第46話「身体強化」
食料を水場に置いた蓮は、その場に座り込んだ。
頭の中にあるのは、さっき確認したステータス。
レベル3。
HP108。
MP108。
そして――
「MP……魔力」
これまで何度も感じてきた、身体の中を流れる不思議な力。
それが魔力なのだと、今なら分かる。
「これを……自由に使えるようになったら」
蓮はブラッドウルフとの戦いを思い出す。
あのときも、身体の奥から力が湧き上がるような感覚があった。
もしかすると、無意識のうちに魔力を使っていたのかもしれない。
「……試してみるか」
蓮は目を閉じた。
身体の内側へ意識を向ける。
しばらくすると――
胸の奥に、ほんのわずかな違和感を感じた。
「これか……?」
蓮はその感覚を追う。
身体の奥にある力。
それを腕へ動かそうとする。
「……動け」
すると――
魔力が動いた。
「……!」
ほんの少しだけ。
胸の辺りから腕へ、何かが流れていく。
「動かせる……」
蓮はさらに力を込めた。
魔力をもっと腕へ流す。
すると――
「……っ!」
突然、身体から力が抜けた。
「なんだ……?」
強い倦怠感が身体を襲う。
蓮は慌てて魔力を止めた。
「……今、何が起きた?」
身体を起こすのも少し辛い。
蓮はステータスを確認する。
「鑑定」
『名前:黒瀬 蓮』
『年齢:16歳』
『種族:人間』
『レベル:3』
『HP:108/108』
『MP:77/108』
『スキル』
『《無限成長》』
『《生存適応》』
『《鑑定 Lv.3》』
「……30?」
MPが一気に減っていた。
「使いすぎたのか……」
ほんの少し動かしたつもりだった。
だが、実際には大量の魔力を一気に流していたらしい。
「加減が……分からない」
蓮は深く息を吐いた。
魔力は力になる。
だが、無駄に使えば身体に負担がかかる。
今の倦怠感が、その証拠だった。
「……少し休もう」
◇
しばらく休んでいると、身体の重さが少しずつ抜けていった。
蓮はもう一度試すことにした。
今度は、さっきのように一気に流さない。
「少しだけ……」
胸の奥にある魔力を感じる。
ほんの少しだけ動かす。
腕へ。
さらに少し。
指先へ。
「……」
今度は問題ない。
ほんのわずかな魔力が腕を流れている。
「これなら……」
蓮はさらに魔力を動かした。
今度は脚へ。
そして背中へ。
身体の各部分へ少しずつ魔力を流していく。
だが、途中で魔力が途切れる。
「……難しいな」
何度も試す。
少し流して、止める。
また少し流す。
今度はもう少しだけ増やす。
そうやって、少しずつ感覚を掴んでいく。
◇
「身体全体に流せないかな」
蓮は考えた。
腕だけ。
脚だけ。
それでは戦闘では使いづらい。
なら――
身体全体へ、少しずつ魔力を巡らせる。
「……ゆっくり」
胸。
肩。
腕。
腹。
背中。
脚。
一つずつ意識していく。
魔力が身体を巡る。
「……いける」
身体が少し軽くなった。
力も増している。
拳を握る。
いつもより力が入る。
足を踏み出す。
身体が少しだけ速く動く。
「これが……身体強化」
だが、まだ不安定だ。
少し気を抜くと魔力が乱れる。
それでも、さっきよりは明らかに上手く扱えている。
蓮は何度も繰り返した。
失敗する。
休む。
また試す。
少しずつ魔力の量を調整する。
そして――
魔力が身体全体を自然に巡った。
『魔力操作の経験が一定値に達しました』
『スキル《身体強化》を獲得しました』
『《身体強化 Lv.1》』
「……!」
蓮は目を見開いた。
「スキル……?」
新しいスキルが増えている。
蓮はすぐに自分自身を鑑定する。
「鑑定」
『名前:黒瀬 蓮』
『年齢:16歳』
『種族:人間』
『レベル:3』
『HP:108/108』
『MP:76/108』
『スキル』
『《無限成長》』
『《生存適応》』
『《鑑定 Lv.3》』
『《身体強化 Lv.1》』
「……増えてる」
そして、もう一度身体強化を使ってみる。
今までとは違う。
魔力をどこへ流せばいいのか。
どれくらい流せばいいのか。
感覚が以前よりはっきりしている。
「……使いやすい」
身体が自然に強化されていく。
さっきまでのように、一気に魔力が流れ出ることもない。
少ない魔力を、必要な場所へ流せている。
「これなら……戦いでも使える」
蓮は拳を握った。
ただし、まだ長時間使い続けられるわけではない。
MPは限られている。
無駄に使えば、さっきのように倦怠感が出る。
「魔力は……大事に使わないとな」
蓮は身体強化を解除した。
まだ分からないことは多い。
だが、一つ分かった。
魔力はただ流せばいいわけではない。
量を調整すること。
必要な場所へ流すこと。
そして、それを繰り返し練習すること。
蓮は新しく手に入れたスキルを見つめた。
「もっと上手くなろう」
そう呟くと、蓮は再び槍を手に取った。
新しい力を試すために――
3階の探索へ戻ることにした。




