第18話 狩り
水を確保できるようになったことで、蓮の生活は少しだけ楽になった。
けれど、食料の問題は変わらない。
木の実だけでは足りない。
火を手に入れてからは、魔物の肉も食べられるようになった。
だから蓮は考えた。
「……もっと効率よく食べ物を取らないと」
これまでの蓮は、魔物を見つけたら戦っていた。
見つけた魔物を倒す。
肉を持ち帰る。
それだけだった。
でも、それでは毎回危険な戦いをしなければならない。
蓮は今日、魔物を倒すことではなく、魔物を観察することにした。
◇
しばらく歩く。
前方に小型の魔物がいた。
蓮は岩陰に身を隠した。
すぐには動かない。
魔物が何をしているのかを見る。
歩く。
止まる。
周囲の匂いを嗅ぐ。
そして、地面に落ちている植物を食べる。
「……草も食べるんだ」
蓮は黙って観察を続けた。
しばらくすると、魔物は決まった方向へ歩き始めた。
蓮も距離を取って後を追う。
すると――
別の魔物が現れた。
最初の魔物は逃げる。
追いかける側の魔物は、しばらく追ったあと、諦めて戻っていった。
「……」
蓮は考えた。
魔物にも、それぞれ行動の癖がある。
いつも同じ場所を歩く。
同じ場所で食べる。
危険を感じると逃げる。
追う側にも、追わない距離がある。
「覚えておこう」
◇
しばらくして、最初の魔物が一匹になった。
蓮は岩陰から出る。
魔物がこちらを向いた。
蓮はすぐに走らない。
昨日までなら、魔物が近づいてきたら迎え撃っていた。
今日は違う。
魔物が逃げようとした方向を確認する。
「そっちは行かせない」
蓮は先回りする。
魔物が方向を変える。
蓮も動く。
追いかける。
魔物が疲れて速度を落としたところで、槍を突き出した。
一撃。
魔物が倒れた。
蓮は息を整える。
「……前より楽だった」
力が強くなったわけではない。
魔物の動きが少し分かるようになったからだ。
◇
蓮は魔物を持ち帰った。
肉を切り分ける。
火を起こす。
そして肉を焼く。
ジュッ、と音がした。
香ばしい匂いが広がる。
蓮は焼き上がった肉を食べた。
「……うん」
今日も食べられる。
食事を終えた蓮は、地面に描いた地図を見た。
魔物を見つけた場所。
魔物が通った場所。
水場。
自分の寝床。
少しずつ情報が増えている。
「魔物がいる場所も、書いておこう」
蓮は新しい印をつけた。
そして、その横に小さく矢印を描く。
魔物が移動していた方向だ。
「これなら……探しやすいかもしれない」
蓮は地図を見つめる。
ただ歩いているだけではない。
この場所のことを覚えている。
魔物のことを覚えている。
食料のことを覚えている。
水の場所も覚えている。
少しずつ。
蓮は、このダンジョンで生きるための方法を身につけていた。
そして蓮は、地図に新しい印を一つ加えた。
明日は、今日とは違う場所を探してみよう。
そう思いながら、火の前で静かに夜を過ごした。




