその場に立ったまま、荒い息を吐いた。


 槍を見る。


 魔力はもう消えている。


 それでも――


「勝った……」


 10階層のボス。


 グレートオーガを倒した。


 蓮は倒れた巨体を見る。


 最後の戦いで、自分の限界が少しだけ見えた。


 そして同時に――


 その限界を越える方法も。


『生存適応による戦闘適応が完了しました』


 表示が消える。


 蓮は拳を握った。


「……まだ強くなれる」


 10階層。


 ここまで来るのに長い時間がかかった。


 だが、ここから先はさらに深い。


 蓮はゆっくりと立ち上がった。


 その視線は、まだ見ぬダンジョンの奥へ向いていた。

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