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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第一部 10年ぶりの帰還

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第41話「魔力を動かす」

MPの存在を知ってから、蓮には一つ気になることがあった。


 自分の中に感じていた、あの不思議な力。


 あれが本当にMP――魔力だというのなら。


「……動かせるのか?」


 蓮はその場に座り、目を閉じた。


 身体の中へ意識を向ける。


 いつもの感覚。


 何かが流れている。


 けれど、今まではそれをただ感じていただけだった。


「……これを、動かす」


 意識を集中させる。


 手へ。


 腕へ。


 力を集めるようなイメージ。


「……」


 何も起こらない。


「やっぱり、そんな簡単にはいかないか」


 蓮は一度目を開けた。


 だが、諦めるつもりはなかった。


 分からないなら試す。


 できないなら、やり方を変える。


 それが、この一年間ダンジョンで生きてきた中で、蓮が身につけてきたやり方だった。


 蓮はもう一度、目を閉じた。


     ◇


 今度は力を無理に動かそうとはしなかった。


 身体の中にあるものを探す。


 どこから来ているのか。


 どこへ流れているのか。


 意識を向けていく。


「……ここか?」


 胸の奥。


 そこから、ゆっくりと何かが流れているような感覚がある。


 蓮はその流れを追う。


 胸から腕へ。


 そして――


 手のひらへ。


「……!」


 一瞬だけ。


 手のひらに、何かが集まったような感覚がした。


 蓮は目を開く。


 何も見えない。


 何も起きていない。


「……気のせい?」


 もう一度試してみる。


 意識を集中する。


 胸の奥から、手のひらへ。


 すると、今度ははっきりと感じた。


 微かな熱。


「……これか」


 蓮は手のひらを見つめた。


 何かが出ているわけではない。


 光っているわけでもない。


 ただ、そこに力が集まっている。


「これが……魔力?」


 蓮は慎重にその感覚を追い続ける。


 すると――


「……少し、だるい」


 倦怠感が出てきた。


 蓮はすぐに自分を鑑定する。


『HP:100/100』


『MP:74/100』


「……減ってる」


 さっき確認したときより、MPが減っている。


「魔力を動かしただけでも……MPを使うのか?」


 蓮は考える。


 まだ魔法を使ったわけではない。


 何かを飛ばしたわけでもない。


 ただ、自分の中にある力を意識して動かしただけ。


 それでもMPは減った。


「……なるほど」


 蓮は小さく息を吐く。


「魔力を使うっていうのは、こういうことなのかもしれない」


     ◇


 蓮はそれ以上、無理をしなかった。


 MPが減れば倦怠感が強くなる。


 それは、さっきまでの実験でも分かっている。


 なら、今は無理に使う必要はない。


 蓮はしばらく休む。


 やがて倦怠感が弱くなったところで、もう一度自分を鑑定する。


『MP:79/100』


「戻ってる」


 やはり、休めば回復する。


 蓮は少し考えた。


 魔力は存在する。


 MPは、その量を表しているらしい。


 そして、魔力を動かすだけでも消費する。


「……でも」


 蓮は手のひらを見る。


「まだ、全然使いこなせないな」


 今できたのは、魔力を手のひらへ集めることだけ。


 それも、ほんの一瞬。


 攻撃に使うこともできなければ、何かを変化させることもできない。


 魔法と呼べるようなものではなかった。


「まずは……動かせるようになるところからか」


 蓮はそう決めた。


     ◇


 立ち上がり、槍を手に取る。


 3階の探索は、まだ始まったばかりだ。


 ここには、まだ見たことのない場所がある。


 まだ知らない魔物もいるだろう。


 そして――


 自分が知らない力も、まだたくさんある。


「……少しずつでいい」


 蓮は槍を握り直した。


 魔力を自由に操れるようになる。


 そのためにも、まずは自分の身体と、このダンジョンをもっと知る必要がある。


 蓮はまだ見ぬ3階の奥へ視線を向けた。


 そして、ゆっくりと歩き出した。

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