第53話「新たなスキル」
ダークハウンドを倒した蓮は、さらに4階層の奥へ進んでいた。
3階層とは違う。
魔物の気配も強く、道も複雑だった。
それでも、今の蓮なら慎重に進める。
しばらく歩いたところで――
「……ん?」
蓮が足を止めた。
少し先。
壁際に、見覚えのあるものが置かれている。
「……宝箱?」
蓮は警戒しながら近づいた。
以前にも宝箱を見つけたことがある。
だが、何が入っているかは分からない。
「罠……ないよな」
蓮は周囲を確認する。
魔物の気配はない。
それでも慎重に宝箱へ近づいた。
槍の先で軽く触れる。
何も起こらない。
「……大丈夫そうだ」
蓮はゆっくりと蓋を開けた。
中に入っていたのは、淡い光を放つ白い球だった。
以前、鑑定のスキルオーブを手に入れたときに見たものとよく似ている。
「……スキルオーブか?」
蓮は手を伸ばす前に、《鑑定》を使った。
『名称:スキルオーブ』
『効果:触れた者にスキルを与える』
「やっぱりそうか」
蓮は白い球を見つめた。
「今度は、何のスキルなんだろう」
少しだけ期待しながら、スキルオーブへ手を伸ばす。
指先が触れた瞬間――
白い光が弾けた。
その光が蓮の身体へ入り込んでいく。
そして――
『スキル《アイテムボックス》を獲得しました』
「……アイテムボックス?」
頭の中に、今までにはなかった感覚が生まれる。
目の前には何もない。
だが、意識を向けると、そこに空間があることが分かった。
「これ……収納できるのか?」
蓮は近くに落ちていた小石を拾った。
意識を集中する。
すると――
小石が消えた。
「……!」
蓮は驚いた。
もう一度、意識を向ける。
すると、収納した小石が目の前に現れた。
「出すこともできる……」
蓮は小石を手の中で転がした。
今まで背負っていた荷物のことを思い出す。
食料。
水。
これから手に入れるもの。
「これなら、荷物を減らせるな」
ただ、どれだけ収納できるのかはまだ分からない。
「それは戻ってから試そう」
ここは4階層。
新しいスキルを手に入れたからといって、気を抜くわけにはいかない。
蓮は宝箱から視線を外した。
そして、槍を握り直す。
「行こう」
新しい力を手に入れた蓮は、再び4階層の奥へ向かって歩き始めた。




