第20話 下層への階段
翌日。
蓮はいつもより早く目を覚ました。
火を起こし、簡単に食事を済ませる。
水を確認する。
槍を手に取る。
「今日は、もう少し先まで行ってみよう」
昨日までの探索で、まだ調べていない場所が残っていた。
蓮は地図を持って歩き始めた。
◇
しばらく進む。
魔物の気配はある。
しかし、今まで何度も戦ってきたことで、危険な場所を避けながら進めるようになっていた。
岩陰を通り、細い通路を抜ける。
そして――
蓮は足を止めた。
「……あれ?」
前方に、妙な空間が広がっている。
壁際に、人工物のようなものが見える。
蓮は慎重に近づいた。
「……階段?」
そこには、下へ向かって続く階段があった。
自然にできたものには見えない。
一段一段、形が揃っている。
蓮は階段の前に立った。
「下に……続いてる」
しばらく眺める。
これまで蓮が知っていたダンジョンには、こんな場所はなかった。
いや。
正確には――
今まで知らなかっただけなのかもしれない。
蓮は階段の先を見つめた。
暗闇が続いている。
何がいるのか分からない。
どれだけ深いのかも分からない。
それでも、蓮は思った。
「……行ってみたい」
◇
しかし、蓮はすぐには降りなかった。
まず周囲を確認する。
階段の周辺には、いくつか魔物の痕跡があった。
爪痕。
足跡。
そして、古い骨。
「……ここを通る魔物がいる」
蓮は少し考える。
ということは――
この階段の先にも、魔物がいる可能性が高い。
「今日はやめておこう」
蓮は階段の場所を地図に記した。
そして、階段へ向かう途中の道も確認する。
帰り道を覚えるためだ。
「ここからなら……戻れる」
蓮は一度、寝床へ戻ることにした。
明日。
食料と水を多めに用意してから、この階段を降りる。
そう決めた。
◇
寝床へ戻った蓮は、地図を広げた。
新しく見つけた階段の場所を見る。
「……この先には何があるんだろう」
今まで知らなかった場所。
今まで見たことのない魔物。
そして、さらに下へ続く世界。
蓮は少しだけ胸を高鳴らせながら、地図に階段の印をつけた。
明日は、この先へ進む。
そう決めて、蓮は火の前で静かに夜を過ごした。




