第22話 2階層の魔物
蓮は岩陰から魔物を見つめていた。
大きい。
四本の脚。
鋭い爪。
1階層で出会った魔物より、明らかに体格が大きい。
蓮はすぐには動かなかった。
戦う前に、観察する。
それが今までの経験で身につけた習慣だった。
魔物は周囲の匂いを嗅いでいる。
しばらくすると、ゆっくり歩き始めた。
蓮は距離を保ちながら後を追った。
◇
魔物は大きな岩の前で足を止めた。
そして、岩の近くに生えていた植物を食べ始める。
「……これを食べるのか」
蓮は地図に印をつけた。
食料になる可能性がある。
ただし、今は採らない。
まずは魔物の行動を覚える。
魔物はしばらく食べると、今度は水のある方向へ歩き始めた。
蓮はその後を追う。
すると、少し先に小さな水場があった。
「ここにも水がある」
蓮は水場の位置も地図に記録した。
2階層にも、水場が存在する。
食料になる植物もある。
そして魔物もいる。
1階層と同じように、生きるための環境が存在している。
◇
魔物が水を飲み始めた。
蓮は少し離れた場所から観察する。
そのとき、魔物が突然顔を上げた。
「……!」
蓮も息を止める。
魔物がこちらを見ている。
気づかれた。
蓮は槍を握った。
魔物が低く唸る。
そして――
一気に走ってきた。
「速い!」
蓮は横へ飛んだ。
魔物の爪が目の前を通り過ぎる。
ズガッ!
岩に爪が食い込んだ。
「……こんなの、まともに受けたら終わる」
蓮は距離を取った。
魔物が振り返る。
再び向かってくる。
蓮は逃げながら考えた。
速い。
力も強い。
1階層の魔物とは違う。
でも――
動きには癖がある。
直線的に向かってくる。
そして攻撃した後、ほんの一瞬だけ動きが止まる。
「そこだ」
魔物が飛びかかる。
蓮はギリギリまで引きつけた。
そして横へ避ける。
魔物の身体が通り過ぎる。
その瞬間。
蓮は槍を突き出した。
深く突き刺さる。
魔物が倒れた。
◇
蓮はしばらく動かなかった。
荒い呼吸を整える。
「……勝った」
けれど、今回は1階層のときとは違った。
ただ攻撃するだけでは勝てなかった。
相手の動きを見て、攻撃の瞬間を狙った。
蓮は倒れた魔物を見る。
「もっと強くならないと」
そう呟いた。
そして魔物を処理しながら、もう一つのことを考えていた。
この階層には、この魔物より強いものもいるかもしれない。
なら――
もっとこの場所を知らなければならない。
蓮は地図を広げた。
水場。
魔物のいた場所。
自分が戦った場所。
一つずつ書き込んでいく。
2階層の探索は、まだ始まったばかりだった。




