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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第四部 アストラ編

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221/559

第221話 剣を振るうのが楽しかった

 ――冒険者になったばかりの頃。


 玲奈にとって、ダンジョンは怖い場所であると同時に、それ以上に新鮮な場所だった。


「よし」


 剣を握り直し、目の前にいる魔物を見る。


 四本足の小型の魔物が低い姿勢でこちらを睨んでいた。玲奈の後ろには、今日一緒にダンジョンへ入った冒険者たちがいる。


「来るぞ」


「分かってる!」


 前にいた男の声に答えた直後、魔物が地面を蹴った。


 玲奈も前へ出る。


 横から振るわれた爪を剣で受け、勢いを流す。そのまま身体を回し、空いた胴へ剣を叩き込んだ。


 魔物が地面へ倒れる。


「やった!」


「玲奈、次!」


「あ」


 すぐ横から声が飛ぶ。


 玲奈が振り返ると、少し離れた場所でもう一体を相手に仲間が戦っていた。


「今行く!」


 玲奈はすぐに駆け出した。


      ◆


 しばらくして、戦闘が終わった。


 玲奈は剣についた血を払い、息を整える。


「さっきの、結構よかったでしょ?」


 一緒に戦っていた冒険者へ聞く。


「最初の一体はな」


「最初の一体は?」


「倒したあと、次を見るのが遅かった」


「分かってる。ちょっと遅れただけ」


「そのちょっとが、パーティーだと危ないんだよ」


「でも間に合ったでしょ?」


「今回はな」


 男は少し呆れたように笑った。


 玲奈も意味は分かっていた。周囲を見ることも、仲間の位置を確認することも必要だ。


 ただ、それ以上に自分の剣がうまく決まったことの方が嬉しかった。


 昨日より速く動けた。


 前なら受けるだけだった攻撃を流せた。


 そして、自分の一撃で魔物を倒せた。


「次、どっち?」


 玲奈が聞く。


「少し休んでからだ」


「まだ全然動けるよ?」


「お前が動けても、他が同じとは限らないだろ」


「……あ」


 玲奈はそこで初めて、少し後ろにいる仲間を見る。


 一人が岩に腰を下ろし、水を飲んでいた。


「ごめん」


「謝るほどじゃないよ」


 そう言って笑われる。


 玲奈も少し笑った。


 その時は、それ以上深く考えなかった。


      ◆


 冒険者になってから、玲奈は何度もダンジョンへ入った。


 最初は剣を振るだけで精一杯だった。魔物が怖くなかったわけではない。初めて大きな魔物を見た時は足が止まったし、自分の剣が通らなかった時には本気で逃げたこともある。


 それでも続けた。


 一度できなかったことが、次にはできる。避けられなかった攻撃を避けられ、受けきれなかった一撃を受け流せるようになる。魔物の動きも、少しずつ読めるようになっていった。


 それが面白かった。


「玲奈、また訓練?」


 ギルドの訓練場で剣を振っていると、知り合いの冒険者に声を掛けられた。


「うん」


「昨日もダンジョン入ってなかった?」


「入ったよ」


「疲れてないの?」


「これくらい平気」


「元気だなあ」


 相手が笑う。


 玲奈も笑い返し、そのまま剣を振った。


 もっと上手くなりたい。もっと強くなりたい。もっといろんな魔物と戦ってみたい。


 当時の玲奈にとって、それで十分だった。


      ◆


 冒険者になったばかりの頃、玲奈には固定のパーティーがなかった。


 ギルドで募集されている依頼に合わせ、その時々で何人かと組む。顔を合わせる回数が増れば、同じ相手と何度もダンジョンへ入ることもあった。


 その日もそうだった。


「玲奈、明日空いてる?」


 ギルドで声を掛けてきたのは、これまで何度か一緒に依頼を受けた冒険者だった。


「空いてるよ」


「じゃあ一緒に行かない? 一人足りなくてさ」


「どこ?」


 依頼書を受け取る。


 そこには、玲奈も何度か入ったことのあるダンジョンの名前が書かれていた。


「ここなら大丈夫」


「決まりだな」


「何人?」


「四人。玲奈入れて四人」


「分かった」


 玲奈は迷わず頷いた。


 知っているダンジョン。何度か組んだことのある相手。危険度も、当時の玲奈たちにとって無理のあるものではない。


 だから、特別な不安はなかった。


 むしろ玲奈が考えていたのは、最近覚えた動きを実戦で試すことだった。前回よりどれくらい上手く戦えるようになったのか、自分で確かめたかった。


「楽しみ」


「玲奈は本当にダンジョン好きだな」


「だって面白いじゃん」


「そのうち痛い目見るぞ」


「その前に強くなればいいでしょ」


「そういう問題か?」


 相手が苦笑する。


 玲奈は気にせず、依頼書を返した。


 明日の依頼も、いつもと同じように終わると思っていた。

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