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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第一部 10年ぶりの帰還

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第22話 2階層の魔物

蓮は岩陰に身を隠し、少し離れた場所にいる魔物を見ていた。


 魔物は周囲の植物を食べている。しばらくすると、近くの水場へ向かい、水を飲み始めた。


「……なるほど」


 蓮は魔物の動きをじっと観察する。


 どこから来たのか。どこへ向かうのか。水場はどこにあるのか。食料になりそうな植物はどこに生えているのか。


 頭の中に少しずつ覚えていく。


 1階層にいた頃から、蓮は同じように周囲を観察してきた。何も持たずに入ったこの場所で、生きていくためには覚えるしかない。


「……あそこが水場」


 蓮は周囲の地形を確認する。そして、近くの岩へ目を向けた。


 岩の表面には、以前つけた小さな傷が残っている。蓮が戻ってくるための目印だ。


「ここからなら、あの岩が見える」


 頭の中で道順を確認する。


 紙もない。筆記具もない。だから、覚える。


 忘れないように、特徴のある岩や木、分かれ道を目印として利用する。それが今の蓮にできる唯一の方法だった。


 蓮はもう一度、魔物へ視線を戻した。


「……水場に来るなら、あそこは覚えておいた方がいいな」


 魔物が水を飲み終える。そのまま別の方向へ歩いていく。


 蓮はすぐには動かなかった。魔物の姿が見えなくなるまで待つ。それから、先ほどの水場へ向かった。


 水場に到着すると、蓮は周囲を確認する。魔物の姿はない。


「……水がある」


 蓮は両手ですくい、水を口へ運んだ。冷たい。喉を潤していく感覚に、蓮は小さく息を吐いた。


「……助かった」


 水筒もない。持ち運ぶための容器もない。だから、水がある場所を覚える。


 必要になったら、ここまで戻ってくればいい。


 蓮は周囲の特徴をもう一度確認した。大きな岩。曲がった木。その奥に続く通路。


「……覚えた」


 これでいい。少なくとも、戻る場所は分かった。


     ◇


 しばらくして。蓮は再び魔物のいた場所へ戻ってきた。


 魔物の姿はない。


「……今なら」


 蓮は周囲を確認しながら、慎重に進む。


 だが――


 少し先から、音が聞こえた。


「……!」


 魔物が戻ってきた。蓮は近くの岩陰へ身を隠す。


 魔物がこちらへ近づいてくる。逃げることもできる。だが、蓮は槍を握った。


 ここで戦う。


 そう決めた。


「……やるしかない」


 魔物が岩陰を通り過ぎる。


 その瞬間――


 蓮は飛び出した。槍を突き出す。


 魔物が振り向く。鋭い爪が迫る。


 蓮は身体を低くして避けた。そして、そのまま槍を振り抜く。


 ――ザシュッ!


 槍が魔物の身体を貫いた。魔物が倒れる。


「……倒した」


 蓮は荒い息を吐いた。それから周囲を確認する。新たな魔物はいない。


 蓮は倒した魔物を見下ろした。


「……これも覚えておかないとな」


 魔物の特徴を頭に刻む。どんな動きをするのか。どれくらいの強さなのか。どんな攻撃をしてくるのか。


 すべてが生き残るための情報になる。


 蓮は立ち上がった。


 地図はない。記録する道具もない。だからこそ、自分の頭で覚える。


 岩。木。通路。水場。魔物。


 この場所で生きていくために必要なものを、一つずつ記憶していく。


 2階層の探索は、まだ始まったばかりだった。

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― 新着の感想 ―
槍強すぎん?
地図は前は地面に描いたと描写がありましたが、2階に入る直前で携帯可能な何かに変わっています。筆記具も同様。狩った魔物の革に魔物の血をつけた指で描いてる?手ぶらと言いつつ普段遣いのリュックでも持ってて、…
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