第44話「地下の水場」
ブラッドウルフから取った素材を背負い、蓮は再び歩き始めた。
牙と爪。
そして、切り取った毛皮。
それほど多くはないはずなのに、背負ってみると意外と重い。
「……やっぱり、持ち運ぶ方法を考えないとな」
蓮はそう思いながら、まだ探索していない場所へ進んでいく。
しばらく歩いたときだった。
「……?」
蓮が足を止めた。
耳を澄ます。
小さな音が聞こえる。
一定の間隔で続いている。
「……水?」
蓮は音のする方へ歩いていく。
岩の間を抜ける。
すると――
「……あった」
目の前に、小さな水場が広がっていた。
岩の隙間から透明な水が流れ出し、浅い池を作っている。
蓮はすぐには近づかなかった。
まず周囲を確認する。
魔物の気配はない。
それでも慎重に水場へ近づいた。
「鑑定」
『名称:地下水』
『状態:良好』
「……地下水か」
蓮は水を見つめる。
状態は良好。
だが、それだけで飲めると判断するのは危険だ。
蓮は少し考えた。
「……少しだけ試してみるか」
手ですくう。
まずはほんの少しだけ口に含む。
「……普通の水だ」
味におかしなところはない。
身体にも異常は感じない。
しばらく様子を見てから、もう一度少量を飲む。
「大丈夫そうだな」
蓮はようやく安心した。
3階で水を確保できる場所を見つけた。
「ここは覚えておこう」
蓮は周囲を見渡す。
水場の周りには、いくつか植物も生えていた。
「……これも見たことないな」
一株の植物に目を向ける。
細長い茎。
小さな葉。
蓮は触れる前に《鑑定》を使った。
『名称:強靭草』
『種別:植物』
『状態:良好』
『特徴:丈夫な繊維を持つ』
「丈夫な繊維……」
蓮は茎を指でつまむ。
少し力を入れてみる。
簡単には切れない。
「……これは使えそうだな」
以前見つけた植物のツルも、物を縛るのに使えた。
こちらも何かに使えるかもしれない。
蓮は必要な分だけ採取した。
◇
蓮は背中の荷物を見た。
ブラッドウルフの牙。
爪。
毛皮。
そして魔石。
今のところ、どれも蓮にとっては「使えそうな素材」というだけだ。
特に魔石については、どれほどの価値があるのかも分からない。
「……とりあえず、ここに置いておくか」
水場の近くに、荷物をまとめて置く。
魔石も一緒だ。
「あとで戻ってくればいい」
荷物を置くと、身体が一気に軽くなった。
「……これなら動きやすい」
蓮は槍を手に取る。
これから先、素材を集めるたびに持ち歩いていたら、探索に支障が出る。
この水場を一時的な荷物置き場として使えばいい。
「帰ってくる場所も分かりやすいしな」
蓮は水場の周囲をもう一度確認した。
今のところ危険はなさそうだ。
「ここを覚えておこう」
蓮は水場を離れる。
3階には、まだ探索していない場所が多い。
階段の位置も分かっていない。
だからこそ、一つずつ調べていくしかない。
蓮は槍を握り直した。
「……行くか」
そして、まだ見ぬ場所へ向かって歩き始めた。
背中には何もない。
先ほどまでとは比べものにならないほど身軽だった。
蓮は周囲を警戒しながら、3階の奥へ進んでいった。




