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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第一部 10年ぶりの帰還

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第47話「身体強化、実戦へ」

 水場を出た蓮は、槍を手に3階の奥へ進んでいた。


 昨日までとは、少し感覚が違う。


 身体の中にある魔力。


 そして、新しく手に入れたスキル。


 《身体強化》。


「……実際に戦ってみるか」


 今までも魔物とは戦ってきた。


 だが、《身体強化》を意識して使って戦うのは初めてだ。


 どれくらい強くなるのか。


 どれくらいMPを使うのか。


 まだ何も分からない。


 だからこそ、実際の戦闘で試してみる必要がある。


     ◇


 しばらく進んだところで――


 ガサッ。


 前方の草むらが揺れた。


 蓮はすぐに足を止める。


 槍を構えた。


 草むらから姿を現したのは、一匹の魔物だった。


 灰色の毛。


 四足歩行の身体。


 鋭い牙。


 そして、低い姿勢からこちらを睨みつける黄色い瞳。


「……グレイファング」


 以前、一度戦ったことがある魔物だった。


 ブラッドウルフよりも身体は小さい。


 だが、その分だけ動きが速い。


 特に厄介なのが、地面を蹴って一気に距離を詰める突進だった。


「動きは分かる」


 蓮は槍を構え直した。


 グレイファングが身体を低くする。


 次の瞬間――


 地面を蹴った。


「っ!」


 予想通りの突進。


 蓮は身体を横へずらした。


 牙が目の前を通り過ぎる。


 グレイファングはそのまま走り抜け、すぐに振り返った。


「やっぱり速い」


 蓮は槍を構える。


 グレイファングが再び飛びかかってきた。


 今度は正面から受ける。


 槍の柄で攻撃を受け流し、距離を取った。


「まずは普通に戦ってみる」


 身体強化は使わない。


 今の自分の身体能力で、どこまで戦えるのか確認する。


 グレイファングが左右に動く。


 蓮も視線を追う。


 次の瞬間、左から飛びかかってきた。


「そこ!」


 槍を突き出す。


 グレイファングは身体をひねって避けた。


 そのまま後ろへ着地する。


「……やっぱり簡単には当たらない」


 蓮は距離を取る。


 何度か攻撃を繰り返す。


 避ける。


 受ける。


 突く。


 以前戦ったときよりも、魔物の動きに対応できている。


 それでも決定打を与えるのは難しい。


「なら……」


 蓮は魔力を意識する。


 身体の奥にある力。


「《身体強化》」


 魔力を少しだけ身体へ流す。


 胸から腕へ。


 脚へ。


 そして全身へ。


「……!」


 身体が軽くなる。


 足に力が入る。


 グレイファングが飛びかかってきた。


 蓮は横へ跳ぶ。


 さっきより速い。


「……違う」


 明らかに身体の反応が良くなっている。


 着地すると同時に振り返る。


 グレイファングがこちらへ向き直る。


「今度はこっちから!」


 蓮が踏み込む。


 槍を突き出す。


 グレイファングが避けようとする。


 だが――


「遅い!」


 槍が毛皮を捉えた。


 グレイファングが怯む。


 蓮は追撃する。


 もう一度踏み込む。


 槍を振る。


 魔物が後ろへ飛ぶ。


「身体強化を使うと……ここまで違うのか」


 だが、魔力を流す量にはまだ慣れていない。


 力を込めすぎた瞬間――


「……っ」


 魔力が一気に流れそうになる。


 蓮はすぐに抑えた。


「危ない……」


 昨日、大量の魔力を一気に流したときの感覚を思い出す。


 あのときはMPを一気に30も失った。


「少しずつ……」


 魔力の流れを調整する。


 身体強化の効果は維持したまま、流す量だけを抑える。


「これくらいなら……」


 グレイファングが再び突っ込んできた。


 蓮は待つ。


 ギリギリまで引きつける。


 そして――


「今!」


 横へかわす。


 すれ違いざまに槍を突き込む。


 グレイファングが地面へ倒れた。


 蓮はすぐに距離を取る。


 動かない。


「……倒した」


 蓮は息を整える。


 身体強化を解除する。


 強い倦怠感はない。


「魔力の量を調整すれば……かなり使える」


 昨日より明らかに上手くなっている。


 実戦の中で、どれくらい魔力を流せばいいのか少しずつ分かってきた。


     ◇


 蓮は倒れたグレイファングを見つめる。


 そして《鑑定》を使った。


「鑑定」


『名称:グレイファング』


『種別:魔物』


『状態:死亡』


『特徴:高い敏捷性』


『攻撃:噛みつき・飛びかかり』


「やっぱり、速さが特徴なんだな」


 以前戦ったときにも感じていた。


 身体は大きくない。


 だが、その速さは厄介だった。


 だからこそ、身体強化の効果も分かりやすかった。


「前より動ける」


 蓮は自分自身も確認する。


「鑑定」


『名前:黒瀬 蓮』


『年齢:16歳』


『種族:人間』


『レベル:3』


『HP:108/108』


『MP:92/108』


『スキル』


『《無限成長》』


『《生存適応》』


『《鑑定 Lv.3》』


『《身体強化 Lv.1》』


「……結構使ったな」


 身体強化だけではない。


 鑑定にもMPを使っている。


 それでも、昨日のような強い倦怠感はない。


「このくらいなら大丈夫か」


 蓮はステータスを閉じる。


 今回の戦いで分かった。


 身体強化は、実際の戦闘でも十分使える。


 そして、魔力を使う量を調整することが重要だ。


「もっと使い慣れれば……」


 今より効率よく身体を強化できるはずだ。


 蓮は槍を握り直した。


「次も試してみよう」


 まだ3階には、知らない魔物がいる。


 そして、自分自身についても分からないことが多い。


 蓮は再び歩き始めた。


 新しく手に入れた力を、少しずつ自分のものにするために。

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