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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第一部 10年ぶりの帰還

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第18話 狩り

 水を確保できるようになったことで、蓮の生活は少しだけ楽になった。


 けれど、食料の問題は変わらない。


 木の実だけでは足りない。


 火を手に入れてからは、魔物の肉も食べられるようになった。


 だから蓮は考えた。


「……もっと効率よく食べ物を取らないと」


 これまでの蓮は、魔物を見つけたら戦っていた。


 見つけた魔物を倒す。


 肉を持ち帰る。


 それだけだった。


 でも、それでは毎回危険な戦いをしなければならない。


 蓮は今日、魔物を倒すことではなく、魔物を観察することにした。


     ◇


 しばらく歩く。


 前方に小型の魔物がいた。


 蓮は岩陰に身を隠した。


 すぐには動かない。


 魔物が何をしているのかを見る。


 歩く。


 止まる。


 周囲の匂いを嗅ぐ。


 そして、地面に落ちている植物を食べる。


「……草も食べるんだ」


 蓮は黙って観察を続けた。


 しばらくすると、魔物は決まった方向へ歩き始めた。


 蓮も距離を取って後を追う。


 すると――


 別の魔物が現れた。


 最初の魔物は逃げる。


 追いかける側の魔物は、しばらく追ったあと、諦めて戻っていった。


「……」


 蓮は考えた。


 魔物にも、それぞれ行動の癖がある。


 いつも同じ場所を歩く。


 同じ場所で食べる。


 危険を感じると逃げる。


 追う側にも、追わない距離がある。


「覚えておこう」


     ◇


 しばらくして、最初の魔物が一匹になった。


 蓮は岩陰から出る。


 魔物がこちらを向いた。


 蓮はすぐに走らない。


 昨日までなら、魔物が近づいてきたら迎え撃っていた。


 今日は違う。


 魔物が逃げようとした方向を確認する。


「そっちは行かせない」


 蓮は先回りする。


 魔物が方向を変える。


 蓮も動く。


 追いかける。


 魔物が疲れて速度を落としたところで、槍を突き出した。


 一撃。


 魔物が倒れた。


 蓮は息を整える。


「……前より楽だった」


 力が強くなったわけではない。


 魔物の動きが少し分かるようになったからだ。


     ◇


 蓮は魔物を持ち帰った。


 肉を切り分ける。


 火を起こす。


 そして肉を焼く。


 ジュッ、と音がした。


 香ばしい匂いが広がる。


 蓮は焼き上がった肉を食べた。


「……うん」


 今日も食べられる。


 食事を終えた蓮は、地面に描いた地図を見た。


 魔物を見つけた場所。


 魔物が通った場所。


 水場。


 自分の寝床。


 少しずつ情報が増えている。


「魔物がいる場所も、書いておこう」


 蓮は新しい印をつけた。


 そして、その横に小さく矢印を描く。


 魔物が移動していた方向だ。


「これなら……探しやすいかもしれない」


 蓮は地図を見つめる。


 ただ歩いているだけではない。


 この場所のことを覚えている。


 魔物のことを覚えている。


 食料のことを覚えている。


 水の場所も覚えている。


 少しずつ。


 蓮は、このダンジョンで生きるための方法を身につけていた。


 そして蓮は、地図に新しい印を一つ加えた。


 明日は、今日とは違う場所を探してみよう。


 そう思いながら、火の前で静かに夜を過ごした。

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