第17話 水
第17話 水
火を使えるようになってから、蓮の生活は少しずつ変わっていた。
肉を焼ける。
身体を温められる。
暗い場所でも、火があれば周囲を見ることができる。
けれど、まだ一つ問題があった。
水だ。
蓮は毎日、水場まで足を運んでいた。
最初の頃は、水場まで行って、その場で飲むだけだった。
けれど、それでは不便だった。
寝床から水場までは、それなりに距離がある。
「……毎回ここまで来るのは大変だな」
そこで蓮は、以前見つけた大きな植物の実を思い出した。
中身を食べたあとに残った硬い殻。
最初は何に使えるのか分からなかった。
けれど、試しに殻を削ってみると、中は空洞になっていて、水を入れられることが分かった。
その実はかなり大きく、残った殻も両手で持てるほどの大きさがあった。
蓮は上の部分をくり抜き、水を入れられるようにした。
完全に蓋をすることはできない。
それでも、開口部を大きくしすぎなければ、歩いて運ぶくらいなら水が一気にこぼれることはなかった。
「これなら持って帰れる」
蓮は殻を水に沈める。
ゆっくりと水を入れる。
満杯にはせず、少し余裕を残す。
そして、こぼさないように両手で持ち上げた。
「よし」
今度は水を持って帰る。
これだけでも、毎日の負担がかなり減る。
◇
寝床へ戻る。
蓮は水を置いた。
そして、ふと考える。
「……水も温められるかな」
蓮は、もう一つ別の木の実の殻を取り出した。
水を運ぶために使っているものとは別の殻だ。
こちらは少し小さい。
持ち運びには向かないが、火の近くに置いて使うにはちょうどよかった。
火を起こす。
小さな殻に少量の水を入れ、火から少し離した場所に置いてみる。
すぐには変化しない。
しばらくすると、水が少しずつ温かくなっていった。
蓮は指先で確認する。
「……温かい」
さらに待つ。
水から小さな湯気が上がった。
「……」
蓮はしばらく、それを眺めていた。
水を持って帰る。
火を起こす。
肉を焼く。
少しずつ、自分の生活を自分で作っている。
そんな感覚があった。
◇
その後、蓮はもう一度水場へ向かった。
今度は、周囲をじっくり観察する。
水が流れてくる方向。
流れていく方向。
周囲の岩。
足跡。
魔物の気配。
「……」
水場には、いくつか魔物の足跡があった。
「ここに来る魔物もいるんだ」
蓮は少し考える。
水がある場所は、自分にとって大切だ。
同時に、魔物にとっても大切なのだ。
「……気をつけないと」
蓮は必要な分だけ水を汲み、周囲を警戒しながらその場を離れた。
生きるために必要なもの。
食料。
水。
火。
そして、それらを安全に手に入れる方法。
蓮は少しずつ、それを覚えていった。




