第43話「ブラッドウルフの素材」
ブラッドウルフが倒れたことを確認すると、蓮は槍を下ろした。
「……さて」
蓮は改めて、倒れたブラッドウルフを見つめる。
2階で戦ったグランウルフとは違う。
だが、こちらも十分に大きい。
そして、蓮には気になっているものがあった。
牙。
爪。
毛皮。
どれも今まで見てきた魔物より、しっかりしているように見える。
「……素材になるかもしれないな」
蓮は近づいて、牙に手を伸ばした。
しかし――
「……固い」
牙を掴んで引っ張ってみる。
びくともしない。
「簡単には取れないか」
蓮は少し考えた。
解体用の道具など持っていない。
今あるのは槍だけだ。
「……やるしかないか」
蓮は槍を手に取り、牙の根元へ穂先を差し込む。
少しずつ力を加える。
「……っ」
なかなか外れない。
無理に力を入れれば、牙そのものが折れてしまいそうだった。
蓮は角度を変え、何度も根元を突く。
しばらくして――
「……外れた」
ようやく一本の牙が抜けた。
蓮は息を吐く。
「……これは時間がかかるな」
残りの牙も同じように外す。
すべて取り終える頃には、かなり時間が経っていた。
次に爪へ手を伸ばす。
「これも……」
やはり簡単には外れない。
根元がしっかりと固定されている。
蓮は無理に引っ張るのをやめ、槍を使って周囲を少しずつ削っていく。
「……これ、解体っていうより……」
蓮は苦笑する。
「力任せだな」
それでも、何とか爪をいくつか取り出すことができた。
◇
最後に毛皮。
これは牙や爪以上に難しかった。
槍の穂先で皮を切ろうとしても、思ったようには進まない。
「……切りにくい」
何度も刃を入れ、少しずつ剥がしていく。
綺麗に剥ぐことなどできない。
ところどころ毛が残り、皮にも傷が入る。
それでも蓮は、できるだけ大きな部分を切り取った。
「……これくらいでいいか」
全部を持っていくのは無理だ。
それに、これ以上時間をかければ探索にも影響する。
蓮は使えそうな部分だけを選んだ。
◇
そして最後に――
蓮はブラッドウルフの身体を見つめた。
「……何かある」
身体の中に、他の部分とは違う感覚がある。
蓮は慎重に調べていく。
やがて、小さな石のようなものを見つけた。
「……これか?」
周囲の組織を槍の穂先で少しずつ取り除く。
だが、こちらも簡単にはいかなかった。
「……くっ」
何度も位置を確認しながら、慎重に取り出していく。
ようやく石が外れた。
蓮は手に取る。
淡い色をした、小さな石。
普通の石とは違う。
触れた瞬間、身体の中にある魔力とは違う、濃い力を感じた。
「……魔力?」
蓮は《鑑定》を使う。
『名称:ブラッドウルフの魔石』
『種別:魔石』
『魔力含有量:中』
『状態:良好』
「魔石……」
蓮は石を指先で転がす。
「魔力が入ってるのか?」
詳しいことまでは分からない。
だが、普通の石とは明らかに違う。
蓮は魔石を大切にしまった。
「これも持って帰ろう」
◇
素材を集め終えた蓮は、持ち運ぶ方法を考えた。
全部をそのまま持って歩くのは難しい。
そこで、以前見つけた植物のツルを取り出した。
この植物は丈夫で、物を縛るのに使いやすい。
しかも、一度しっかり結べば簡単にはほどけない。
「これなら……」
蓮は毛皮をまとめ、その上に牙と爪を置く。
そしてツルでしっかりと縛った。
「よし」
背負ってみる。
「……重いな」
思っていたよりも重量がある。
だが、持てないほどではない。
蓮は背負い直した。
ただ、歩きにくい。
「……素材を集めるほど、荷物が増えるな」
蓮は背中の荷物を見る。
今はまだ何とかなる。
けれど、この先もっと強い魔物と戦えば、持ち帰りたい素材も増えていくだろう。
「何か、いい方法を考えないとな」
蓮はそう呟いた。
それでも今は、これ以上考えても仕方がない。
3階には、まだ探索していない場所が多い。
蓮は周囲を見渡した。
そして、まだ足を踏み入れていない場所へ視線を向ける。
「……あっちにも何かあるかもしれない」
階段がどこにあるのかも、まだ分からない。
だからこそ、一つずつ調べていくしかない。
蓮は槍を手に取った。
「行くか」
そうして、まだ見ぬ3階の奥へ向かって歩き始めた。




