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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第三部 世界第二位来日編

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第191話 世界二位の速度

クロフォードの剣が、蓮の目の前まで迫る。


「…………!」


 速い。


 そう思いながら、蓮は《黒月》を動かした。


 甲高い金属音が響く。


 クロフォードの剣と《黒月》がぶつかり、二人の間に衝撃が走った。


「…………」


 蓮の腕へ、確かな重さが伝わる。


 速いだけではない。剣そのものにも、しっかりと力が乗っている。


 そして、クロフォードは止まらなかった。


 一撃目を受け止められた瞬間には、すでに次の動きへ移っている。剣を引きながら身体をずらし、蓮の横へ回り込む。


「……!」


 蓮が半歩下がる。刃が目の前を通り過ぎる。


 だが、それで終わらない。


 切り返す。踏み込む。角度を変える。


 蓮が受ければ、その流れのまま次の攻撃へ繋げてくる。


「…………」


 動きが途切れない。


 最初に本人から聞いた通りだった。相手に主導権を渡さない。こちらが何かをする前に、次の攻撃を重ねてくる。


「速……」


 少し離れた場所で見ていた玲奈から、ようやく声が漏れた。


 美月も、クロフォードから目を離せない。


「これが……世界二位」


 玲奈には、剣が振られたこと自体は分かる。けれど、一つの攻撃が終わったと思った時には、クロフォードはもう次の位置にいる。


 自分なら一撃目を防げたとして、その先まで対応できるか。


「…………」


 玲奈は、黙って二人を見つめた。


      ◆


 蓮も、クロフォードの剣を受けながらその動きを見ていた。


 速い。けれど、それ以上に無駄が少ない。


 一度攻撃するたびに構え直すわけではない。振った剣の流れを、そのまま次の動作へ繋げている。


 身体の向き。足の位置。剣の軌道。


 全てが次の攻撃へ繋がっていた。


「……なるほど」


 蓮が小さく呟く。


 クロフォードの目が僅かに動いた。


「何がだ?」


 剣を振りながら聞く。蓮はそれを避ける。


「聞いてた通りだなって」


「……そうか」


 クロフォードの足元から、僅かに風が巻き上がった。


「なら――」


 次の瞬間、踏み込みが変わった。


「…………!」


 さっきより速い。


 クロフォードが一気に蓮の懐へ入る。


 横薙ぎ。蓮は《黒月》を立てた。


 ガンッ――!


 先ほどより強い衝撃。蓮の身体が、僅かに横へ動く。


「…………」


 クロフォードは、その変化を見逃さない。


 すぐに追う。距離を開けさせず、下から剣を跳ね上げる。


 蓮は身体を捻って避けた。直後には、すでに次の刃が迫っている。


「……速い」


 今度は、蓮が声に出した。


 クロフォードの口元が僅かに動く。


「そう言ってもらえると嬉しいな」


「本当に速いです」


「まだ始まったばかりだ」


「…………」


 蓮の目が、ほんの少しだけ変わった。


 クロフォードが再び踏み込む。


 正面からの斬撃。蓮がかわす。


 すぐに角度を変えて、次の剣。それも半歩ずれて避ける。


 さらに追撃。


「…………」


 それでも、蓮は慌てない。


 能力を抑えていても、十年間で身についた感覚までは消えていない。


 肩。腰。足。重心。


 そこを見れば、次にどこへ動こうとしているのかは、ある程度分かる。


 クロフォードの剣が動く。蓮が半歩ずれる。刃が胸元を通り過ぎる。


 もう一度。今度は逆側へ。それも、わずかな動きで避ける。


「……!」


 クロフォードの表情が、初めて僅かに変わった。


 速さには自信がある。


 けれど、目の前の蓮は、自分の速度そのものに驚いているわけではない。


 見ている。剣だけではない。


 肩。足。身体の向き。踏み込み。


「…………」


 クロフォードの目が細くなる。


 何度斬り込んでも、蓮は、一度も慌てない。


 そして、攻撃が始まってから反応しているのではない。


 その前から、次に何が来るのかを、見られている。

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