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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第四部 アストラ編

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222/559

第222話 いつも通りの依頼

 翌日。


 玲奈は約束した時間より少し早くギルドへ着いていた。


「早いな」


 声を掛けてきたのは、昨日玲奈を誘った男だった。


「楽しみだったから」


「遠足じゃないんだぞ」


「分かってるって」


 玲奈が笑う。


 今日のメンバーは四人。玲奈と、昨日声を掛けてきた男。それから、これまでにも何度か一緒に依頼を受けたことのある二人だった。


 全員が初対面というわけではない。何度か一緒に戦ったこともあり、それぞれが何を得意としているのかも大体分かっている。


「今日は指定された魔物を倒して、素材を持ち帰る。それで終わりだ」


「うん」


「今日も前、頼むぞ」


「任せて」


 玲奈がすぐに答える。


 男は少し笑った。


「ただ、夢中になりすぎるなよ」


「分かってる」


「ならいい」


 それ以上は言われなかった。


 玲奈自身も、自分が戦闘になると少し前へ出たくなることは分かっていた。ただ、それで仲間を無視しているつもりはなかったし、以前注意されたことも覚えている。


 今日はちゃんと周囲も見る。


 そのうえで、昨日まで練習していた動きを試したい。


 玲奈が考えていたのは、そのくらいだった。


「じゃあ行くか」


「うん」


 四人はギルドを出た。


      ◆


 ダンジョンへ入ってからも、特に変わったことは起きなかった。


 薄暗い通路が続き、時折魔物の鳴き声が遠くから聞こえる。


 今日の玲奈は前寄りの位置を歩いていた。完全な先頭ではなく、先頭を歩く男の少し後ろ。敵が現れれば、すぐに前へ出られる位置だ。


「右」


 後ろから声が飛ぶ。


 玲奈が視線を向けると、岩陰から小型の魔物が二体姿を現した。


「二体!」


「玲奈、一体任せる!」


「うん!」


 玲奈が剣を抜く。


 一体が先頭の男へ向かい、もう一体が玲奈へ飛びかかってきた。


 爪が振るわれる。


 玲奈は半歩身体をずらし、剣で攻撃を外へ流す。そのまま踏み込み、魔物の横腹を斬った。


 一撃では倒れない。


 玲奈は無理に追わず、魔物の動きを見る。


 もう一度飛び込んできたところを受け流し、そのまま二撃目を入れた。


 魔物が倒れる。


 玲奈はすぐに顔を上げた。


 もう一体。


 仲間の位置。


 周囲に新しい魔物はいない。


「今度はちゃんと見てるな」


 男が、もう一体の魔物を倒しながら言った。


「言われたからね」


「覚えてたか」


「当たり前でしょ」


 玲奈は少し得意そうに笑う。


 それから、自分が倒した魔物へ一度だけ視線を戻した。


 最近練習していた動きだった。


 攻撃を正面から受けず、横へ流して反撃する。


 訓練では何度も成功していたが、実戦でもきれいに決まった。


「うまくできた」


「確かに今のはよかったな」


「でしょ?」


 玲奈の顔に笑みが浮かぶ。


 周囲も見た。


 仲間の位置も確認した。


 そのうえで、自分の剣も前よりうまくなっている。


 それが嬉しかった。


      ◆


 その後も、何度か魔物と遭遇した。


 危険な相手はいない。玲奈たちが普段から戦っている程度の魔物ばかりだった。


「玲奈、左お願い!」


「任せて!」


 二体。


 三体。


 数が増えても、玲奈は落ち着いて動いた。


 剣を振る。


 避ける。


 受け流す。


 反撃する。


 一体を倒したら、次に周囲を見る。


 以前よりも、戦闘中に見えるものは増えていた。


「今日、調子いいじゃん」


 戦闘が終わったあと、一人が玲奈へ声を掛ける。


「でしょ?」


「最近ずっと訓練してたもんな」


「まだまだだけどね」


「十分動けてるよ」


 褒められ、玲奈は嬉しそうに笑った。


 もっと上手くなれる。


 もっと強くなれる。


 今日の玲奈には、そんな手応えがあった。


「あと何体?」


「二体だな」


「もうそんなに倒した?」


「順調だからな」


 先頭の男が素材を確認する。


「このままなら予定より早く終われそうだ」


「じゃあ、帰ったら訓練できる」


「まだやるのかよ」


「だって時間余るでしょ」


「元気だなあ」


 仲間たちが笑った。


 玲奈も一緒になって笑う。


 依頼は順調だった。


 誰も怪我をしていない。


 体力にも余裕がある。


 何も問題はなかった。


      ◆


「あと一体」


 しばらくして、男が言った。


「これ倒したら終わり?」


「そうだな。素材を確認したら戻る」


「分かった」


 玲奈は剣を握り直す。


 今日覚えた動きも試せた。前よりうまく戦えるようになっていることも分かった。


 十分なはずだった。


 それでも、あと一度くらい戦いたいという気持ちは残っている。


「反応ある」


 後ろを歩いていた仲間が足を止めた。


「どこ?」


「前。少し先に二体……いや、三体」


 四人が足を止める。


 通路の先は曲がっていて、まだ姿は見えない。


「種類は?」


「待って」


 誰も前へ出ない。


 玲奈も剣の柄へ手を置いたまま、その場で待った。


 少しして、低い鳴き声が聞こえる。


 やがて通路の先から、三体の魔物が姿を現した。


 玲奈が目を細める。


「さっきと同じ種類」


「ああ」


 先頭の男も確認する。


「三体なら、いつも通りでいける。玲奈、一体頼む」


「うん」


「無理に追うなよ」


「分かってる」


 玲奈は剣を抜いた。


 三体とも、これまでに何度も戦ったことのある魔物だった。数も、四人で対処できる範囲。


 戦う判断そのものに、問題はなかった。


 玲奈は目の前の一体を見る。


 今日の自分なら、もっと速く倒せるかもしれない。


 もっときれいに。


 もっと確実に。


 そう思いながら、玲奈は剣を構えた。

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