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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第一部 10年ぶりの帰還

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第27話 確かめる

 翌日。


 蓮は一人、岩場に立っていた。


 手には槍。


 目の前には、一匹の魔物。


 昨日までなら、見つけた瞬間に逃げていた相手だ。


 けれど今日は違う。


 蓮は魔物を見つめながら考えていた。


「……もう一度、聞きたい」


 昨日聞こえた、あの声。


 戦いの最中だったから、ほとんど覚えていない。


 なら――


 もう一度、同じ状況を作ってみるしかない。


     ◇


 魔物が動いた。


 蓮も槍を構える。


「来い」


 魔物が飛びかかってくる。


 蓮は横へ避けた。


 昨日より、動きが見える。


 そのまま槍を突き出す。


 ザッ。


 魔物の身体を浅く傷つけた。


「……まだいける」


 魔物が振り返る。


 再び襲ってくる。


 蓮は攻撃を避け、槍を振る。


 一度。


 二度。


 三度。


 少しずつ戦いに慣れていく。


 けれど――


 何も起きない。


「……声は?」


 魔物を倒しても、何も聞こえない。


「……違うのか」


 蓮は首を傾げた。


     ◇


 次の魔物を探す。


 今度は先ほどより少し強い魔物だった。


 蓮は槍を構える。


「今度は……」


 戦う。


 攻撃を避ける。


 反撃する。


 しかし、しばらく戦っても何も起こらない。


「……また違う」


 蓮は距離を取った。


 だが、ここで諦めるつもりはなかった。


「もう一回」


     ◇


 三匹目。


 四匹目。


 蓮は何度も魔物と戦った。


 ただ倒すだけではない。


 自分の身体に何が起きるのかを観察する。


 疲労。


 痛み。


 呼吸。


 身体の感覚。


 そして――


 危険を感じた瞬間。


「……!」


 魔物の攻撃が蓮の肩をかすめた。


 痛みが走る。


 蓮は反射的に距離を取った。


 その瞬間。


 身体の奥が――


 昨日と同じように熱くなった。


「……来た」


 蓮は目を見開く。


 そして。


 頭の中に、声が響いた。


『生存適応を確認』


 蓮の動きが止まる。


「……!」


 聞こえた。


 今度は、はっきりと。


 確かに聞こえた。


『現在の脅威に対する適応を開始します』


「これだ……!」


 蓮は思わず声を上げた。


 昨日聞いた声。


 あのときは戦いに必死で聞き取れなかった。


 けれど今は違う。


 ちゃんと聞こえた。


 そして――


 身体の奥が再び熱くなる。


 視界が少しだけ鮮明になる。


 呼吸が変わる。


 身体が魔物の動きに反応する。


「……やっぱり」


 蓮は魔物を見る。


 さっきまでより、ほんの少しだけ動きが分かる。


 だが――


 蓮はまだ知らない。


 この変化が、どこまで自分を変えるのか。


 そして、この力を何度も繰り返すことが――


 やがて、自分自身を大きく変えていくことを。

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