第27話 確かめる
翌日。
蓮は一人、岩場に立っていた。
手には槍。
目の前には、一匹の魔物。
昨日までなら、見つけた瞬間に逃げていた相手だ。
けれど今日は違う。
蓮は魔物を見つめながら考えていた。
「……もう一度、聞きたい」
昨日聞こえた、あの声。
戦いの最中だったから、ほとんど覚えていない。
なら――
もう一度、同じ状況を作ってみるしかない。
◇
魔物が動いた。
蓮も槍を構える。
「来い」
魔物が飛びかかってくる。
蓮は横へ避けた。
昨日より、動きが見える。
そのまま槍を突き出す。
ザッ。
魔物の身体を浅く傷つけた。
「……まだいける」
魔物が振り返る。
再び襲ってくる。
蓮は攻撃を避け、槍を振る。
一度。
二度。
三度。
少しずつ戦いに慣れていく。
けれど――
何も起きない。
「……声は?」
魔物を倒しても、何も聞こえない。
「……違うのか」
蓮は首を傾げた。
◇
次の魔物を探す。
今度は先ほどより少し強い魔物だった。
蓮は槍を構える。
「今度は……」
戦う。
攻撃を避ける。
反撃する。
しかし、しばらく戦っても何も起こらない。
「……また違う」
蓮は距離を取った。
だが、ここで諦めるつもりはなかった。
「もう一回」
◇
三匹目。
四匹目。
蓮は何度も魔物と戦った。
ただ倒すだけではない。
自分の身体に何が起きるのかを観察する。
疲労。
痛み。
呼吸。
身体の感覚。
そして――
危険を感じた瞬間。
「……!」
魔物の攻撃が蓮の肩をかすめた。
痛みが走る。
蓮は反射的に距離を取った。
その瞬間。
身体の奥が――
昨日と同じように熱くなった。
「……来た」
蓮は目を見開く。
そして。
頭の中に、声が響いた。
『生存適応を確認』
蓮の動きが止まる。
「……!」
聞こえた。
今度は、はっきりと。
確かに聞こえた。
『現在の脅威に対する適応を開始します』
「これだ……!」
蓮は思わず声を上げた。
昨日聞いた声。
あのときは戦いに必死で聞き取れなかった。
けれど今は違う。
ちゃんと聞こえた。
そして――
身体の奥が再び熱くなる。
視界が少しだけ鮮明になる。
呼吸が変わる。
身体が魔物の動きに反応する。
「……やっぱり」
蓮は魔物を見る。
さっきまでより、ほんの少しだけ動きが分かる。
だが――
蓮はまだ知らない。
この変化が、どこまで自分を変えるのか。
そして、この力を何度も繰り返すことが――
やがて、自分自身を大きく変えていくことを。




