第30話 再び、あの場所へ
翌日。
蓮はいつもより早く目を覚ました。
槍を手に取る。
食料を確認する。
水も準備する。
そして、地図を広げた。
視線の先にあるのは――
グランウルフと初めて遭遇した場所。
「……行くか」
蓮は立ち上がった。
◇
歩きながら、これまで戦ってきた魔物のことを思い出す。
速い魔物。
力の強い魔物。
硬い魔物。
何度も戦った。
何度も傷ついた。
そして、そのたびに少しずつ身体が変わった。
今の自分なら――
以前とは違う。
そう思える。
けれど、グランウルフだけは別だった。
あのとき感じた恐怖は、今でもはっきり覚えている。
「……本当に勝てるかな」
蓮は足を止めた。
少しだけ不安になる。
けれど、槍を握り直す。
「……確かめるしかない」
再び歩き始めた。
◇
しばらく進むと、空気が変わった。
蓮は立ち止まる。
「……」
静かだ。
魔物の気配がない。
けれど――
何かいる。
蓮は槍を構えた。
周囲を見渡す。
その瞬間。
岩陰から、一匹の魔物が姿を現した。
灰色の毛。
鋭い牙。
大きな身体。
そして――
あの目。
「……グランウルフ」
前に自分を追い詰めた魔物。
蓮の身体が一瞬、強張った。
怖い。
それは変わらない。
けれど――
以前とは違う。
蓮は一歩下がり、槍を構え直した。
「……今度は逃げない」
グランウルフが低く唸る。
地面を蹴る。
蓮は目を見開いた。
「来る!」
身体が反応する。
魔物の動きが見える。
前脚。
踏み込み。
跳躍。
そして――
蓮は横へ飛んだ。
爪が目の前を通り過ぎる。
「……避けられた」
前回とは違う。
グランウルフが振り返る。
蓮は槍を構えた。
次の攻撃が来る。
今度は――
自分から踏み込む。
「はあっ!」
槍がグランウルフへ向かって伸びる。
しかし――
ガキッ!
硬い毛皮に阻まれた。
「……浅い!」
グランウルフが唸る。
そして、再び姿勢を低くした。
蓮も槍を構える。
まだ勝てるとは限らない。
身体は強くなった。
戦い方も覚えた。
それでも――
目の前の魔物は強い。
蓮は息を整える。
「……ここからだ」
グランウルフが再び地面を蹴った。
そして――
二人の再戦が始まった。




