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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第一部 10年ぶりの帰還

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52/88

第52話「4階層の魔物」

暗闇から現れた魔物を見て、蓮は槍を構えた。


 四足歩行。


 大きさはグレイファングより一回り大きい。


 全身を黒に近い灰色の毛が覆い、細長い身体をしている。


 頭には二本の短い角。


 口には鋭い牙が並んでいた。


 そして、長い前脚には鋭い三本の爪が伸びている。


「……見たことない」


 蓮は慎重に距離を取る。


 魔物も低い姿勢になった。


「鑑定」


『名称:ダークハウンド』


『種別:魔物』


『特徴:高い敏捷性・鋭い爪』


『攻撃:噛みつき・爪』


「……速いタイプか」


 分かった情報を頭に入れる。


 4階層。


 初めて見る魔物。


 油断はできない。


 ダークハウンドが地面を蹴った。


「っ!」


 蓮は《身体強化》を発動する。


 魔力を脚へ流し、横へ飛ぶ。


 直後、鋭い爪が目の前を通り過ぎた。


「速い……!」


 グレイファングより速い。


 蓮はすぐに槍を構え直した。


 ダークハウンドが方向を変える。


 今度は正面から来る。


「来い!」


 蓮は槍を突き出した。


 だが、ダークハウンドは身体を低くしてかわした。


「なっ……!」


 そのまま懐へ入り込まれる。


 爪が迫る。


 蓮は槍の柄で受けた。


 ガンッ!


「重い……!」


 身体を弾かれ、数歩後ろへ下がる。


 魔物が追ってくる。


 蓮は走った。


 距離を取る。


 呼吸を整えながら、魔物の動きを見る。


「速いけど……」


 ただ速いだけではない。


 攻撃する直前に、必ず身体を低くしている。


 そこに僅かな予備動作がある。


「なら……」


 ダークハウンドが再び走り出した。


 蓮は動かない。


 引きつける。


 さらに近づく。


 そして――


「今!」


 《身体強化》で脚力を高め、横へ跳んだ。


 ダークハウンドの爪が空を切る。


 その瞬間、蓮は身体を反転させた。


「そこだ!」


 槍を突き出す。


 魔物の肩を捉えた。


「よし!」


 ダークハウンドが距離を取る。


 蓮も追わない。


 魔力の流れを調整する。


 必要な瞬間だけ強くする。


 無駄には流さない。


「もう一度……」


 魔物が迫る。


 蓮も踏み込む。


 互いの距離が一気に縮まる。


 爪。


 槍。


 互いに攻撃をかわす。


 そして最後に――


 蓮の槍が魔物を捉えた。


 ダークハウンドが地面へ倒れる。


「……倒した」


 蓮は槍を下ろし、呼吸を整えた。


 3階で戦っていた魔物とは明らかに違う。


 速さも、攻撃の鋭さも上だった。


 それでも、今までの経験があったからこそ倒せた。


 蓮はしばらく自分の身体を確認した。


「……」


 何も起こらない。


 身体の中に、特別な変化もない。


 スキルが発動したような感覚もない。


「……今回は、ないか」


 蓮が思い出したのは、《生存適応》だった。


 これまで危険な状況に追い込まれたとき、身体に変化が起きることがあった。


 だが、今回は違う。


 発動を知らせる声も聞こえない。


「……まだ必要ないってことなのか?」


 蓮には、その理由までは分からない。


 ただ――


 今回は自分の力で乗り越えられた。


 それだけは分かった。


「もっと強くならないとな」


 蓮は前を向いた。


 そのとき――


 遠くから、かすかな物音が聞こえた。


「……一匹だけじゃないな」


 蓮は槍を握り直した。


 4階層へ入ったばかり。


 探索は、まだ始まったばかりだった。

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