第23話 2階層の生活
2階層で魔物を倒してから、数日が過ぎた。
蓮はすぐに先へ進もうとはしなかった。まずは、この階層で生きられる環境を作る。
それが今の蓮にとって一番大切だった。
◇
水場の場所を確認する。食料になる植物を探す。魔物が通る道を記録する。そして、自分が安全に休める場所を探す。
1階層で身につけたことを、2階層でも繰り返していく。
ただし、1階層とは違うこともあった。
「……魔物、多いな」
2階層では、魔物と遭遇する回数が明らかに多かった。しかも、1階層より強い。
蓮は無駄な戦いを避けるようになった。必要のない戦いはしない。危険を感じたら隠れる。どうしても食料が必要なときだけ狩る。
それだけでも、怪我をする回数が減った。
◇
ある日。蓮は水場の近くにある大きな岩の隙間を見つけた。
中を確認する。魔物はいない。雨が降る場所でもない。外からも見えにくい。
「ここなら……」
蓮は周囲を確認した。水場からも、それほど遠くない。食料を探しに行くにも困らない。
「ここにしよう」
蓮はその場所を新しい寝床に決めた。
1階層の寝床とは違う。階層が変われば、生活する場所も変える。蓮は少しずつ、自分に合った場所を見つけられるようになっていた。
◇
その夜。蓮は火の前で肉を焼いていた。焼けた肉を一口食べる。
「……うん」
最初に生肉を食べたときとは違う。今では、火を使って食事をすることが当たり前になっていた。
食事を終えると、蓮は水を入れて持ってきた木の実の殻を手に取った。片手で持てるほどの大きさだが、持ち運べるように作ったものなので、1階層で使っていたものよりも小さい。
殻を傾け、少しずつ水を飲む。
「……」
喉を潤したところで、蓮は殻を地面に置いた。
水場から毎回直接飲む必要はない。必要な分だけ水を汲み、この殻で寝床まで運んでくる。完全に密閉できるわけではない。だから、満杯にはせず、歩いてもこぼれにくい程度に水を入れている。
それでも、これだけで生活はかなり楽になった。
そして岩壁の地図を見た。2階層に入ってから、かなりの範囲を調べた。けれど、まだ地図には空白がある。
「……まだ先がある」
蓮は地図の空白を見つめた。この階層にも、まだ知らない場所がある。
そして、その先には――
下へ続く階段があるはずだ。
蓮はまだ知らない。階段の位置は、この階層に入った時点ですでに決まっている。ただ、蓮にはその場所を知る方法がない。
だから、歩いて探す。地図を作る。少しずつ範囲を広げる。
そうしていけば、いつか必ず階段へたどり着く。
「明日は、あっちを調べよう」
蓮は地図の空白を指で示した。火が小さく揺れる。
2階層での生活は、まだ始まったばかりだった。




