第48話「レベル4」
グレイファングを倒した蓮は、槍を手に再び3階の奥へ進んでいた。
さっきの戦いで、一つ分かったことがある。
《身体強化》は、実戦でも十分に使える。
ただし――
「魔力を使いすぎないことだな」
昨日の特訓では、加減が分からず一気に魔力を流してしまった。
今は少しだけ感覚が分かる。
必要な瞬間だけ魔力を流す。
そして、必要がなくなれば止める。
それだけでも、かなり違った。
◇
しばらく進むと、前方から物音が聞こえた。
ガサッ。
蓮は足を止める。
草むらから二匹のグレイファングが姿を現した。
「二匹か……」
一匹なら問題ない。
だが、二匹同時となると話は変わる。
蓮は槍を構えた。
一匹が正面。
もう一匹が少し離れた場所からこちらを窺っている。
「来い」
先に正面の一匹が飛びかかった。
蓮は身体強化を発動する。
「《身体強化》」
魔力を脚へ流す。
身体が軽くなる。
攻撃をかわす。
そのまま槍を突き出す。
だが――
横からもう一匹が襲いかかってきた。
「っ!」
蓮は身体をひねって避ける。
爪が服をかすめた。
「危なかった……」
二匹を同時に相手にするのは難しい。
蓮は距離を取る。
二匹が左右から挟むように動く。
「……なら、先に一匹」
蓮は片方へ踏み込んだ。
魔力を脚へ集中。
一気に距離を詰める。
「はっ!」
槍を突き出す。
グレイファングが避ける。
しかし――
蓮は追撃した。
槍を横へ振る。
魔物が怯む。
その隙にもう一度突き込む。
一匹が倒れた。
「あと一匹!」
残ったグレイファングが飛びかかる。
蓮は冷静に攻撃をかわす。
身体強化のおかげで、動きについていける。
そして――
最後の一撃。
グレイファングも倒れた。
「……二匹、倒せた」
蓮は息を整える。
以前なら、もっと苦戦していた。
今は身体強化を使うことで、明らかに戦いやすくなっている。
◇
それからも、蓮は探索を続けた。
一匹。
二匹。
時には三匹。
魔物を見つけるたびに戦った。
すべてが簡単だったわけではない。
攻撃を受けそうになることもあった。
身体強化を使いすぎて、魔力を余計に消費することもあった。
それでも――
戦うたびに少しずつ分かってきた。
どのタイミングで魔力を流すか。
どれくらい流せばいいか。
どの部分を強化すればいいか。
「脚だけ強化すれば、踏み込みが速くなる」
「腕に流せば、槍を振る力が増す」
「全身に流すより、必要な場所だけの方が効率がいい」
蓮は戦いながら、《身体強化》の使い方を覚えていった。
そして――
何体目かの魔物を倒したとき。
身体の奥に、あの感覚が走った。
「……?」
身体の奥から、力が湧き上がる。
以前にも感じたことがある。
ブラッドウルフを倒したときと同じ感覚。
「まさか……」
蓮は自分自身を鑑定した。
「鑑定」
『名前:黒瀬 蓮』
『年齢:16歳』
『種族:人間』
『レベル:4』
『HP:120/120』
『MP:120/120』
『スキル』
『《無限成長》』
『《生存適応》』
『《鑑定 Lv.3》』
『《身体強化 Lv.1》』
「……!」
レベルが上がっている。
「レベル4……」
そして、HPもMPも増えている。
身体の中にある力が、明らかに増えている。
「やっぱり……」
蓮はこれまでの戦いを思い返す。
魔物を倒す。
そして、あの感覚が起きる。
その後にレベルが上がっている。
「魔物を倒すことで……レベルが上がるのか」
まだ確定ではない。
だが、二度続けば偶然とは思えない。
ブラッドウルフを倒したとき。
そして、今回。
どちらも魔物を倒した直後に身体の奥から力が湧いた。
「……もっと戦えば、また上がるのかな」
蓮は自分の手を握る。
レベル3のときよりも、身体が軽い。
力も増している。
そして、MPの最大値も120まで増えている。
「これが……レベルアップ」
蓮は静かに呟いた。
◇
ただし、現在のMPは満タンではなかった。
戦闘と鑑定でかなり消費している。
それでも、最大値が増えたことで以前より余裕がある。
「もっと魔力を上手く使えるようになれば……」
身体強化の消費も抑えられる。
そうすれば、さらに長く戦える。
蓮は倒した魔物を見た。
そして、その先へ視線を向ける。
まだ3階には、探索していない場所が残っている。
「……行こう」
槍を握り直す。
レベル4になったばかりの身体。
新しく覚えた《身体強化》。
そして、少しずつ分かってきた魔力の使い方。
蓮はそれらを確かめるように、さらに3階の奥へと進んでいった。




