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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第一部 10年ぶりの帰還

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第28話 生存適応

 魔物が迫ってくる。


 蓮は槍を構えた。


 頭の中には、さっき聞こえた声が残っている。


『生存適応を確認』


『現在の脅威に対する適応を開始します』


「……生存適応」


 蓮は小さく呟いた。


 昨日までは、何が起きているのか分からなかった。


 けれど今は違う。


 自分が危険な状況になると、何かが起きる。


 なら――


「もう少し確かめてみよう」


 魔物が飛びかかってきた。


 蓮は横へ飛ぶ。


 爪が目の前を通り過ぎる。


「……少し見える」


 魔物の動きが、さっきより分かる。


 蓮は槍を突き出した。


 ザッ。


 魔物の身体に槍が刺さる。


 魔物が後ろへ下がった。


「効いてる」


 以前より攻撃が通っている。


 だが、蓮は追撃しなかった。


 距離を取る。


 身体の感覚を確かめる。


「……何が変わった?」


 力。


 速さ。


 視界。


 どれも少しずつ変化している。


 しかし、どれか一つだけが大きく変わったわけではない。


「必要なところが変わってる……?」


 蓮は考えた。


 昨日は魔物の動きについていくために、視界と反応が変わった。


 今は――


 目の前の魔物に合わせて、身体の動きが変わっている。


「相手によって違うのか?」


 試してみる価値はある。


     ◇


 蓮はその魔物を倒した。


 そして、次の魔物を探した。


 今度は先ほどより身体の大きな魔物。


「……こいつならどうなる?」


 戦闘が始まる。


 力では蓮が負けている。


 正面から受ければ吹き飛ばされる。


 蓮は攻撃を避け続けた。


 だが――


 足を取られた。


「しまった!」


 魔物の攻撃が迫る。


 蓮は腕で防いだ。


「ぐっ!」


 強烈な衝撃。


 身体が後ろへ飛ばされる。


 痛い。


 けれど――


 死ぬほどではない。


 蓮は立ち上がった。


 その瞬間。


 また身体の奥が熱くなった。


「……来る」


 呼吸が変わる。


 足に力が入る。


 身体が、さっきより安定している。


 蓮は魔物の攻撃を避けた。


 今度は身体を低くして懐へ入る。


 槍を突き込む。


「……!」


 手応えが違った。


 さっきより深く刺さっている。


 蓮は距離を取り、魔物を見た。


「……力も変わってる」


 蓮は確信し始めていた。


 生存適応は、ただ身体を強くするだけではない。


 今、自分が生き残るために必要な部分を変えている。


     ◇


 その日は、それ以上無理をしなかった。


 蓮は寝床へ戻った。


 槍を置き、岩壁にもたれる。


「……面白い」


 怖さよりも、少しだけ好奇心が勝っていた。


 もっと調べたい。


 もっと理解したい。


 そして――


 あの昨日の魔物にも、もう一度挑みたい。


 けれど、まだ早い。


「もっと試してみよう」


 蓮はそう呟いた。


 それから数日。


 蓮は一つずつ、魔物との戦いを重ねていくことになる。

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