第31話 読み合い
魔物が迫る。
蓮は槍を構えた。
前回とは違う。
動きが見える。
けれど、見えるだけでは勝てない。
「……来る!」
魔物が跳ぶ。
蓮は身体を横へ滑らせた。
爪が服をかすめる。
「くっ……!」
避けきれた。
前回なら、ここで吹き飛ばされていた。
蓮はすぐに振り返る。
魔物は着地すると、間髪入れずに振り向いた。
「やっぱり速い……!」
再び突っ込んでくる。
蓮は槍を構えた。
正面から受けない。
少しだけ横へ。
そして――
「そこ!」
槍を突き出す。
魔物の肩を捉えた。
浅い。
だが、確実に傷がついた。
「……当たった!」
前回はまともに攻撃すらできなかった。
今は違う。
しかし、魔物は怯まない。
傷ついた肩をかばうこともなく、再び蓮へ向かってくる。
「まだ来るのか……!」
◇
蓮は逃げながら考えた。
真正面からでは勝てない。
力もまだ向こうが上。
速度も完全に追いついたわけではない。
なら――
「動きを読む」
魔物が身体を低くする。
蓮は槍を構えた。
前回の戦い。
そして、この数日間の特訓。
何度も魔物と戦った経験。
その中で気づいたことがある。
この魔物は――
攻撃する直前に、ほんの少しだけ右前脚を引く。
「……そこだ!」
魔物が跳ぶ。
蓮は一歩だけ後ろへ下がった。
爪が空を切る。
その瞬間。
蓮は踏み込んだ。
「はあっ!」
槍を突き込む。
今度は深く入った。
「グルァッ!」
魔物が大きく身体を振る。
蓮は槍を抜いて距離を取った。
心臓が激しく鳴っている。
「……効いてる」
魔物の肩から血が流れている。
けれど――
まだ倒れない。
むしろ怒りを露わにしている。
「……まずい」
魔物が低く唸る。
身体をさらに沈める。
蓮は槍を握り直した。
さっきより速い。
そう感じた瞬間――
魔物が消えた。
「……!」
視界から一瞬、姿が消える。
次の瞬間。
横から爪が迫ってきた。
「ぐっ!」
蓮は腕で受けた。
身体が吹き飛ぶ。
地面を転がった。
「……っ!」
腕が痛い。
けれど、折れてはいない。
蓮はすぐに立ち上がった。
そして気づく。
身体の奥が――
少し熱い。
「……またか」
《生存適応》。
蓮は槍を握り直す。
視界が少しずつ鮮明になる。
呼吸が整っていく。
そして――
魔物の動きが、また少しだけ見えるようになった。
「……まだ、終わってない」
蓮は構えた。
ここからが、本当の勝負だった。




