第19話 罠
翌日。
蓮は昨日の狩りを思い返していた。
魔物を追いかける。
逃げ道を塞ぐ。
そして倒す。
今までは、それで十分だった。
けれど――。
「……毎回、追いかけるのは大変だな」
蓮は地図を見る。
昨日観察した魔物は、いつも同じ場所を通っていた。
同じ時間に近くを通り、同じ方向へ進んでいく。
蓮は考えた。
「だったら……待ってればいい」
◇
蓮は魔物が通る場所へ向かった。
そこは岩と岩の間にある細い通路だった。
魔物が通るには十分。
けれど、大きく避けることはできない。
蓮は周囲を調べる。
そして、細い木の枝を集めた。
石もいくつか拾う。
「これなら……」
蓮は地面を掘った。
深くはない。
魔物が足を取られる程度の小さな穴。
その上に細い枝を並べ、枯れた植物を乗せる。
最後に、周囲の土や砂をかぶせた。
遠くから見れば、ただの地面にしか見えない。
「……できた」
蓮は少し離れた場所へ移動した。
待つ。
静かに待つ。
魔物の気配が近づいてくる。
「……来た」
蓮は身を隠した。
魔物が通路へ入ってくる。
一歩。
二歩。
そして――。
ズッ。
魔物の足が地面に沈んだ。
「!」
魔物が驚いて暴れる。
蓮はすぐに飛び出した。
魔物が穴から抜け出そうともがく。
蓮は距離を取ったまま、動きを見る。
そして隙を見つけると、槍を突き出した。
魔物が倒れる。
蓮は息を吐いた。
「……うまくいった」
◇
蓮は罠を見つめた。
思ったより簡単だった。
でも、一つ分かったことがある。
自分が直接戦わなくても、魔物を弱らせることができる。
それだけで危険が減る。
「……もっと作れるかも」
蓮は周囲を見渡した。
使えそうな場所。
魔物が通る場所。
逃げ道。
いろいろなことが気になり始める。
今までなら、魔物を見つければ戦っていた。
これからは違う。
魔物がどう動くのか。
どこを通るのか。
どうすれば戦わずに倒せるのか。
考えることが増えた。
◇
その日の夜。
蓮は寝床で地図を広げた。
昨日までの印に、新しい印を加える。
魔物の通り道。
水場。
寝床。
そして――罠を仕掛けた場所。
「……少しずつ分かってきた」
ダンジョンは、ただの暗い洞窟ではなくなっていた。
蓮にとっては、自分が生きるための場所になっていた。
そして蓮自身も。
ただ逃げて生き残る少年から、考えて生きる少年へと変わり始めていた。
明日は、今日より少しだけ上手く生きられる。
蓮はそう思いながら、静かに目を閉じた。




