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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第一部 10年ぶりの帰還

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第56話「魔力を纏う」

 4階層の探索は続いていた。


 蓮は魔物を倒しながら、少しずつ奥へ進んでいく。


 《魔力操作》を覚えてから、戦闘は明らかに楽になっていた。


 脚へ魔力を集中させる。


 踏み込む。


 攻撃の瞬間だけ腕へ魔力を集める。


 必要な場所だけを強化することで、魔力の消費を抑えられる。


「……だいぶ慣れてきた」


 だが、一つだけまだできないことがある。


 蓮は槍を見る。


「これだな」


 魔力を槍へ流す。


 ほんの一瞬だけ、槍の先に魔力が集まる。


 だが、すぐに消えてしまう。


「まだ安定しないか」


 それでも諦めず、何度も試した。


 そして――


 その日の探索中。


 蓮はこれまでより一回り大きな魔物と遭遇した。


 低い唸り声。


 鋭い牙。


 身体も大きく、動きも速い。


「……強そうだな」


 蓮は槍を構えた。


 魔物が地面を蹴る。


 速い。


 蓮は横へ跳んだ。


 爪が目の前を通り過ぎる。


「っ!」


 すぐに反撃する。


 槍を突き出す。


 だが――


 硬い。


 槍が弾かれた。


「……!」


 魔物が再び迫ってくる。


 蓮は距離を取った。


 今までの魔物なら、身体強化だけでも十分に戦えた。


 だが、こいつは違う。


 身体も硬い。


 このままでは決定打が足りない。


「なら……」


 蓮は槍を握り直す。


 魔力を流す。


 腕へ。


 そして――槍へ。


 何度も試してきた。


 だが、うまくいかなかった。


 それでも今は、失敗できない。


 魔物が迫る。


「……もっとだ」


 魔力を集中する。


 身体から槍へ。


 魔力の流れを意識する。


 その瞬間――


『生存適応が発動しました』


 蓮の中で、魔力の流れが変わった。


『現在の戦闘状況への適応を開始します』


『魔力操作による武器への魔力付与を促進します』


「……!」


 これまで途切れていた魔力が、一本の流れになる。


 腕から槍へ。


 槍から穂先へ。


 魔力が逃げない。


「これなら……!」


 魔物が飛びかかってくる。


 蓮は真正面から踏み込んだ。


 脚へ魔力。


 身体を加速させる。


 そして――


「そこだ!」


 魔力を纏った槍を突き出した。


 ズンッ!


 今まで弾かれていた槍が、魔物の身体を貫いた。


 魔物が地面へ倒れる。


「……できた」


 蓮は槍を見る。


 穂先には、まだ薄い魔力がまとわりついている。


『武器への魔力付与に適応しました』


『魔力操作の熟練度が上昇しました』


「……」


 蓮は槍を軽く振った。


 魔力はまだ完全に安定しているわけではない。


 長時間維持することもできない。


 それでも――


「使える」


 これまで届かなかった攻撃が、届くようになった。


 蓮は倒した魔物を見た。


「強くなってるな、俺」


 それからも蓮は4階層を進んだ。


 魔力を纏わせた槍を使い、魔物を倒していく。


 戦いを重ねるほど、その感覚にも慣れていった。


 そして――


 しばらく進んだ先で、道が途切れていた。


 その先にあったのは、下へ続く階段だった。


「……」


 蓮は階段を見下ろす。


 その先から、これまでとは違う空気が流れてくる。


「5階層か」


 蓮は少しだけ息を吐いた。


 4階層で覚えたものは多い。


 《魔力操作》。


 そして、槍へ魔力を纏わせる技術。


 だが――


 ここから先は、さらに強い魔物がいる。


「行こう」


 蓮は階段を下り始めた。


 5階層へ。


 また一つ、深い場所へ進んでいく。

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