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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第一部 10年ぶりの帰還

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第29話 特訓

 それから数日。


 蓮は毎日のように魔物と戦っていた。


 目的は、ただ倒すことではない。


 自分の中にある《生存適応》が、どんなときに働くのか。


 何が変わるのか。


 それを知るためだった。


     ◇


 最初は、素早い魔物。


「速い……!」


 左右へ跳びながら襲ってくる。


 蓮は槍を構え、必死に追いかける。


 何度も攻撃を受けそうになる。


 そのたびに身体が反応する。


 少しずつ。


 本当に少しずつ。


 魔物の動きが見えるようになっていった。


「……最初より追える」


 そして最後には、攻撃の瞬間を読めるようになった。


 槍が魔物を捉える。


 勝利。


 蓮は息を整えながら、自分の身体を確認した。


「速い相手には……反応が変わる」


     ◇


 次は、力の強い魔物。


 まともに攻撃を受ければ吹き飛ばされる。


 蓮は距離を取る。


 避ける。


 逃げる。


 そして隙を探す。


 一度、攻撃を受けた。


「ぐっ!」


 腕が痺れる。


 それでも立ち上がる。


 身体の奥が熱くなる。


 足が踏ん張れる。


 身体の軸が安定する。


「……今度は力か」


 蓮は攻撃を受け流し、懐へ入った。


 槍を突き込む。


 魔物が倒れる。


「……少しずつ変わってる」


     ◇


 さらに別の魔物。


 今度は硬い。


 槍を突いても、ほとんど通らない。


「硬すぎる……」


 蓮は何度も攻撃する。


 それでも傷をつけられない。


 やがて――


 槍の先端が、わずかに魔物の弱い部分へ入り込んだ。


「……そこか!」


 何度も狙う。


 そして最後には倒すことができた。


 蓮は槍を見る。


「力だけじゃない」


 相手の弱点を見る。


 攻撃する位置を変える。


 戦い方そのものも変わっている。


     ◇


 さらに数日。


 蓮は一人で戦い続けた。


 何度も傷ついた。


 何度も逃げた。


 そして、そのたびに考えた。


 どうすれば生き残れるのか。


 どうすれば次は死なずに済むのか。


 少しずつ。


 本当に少しずつ。


 蓮の戦い方が変わっていった。


 ただ槍を振り回すだけではなくなった。


 相手を見る。


 動きを読む。


 距離を測る。


 危険を感じたら逃げる。


 そして、勝てる瞬間だけ攻撃する。


     ◇


 ある日。


 蓮は岩壁の前に立っていた。


 槍を構える。


 軽く振る。


 以前とは違う。


 身体の動きが、自分の感覚についてくる。


「……少し分かってきた」


 《生存適応》が何なのか。


 まだ完全には分からない。


 けれど――


 これは単純に強くなる力ではない。


 生き残るために、自分を変える力。


 蓮はそう考えるようになっていた。


 そして最後に残っている相手を思い出す。


 グランウルフ。


 あの魔物だけは、まだ倒していない。


 蓮は地図を広げた。


 グランウルフと遭遇した場所を見る。


「……そろそろ」


 蓮は槍を握り直した。


「もう一度、行ってみよう」


 今度は――


 逃げるためではない。


 勝つために。

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