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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第一部 10年ぶりの帰還

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第24話 異変

 2階層での生活にも、少しずつ慣れてきた。


 蓮は毎日、決まった場所を歩く。


 水を確保する。


 食料を探す。


 魔物を観察する。


 危険な場所には近づかない。


 そうやって、一日一日を生きていた。


 けれど、その日は違った。


 いつもの道を歩いていた蓮は、突然足を止めた。


「……?」


 静かすぎる。


 いつもなら遠くから聞こえてくる魔物の鳴き声がない。


 蓮は槍を握った。


 周囲を見渡す。


「……何かいる」


 そう思った瞬間だった。


 地面に、大きな足跡が残っていることに気づいた。


 蓮はしゃがみ込む。


「……大きい」


 今まで見た魔物の足跡とは明らかに違う。


 しかも新しい。


 蓮は立ち上がった。


「近くにいる」


     ◇


 蓮は周囲を警戒しながら、その場を離れようとした。


 その瞬間――


 ドンッ!


 背後の岩が砕け散った。


「!」


 蓮は反射的に横へ飛ぶ。


 巨大な何かが、さっきまで蓮がいた場所を通り過ぎた。


 岩の破片が飛び散る。


 蓮は距離を取った。


 そして、その魔物を初めて正面から見た。


「……狼?」


 それは狼に似た姿をしていた。


 しかし、知っている狼とはまるで違う。


 体高は蓮の胸ほど。


 体長は三メートル近い。


 灰色がかった黒い毛が全身を覆い、その毛皮は異様なほど厚い。


 前脚は太く、そこから伸びる爪は蓮の手よりも長い。


 口を開けば、大きな牙が並んでいる。


 そして何より――


 速い。


 あれほど大きな身体なのに、動きにほとんど無駄がない。


 魔物は低く身を沈めた。


「……来る」


 次の瞬間。


 魔物が消えたように見えた。


「っ!」


 蓮はとっさに横へ飛ぶ。


 直後、爪が目の前を通り過ぎた。


 ズガッ!


 岩壁に深い傷が刻まれる。


「……!」


 蓮の背中に冷たい汗が流れた。


 まともに受けたら、一撃で終わる。


     ◇


 魔物が再び向かってくる。


 蓮は槍を構えた。


 狙うのは胸。


 魔物が飛びかかってくる。


「ここ!」


 蓮はギリギリまで引きつけ、槍を突き出した。


 ザシュッ。


 槍の先端が毛皮を裂いた。


 しかし――


「浅い……!」


 血は流れている。


 だが、槍は分厚い毛皮に阻まれ、深く刺さっていない。


 魔物が振り返る。


 怒りの咆哮が響いた。


 蓮はすぐに距離を取った。


「硬い……それに速い」


 今まで戦ってきた魔物とは違う。


 攻撃を避けるだけなら、なんとかなる。


 だが、こちらの攻撃が通らない。


 このままでは勝てない。


 魔物が再び走り出した。


「!」


 蓮は逃げた。


 細い通路へ入る。


 魔物も追ってくる。


 速い。


 距離がどんどん縮まっていく。


「くっ……!」


 蓮はさらに走る。


 しかし――


 目の前に岩壁。


 行き止まりだった。


「……!」


 蓮が振り返る。


 魔物がゆっくり近づいてくる。


 逃げ場はない。


 蓮は槍を握り直した。


 手が震える。


 今までにも怖い魔物はいた。


 けれど――


 今回は違う。


 自分より明らかに強い。


 正面から戦えば、死ぬ。


 魔物が低く唸った。


 そして跳ぶ。


「っ!」


 蓮は横へ飛ぼうとした。


 しかし、完全には避けきれなかった。


 鋭い爪が肩を切り裂く。


「ぐっ……!」


 血が流れる。


 蓮の身体が地面を転がった。


 立ち上がろうとする。


 だが、身体が思うように動かない。


 魔物が近づいてくる。


「……まだ……」


 蓮は槍を握る。


 足に力を入れる。


 立つ。


 逃げられない。


 なら、戦うしかない。


 魔物が再び身を低くした。


 蓮はその姿を見つめた。


 そして――


 身体の奥から、今まで感じたことのない熱が広がっていった。


「……何だ……これ……」


 心臓が強く脈打つ。


 傷口が熱い。


 呼吸が変わる。


 視界が少しずつ鮮明になっていく。


 魔物の動きが――


 さっきより、はっきり見える。


 蓮は知らない。


 今、自分の中で何が起きているのか。


 ただ――


 生き残るために。


 蓮の身体が、初めて大きく変わり始めていた。

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