第29話 特訓
それから数日。
蓮は毎日のように魔物と戦っていた。
目的は、ただ倒すことではない。
自分の中にある《生存適応》が、どんなときに働くのか。
何が変わるのか。
それを知るためだった。
◇
最初は、素早い魔物。
「速い……!」
左右へ跳びながら襲ってくる。
蓮は槍を構え、必死に追いかける。
何度も攻撃を受けそうになる。
そのたびに身体が反応する。
少しずつ。
本当に少しずつ。
魔物の動きが見えるようになっていった。
「……最初より追える」
そして最後には、攻撃の瞬間を読めるようになった。
槍が魔物を捉える。
勝利。
蓮は息を整えながら、自分の身体を確認した。
「速い相手には……反応が変わる」
◇
次は、力の強い魔物。
まともに攻撃を受ければ吹き飛ばされる。
蓮は距離を取る。
避ける。
逃げる。
そして隙を探す。
一度、攻撃を受けた。
「ぐっ!」
腕が痺れる。
それでも立ち上がる。
身体の奥が熱くなる。
足が踏ん張れる。
身体の軸が安定する。
「……今度は力か」
蓮は攻撃を受け流し、懐へ入った。
槍を突き込む。
魔物が倒れる。
「……少しずつ変わってる」
◇
さらに別の魔物。
今度は硬い。
槍を突いても、ほとんど通らない。
「硬すぎる……」
蓮は何度も攻撃する。
それでも傷をつけられない。
やがて――
槍の先端が、わずかに魔物の弱い部分へ入り込んだ。
「……そこか!」
何度も狙う。
そして最後には倒すことができた。
蓮は槍を見る。
「力だけじゃない」
相手の弱点を見る。
攻撃する位置を変える。
戦い方そのものも変わっている。
◇
さらに数日。
蓮は一人で戦い続けた。
何度も傷ついた。
何度も逃げた。
そして、そのたびに考えた。
どうすれば生き残れるのか。
どうすれば次は死なずに済むのか。
少しずつ。
本当に少しずつ。
蓮の戦い方が変わっていった。
ただ槍を振り回すだけではなくなった。
相手を見る。
動きを読む。
距離を測る。
危険を感じたら逃げる。
そして、勝てる瞬間だけ攻撃する。
◇
ある日。
蓮は岩壁の前に立っていた。
槍を構える。
軽く振る。
以前とは違う。
身体の動きが、自分の感覚についてくる。
「……少し分かってきた」
《生存適応》が何なのか。
まだ完全には分からない。
けれど――
これは単純に強くなる力ではない。
生き残るために、自分を変える力。
蓮はそう考えるようになっていた。
そして最後に残っている相手を思い出す。
グランウルフ。
あの魔物だけは、まだ倒していない。
蓮は地図を広げた。
グランウルフと遭遇した場所を見る。
「……そろそろ」
蓮は槍を握り直した。
「もう一度、行ってみよう」
今度は――
逃げるためではない。
勝つために。




