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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第三部 世界第二位来日編

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第188話 力を抑える方法

どこまで力を抑えるか。


 蓮は、自分の手を見ながら考えていた。


 前回、《アストラ》として初めて依頼へ行った時は、《封魔の手袋》を使って地上のAランク冒険者に近いところまで能力を落とした。


 けれど、今回は相手が違う。


 世界ランキング二位。Lv154。エイドリアン・クロフォード。


「蓮?」


 美月が声をかける。


「さっきから、何考えてるの?」


「……模擬戦」


「うん」


「どれくらい抑えようかなって」


「…………」


 玲奈が、すぐに意味を理解する。


「前と同じくらいじゃ駄目なの?」


「……たぶん、低すぎる」


「そっか」


 玲奈も頷いた。


「クロフォードさん、Lv154だもんね」


「……うん」


 前回は、筋力や防御、魔力を四千前後。最も高い敏捷でも五千ほどまで落としていた。それでも《アストラ》と戦うには十分だった。


 だが、クロフォードは地上の冒険者の最高峰にいる。


「じゃあ」


 美月が聞く。


「今回は前より強い状態で戦う?」


「……その方がいいと思う」


「どのくらい?」


「…………」


 蓮は少し考える。


「やってみないと、分からない」


「やっぱりそこは感覚なんだね」


「……うん」


 《封魔の手袋》は、筋力だけをいくつにする、敏捷だけをいくつにする、と細かく指定できる装備ではない。


 蓮が魔力を流し、全体の能力を抑える。そして、実際にどこまで下がったのかを冒険者カードで確認する。


 前回も、その方法で何度か調整していた。


「……使ってみる」


 蓮は《アイテムボックス》を開き、一組の黒い手袋を取り出した。


「《封魔の手袋》ね」


「……うん」


 両手にはめる。そして、魔力を流した。


「…………」


 全身に満ちていた力が抑え込まれていく。


 蓮は一度止めると、冒険者カードを操作した。


「どう?」


 美月が聞く。


「……まだ高い」


「じゃあ、もう少し?」


「うん」


 再び魔力を流す。一度目よりも深く。けれど、前回の依頼ほどは落とさない。


 蓮はもう一度ステータスを確認した。


「…………」


「今度は?」


「もう少し」


「まだ?」


「……うん」


 玲奈が苦笑する。


「相変わらず調整が細かいね」


「前みたいに下げすぎないでよ?」


「……分かってる」


「本当に?」


「……今回は大丈夫」


「今回は、って言った」


「…………」


 ひなたが小さく笑う。


 蓮は三度目の調整を行った。そして、もう一度冒険者カードを見る。


「…………」


 前回より、かなり高い。けれど、元の自分からすれば大きく制限されている。


「……このくらいかな」


 美月が蓮を見る。


「決まった?」


「たぶん」


「クロフォードさんと同じくらい?」


「…………」


 蓮は少し考える。


「完全に同じにはできない」


「やっぱり?」


「うん。全部まとめて下がるから」


 筋力。防御。敏捷。魔力。


 元の数値がそれぞれ違う以上、全能力をクロフォードと同じ数値に揃えることはできない。


 それでも、蓮が《鑑定》で見たクロフォードの能力を思い返せば、今の状態なら以前よりはずっと近い。


「でも」


 蓮が言う。


「前よりは、クロフォードさんに合わせやすいと思う」


「そっか」


 美月が頷く。


 玲奈が蓮の冒険者カードへ目を向ける。


「でも、レベルは651のままなんだよね」


「……うん」


「EXスキルも」


「そのまま」


「やっぱり、ステータス下げただけじゃ同じ条件にはならないか」


「……うん」


 それは前回の依頼でも分かっていた。


 能力値をAランク帯まで落としても、《剣術》EXは消えない。《危機察知》EXも、《身体強化》EXも、《魔力操作》EXも残っている。


 そして何より、十年間で身についた戦い方までは、《封魔の手袋》では消せない。


「蓮」


「ん?」


「今回は《身体強化》どうするの?」


 美月が聞く。


「…………」


 蓮は少し考える。


 前回は、最初から使わないと決めていた。けれど今回は、クロフォード自身が《身体強化》Lv9を使う。


「最初は使わない」


「最初は?」


「……必要になったら考える」


「そっか」


 美月はそれ以上言わなかった。


 クロフォードが実際にどれほど速いのかは、まだ見ていない。最初から全てを決めてしまうより、実際に向かい合ってから判断する方がいい。


「でも」


 蓮が自分の手を見る。


「手袋だけじゃ、同じにはならない」


「戦い方?」


「……うん」


 攻撃を見る。相手の重心を見る。次の動きを読む。危険を感じれば、身体が先に動く。


 十年間、死なないために繰り返してきたものは、能力値を下げても残っている。


「だから」


 蓮は少し考える。


「そこは俺が合わせる」


「無理しない程度にね」


「……うん」


 美月が小さく頷いた。


 前回は、仲間と一緒に戦うためにAランク帯まで力を落とした。


 今回は違う。世界ランキング二位が相手。どこまで抑えればいいのかは、実際に戦ってみなければ分からない。


「……これでいく」


 蓮は《封魔の手袋》をつけた両手を見る。


 まずは、この状態で向かい合う。そして、クロフォードの剣を見てから、その先を決める。

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