第49話「3階の奥へ」
レベル4になった蓮は、さらに3階の奥へ進んでいた。
《身体強化》を使うことにも、少しずつ慣れてきた。
以前のように魔力を一気に流すことはない。
必要な瞬間だけ脚を強化し、攻撃するときには腕へ魔力を回す。
それだけで、戦いはかなり楽になった。
グレイファングが現れる。
「……またか」
蓮は槍を構えた。
魔物が飛びかかる。
身体強化。
横へかわす。
すれ違いざまに槍を突き込む。
一撃。
グレイファングが倒れる。
「次」
その後も魔物は何度も現れた。
一匹。
二匹。
時には群れ。
蓮は一体ずつ確実に倒していく。
戦うたびに、《身体強化》の使い方も上達していった。
必要なときだけ強化する。
余計な魔力は使わない。
そして、敵の動きを見て先に動く。
「……だいぶ慣れてきたな」
以前なら苦戦していた魔物も、今では大きな危険を感じることなく倒せる。
それでも、蓮は油断しなかった。
ここはダンジョンだ。
何が出てくるか分からない。
◇
さらに奥へ進む。
すると――
空気が変わった。
「……?」
蓮は足を止めた。
これまでの場所より、明らかに静かだった。
魔物の気配もない。
だが、その方が不気味だった。
「……何かいる」
槍を構える。
一歩。
また一歩。
奥へ進む。
すると、広い空間が現れた。
その中央には、大きな岩のようなものが置かれている。
「……なんだ、あれ」
蓮が近づく。
岩ではない。
何かの巣のようだった。
その周囲には、鋭い爪で削られたような跡がいくつも残っている。
「……魔物がいるな」
蓮はすぐに槍を構えた。
その瞬間――
ドンッ!
奥から大きな音が響いた。
「……!」
地面が揺れる。
蓮は反射的に後ろへ下がった。
暗闇の奥から、何かがこちらへ向かってくる。
足音が近づく。
ドン。
ドン。
ドン。
そして――
姿を現した。
「……でかい」
これまで戦ってきた魔物とは明らかに違う。
身体はグレイファングの倍以上。
全身を硬い鱗が覆っている。
長い尾。
鋭い爪。
そして、口から覗く巨大な牙。
蓮は槍を握り直した。
「……こいつは、今までとは違う」
魔物が蓮を睨む。
低い唸り声が響く。
蓮の身体が自然と緊張する。
逃げるという選択肢もある。
だが――
蓮は一歩前へ出た。
「……やるか」
魔力を身体へ流す。
《身体強化》が発動する。
魔物が地面を蹴った。
巨大な身体が、一気に迫ってくる。
蓮は槍を構えた。
3階の奥で――
今までとは違う戦いが始まった。




