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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第三部 世界第二位来日編

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202/523

第201話 五人の食事

翌日。


 昨日の約束通り、蓮たちはクロフォードと食事をすることになっていた。


「ここ?」


「うん」


 店の前で蓮が聞くと、美月が頷いた。


「個室もあるし、ここならゆっくりできると思って」


「なるほど」


 今日は模擬戦ではない。ただ一緒に食事をするだけだ。


「蓮」


「ん?」


「本当に昨日、確認する必要あった?」


 玲奈が聞く。


「何が?」


「明日は普通にご飯ですよね、って」


「だって確認した方がいいかなって」


「何を?」


「戦わないこと?」


「普通はご飯食べに行って戦わないから」


「…………」


「なんで考えるの」


 ひなたが横で笑う。美月も苦笑していた。


 その時。


「何の話をしているんだ?」


 後ろから声がした。四人が振り返る。クロフォードだった。


「あ」


 蓮が見る。


「昨日の話です」


「昨日?」


「蓮が今日も戦うかもしれないって思ってた話です」


 玲奈が答える。


「…………」


 クロフォードが蓮を見る。


「まだ心配していたのか?」


「今はしてないです」


「そうか」


 少しだけ間があって、クロフォードが笑った。


「それならよかった」


「ほら、笑われてるじゃん」


「……そうだね」


「そこで納得するんだ」


 そんなやり取りをしながら、五人は店へ入った。


      ◆


 案内された個室で席につき、しばらくすると注文した料理が次々と運ばれてきた。


「クロフォードさん」


 ひなたが声をかける。


「日本食って、イギリスでも食べるんですか?」


「ああ。時々な」


「何が好きなんですか?」


「そうだな」


 クロフォードは少し考える。


「寿司と蕎麦は好きだ」


「あ、普通」


 玲奈が言う。


「普通では駄目なのか?」


「いや、世界二位だからもっとすごいもの言うのかなって」


「食事と順位に何の関係がある?」


「確かに」


「玲奈」


 美月が呆れたように名前を呼ぶ。


「蓮みたいなこと言い始めてるよ」


「え」


「俺?」


「二人とも」


「…………」


 クロフォードが小さく笑った。


「でも、日本に来たら食べたくなるものってあります?」


 ひなたが続ける。


「あるな」


「何ですか?」


「蕎麦もそうだが」


 少し考える。


「焼き魚や味噌汁は、日本に来ると食べたくなる」


「なんか意外」


 玲奈が言う。


「そうか?」


「もっと肉とか食べてそう」


「なぜだ?」


「強いから?」


「また順位と食事を結びつけているな」


「順位じゃなくて強さです」


「大して変わらないだろう」


 美月とひなたが笑う。蓮も少しだけ笑った。


      ◆


 食事が進むにつれて、話す内容も少しずつ変わっていった。


「クロフォードさんって」


 玲奈が聞く。


「普段も一人で食べることが多いんですか?」


「ああ」


「やっぱり」


「依頼で移動していることも多いからな」


「休みの日は?」


 ひなたが聞く。


「以前、黒瀬にも話したが」


 クロフォードは蓮を見る。


「鍛錬していることが多い」


「本当に休んでないですね」


 美月が苦笑する。


「私としては休んでいるつもりなんだが」


「鍛錬してるのに?」


「習慣だからな」


「…………」


 玲奈が蓮を見る。


「なんか、ちょっと似てない?」


「誰と?」


「蓮と」


「俺?」


「方向は違うけどね」


 玲奈は少し考える。


「戦うことに慣れすぎてるところとか」


「…………」


 蓮は首を傾げる。


「俺、別に鍛錬してないけど」


「そこじゃないんだけどなあ」


 玲奈が諦めたように息を吐く。クロフォードがそのやり取りを見て笑った。


「黒瀬は」


「はい」


「本当に、普段はこうなんだな」


「こう?」


「ああ」


「…………」


 蓮にはよく分からなかった。


 けれど、昨日までとは少し違う。最初に会った時は、どうしても「世界二位」という言葉が先に浮かんだ。


 七年間、自分の下にいた人。世界で二番目に強い人。そんなことばかり考えていた。


 けれど今は、同じテーブルで料理を食べ、玲奈の質問に困り、美月やひなたと話し、時々笑っている。


「…………」


 蓮はクロフォードを見る。


「黒瀬?」


「……はい?」


「何だ?」


「いえ」


 蓮は少し考えてから首を振った。


「なんでもないです」


「そうか」


 クロフォードはそれ以上聞かなかった。蓮も料理へ視線を戻す。


 世界二位。その言葉を、さっきまでほど意識しなくなっていた。


      ◆


「クロフォードさん」


 蓮が声をかける。


「何だ?」


「一つ聞いてもいいですか?」


「ああ」


「前から、ちょっと気になってたんですけど」


「…………」


 蓮は少し考える。


 最初に会った時、クロフォードは言っていた。今より強くなりたい。


 昨日、実際に戦って、その言葉が、前より気になるようになった。


 クロフォードは強かった。世界二位。Lv154。《天嵐剣》Lv10。地上では、十分すぎるほど強い。それでも、まだ強くなりたいと言った。


「クロフォードさんって」


「ああ」


「どうして」


 蓮は聞く。


「そんなに強くなりたいんですか?」


「…………」


 クロフォードの動きが止まった。玲奈たちも自然と黙る。


「順位のためじゃないって、前に言ってましたよね」


「ああ」


「昨日戦って」


 一度、言葉を探す。


「俺から見ても、クロフォードさんはすごく強かったです」


「…………」


「だから」


 蓮はクロフォードを見る。


「それでも、まだ強くなりたいのは、何でなのかなって」


「…………」


 クロフォードはすぐには答えなかった。しばらく静かに考える。


 そして。


「そうだな」


 持っていた箸を置いた。


「それを説明するなら」


 一度言葉を切る。


「少し、昔の話からした方がいいかもしれない」


「昔?」


「ああ」


 クロフォードは蓮を見る。


「私が、まだ今ほど強くなかった頃の話だ」


「…………」


 蓮は黙って、その続きを待った。

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