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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第一部 10年ぶりの帰還

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第4話 世界初の特典

 暗闇の中を、蓮は歩いていた。


 一歩。


 また一歩。


 携帯電話のライトだけが、頼りだった。


「……どこまで続いてるんだ」


 洞窟は異様に静かだった。


 水滴が落ちる音。


 自分の足音。


 そして、自分の呼吸。


 それ以外には何もない。


 蓮は何度も後ろを振り返った。


 当然、出口はない。


「……」


 携帯電話を見る。


 電波はない。


 時刻は午後六時を過ぎていた。


 電池残量は八十パーセント。


 まだ大丈夫。


 そう思おうとした。


 けれど、不安は消えなかった。


「……お腹、空いたな」


 朝食を食べて以来、何も口にしていない。


 家に帰れば夕飯がある。


 そう思っていた。


 その「家」が、今は遠い。


 蓮は歩き続けた。


 しばらくすると、少し開けた場所に出た。


「……広い」


 天井は高く、まるで巨大な部屋のようになっている。


 その中央には、奇妙な光が浮かんでいた。


「……何、これ?」


 白い光。


 触れることもできない。


 蓮が近づいた、その瞬間。


 頭の中に、声が響いた。


《――世界初のダンジョン侵入者を確認》


「……え?」


 蓮は周囲を見回した。


 誰もいない。


《世界初のダンジョン侵入者》


《個体名――黒瀬蓮》


《特典を付与します》


「……誰?」


 返事はない。


 ただ、声だけが続く。


《固有スキル――》


《無限成長》


 白い光が蓮の身体へ吸い込まれた。


「うわっ……!」


 蓮は思わず目を閉じる。


 身体が熱くなる。


 しかし、それも数秒で終わった。


「……何だったんだ?」


 蓮は自分の身体を見た。


 何も変わっていない。


 腕も。


 足も。


 身体の大きさも。


 何も変わっていない。


「無限……成長?」


 頭の中に、自然と意味が浮かんだ。


《無限成長》


《成長に限界が存在しない》


「……限界がない?」


 蓮は首を傾げた。


 それだけだった。


 今の自分が強くなったわけではない。


 腕を見ても、十五歳の少年の腕。


 身体能力も普通。


 何か特別な力が使えるわけでもない。


「……よく分からない」


 蓮は小さく呟いた。


 そして、ふと思う。


「これがあれば……外に出られるのかな」


 もちろん、答えはない。


 蓮は歩き出した。


     ◇


 さらに奥へ進む。


 洞窟の景色が少しずつ変わっていく。


 普通の岩壁だった場所に、見たことのない植物が生えている。


 淡く光る水。


 壁に浮かぶ奇妙な模様。


「……本当に洞窟なのか?」


 蓮は立ち止まった。


 知らない。


 何も分からない。


 でも、一つだけ分かった。


 ここには、自分の知らない何かがいる。


 蓮は足音を立てないように、ゆっくり進んだ。


 その瞬間。


 ――ガサッ。


「……!」


 何かが動いた。


 蓮の身体が固まる。


 前方。


 岩陰。


 何かいる。


「……」


 蓮は息を止めた。


 そして。


 ゆっくりと、二つの目が暗闇の中で光った。


 低い唸り声。


「……え?」


 次の瞬間。


 巨大な影が飛び出してきた。


「うわぁっ!」


 蓮は反射的に後ろへ飛び退いた。


 地面に転がる。


 目の前を何かが通過した。


 ドンッ!


 岩壁が砕ける。


「……!」


 蓮は言葉を失った。


 そこにいたのは――


 巨大な狼だった。


 普通の狼とは比べものにならない。


 体長は二メートル近い。


 鋭い牙。


 黄色く光る目。


 口から垂れる唾液。


 蓮の本能が叫んでいた。


 ――逃げろ。


「……無理だろ」


 足が震える。


 無限成長。


 そんな言葉が頭をよぎる。


 けれど。


 今の蓮には何の力もない。


 強くなったわけではない。


 魔法も使えない。


 武器もない。


 ただの十五歳の少年。


 狼が唸る。


 蓮は一歩、後ろへ下がった。


 狼も一歩、前へ出る。


「……来るな」


 狼が姿勢を低くする。


「来るな……!」


 蓮は走った。


 そして――


 巨大な狼が、追ってきた。

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