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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第三部 世界第二位来日編

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第185話 残った興味

 その後、模擬戦についての話は続かなかった。


 クロフォードは、蓮が「考える」と答えた時点で、それ以上何も求めてこなかった。


 支部長が時計を確認し、改めて口を開く。


「では、今日はこの辺りにしましょうか」


「はい」


 クロフォードが頷く。


 蓮たちも席を立った。


 最初にこの部屋へ入った時は、何を話せばいいのかさえ分からなかった。世界ランキング二位という肩書きも、蓮にはよく分かっていなかった。


 けれど今は、少し違う。


 地上の冒険者の中でも、かなり高い場所にいる人間。


 そして、ランキングだけではなく、自分自身の強さを確かめようとしている人。


「黒瀬」


「……はい」


 クロフォードが蓮へ向き直る。


「今日はありがとう」


「……こちらこそ」


「会えて良かった」


「はい」


 蓮は少し考える。


「俺も」


 一度、言葉を止める。


「会ってみて、よかったです」


「…………」


 クロフォードの口元が僅かに緩んだ。


「そう言ってもらえるなら嬉しい」


 美月たちは、少し離れたところから二人を見ている。


「模擬戦のことは」


 蓮が続ける。


「少し考えます」


「ああ」


 クロフォードは、それだけ答えた。


「いつまでに、とかありますか?」


「特にない」


「……ない?」


「ああ。急いで決める必要はない」


「……分かりました」


 それ以上、クロフォードは何も言わなかった。


 支部長と簡単に言葉を交わしたあと、クロフォードは部屋を出ていく。


 扉が閉まる。


「…………」


 蓮は、しばらくその扉を見ていた。


「蓮」


 美月が声をかける。


「どうだった?」


「……どうって?」


「クロフォードさん」


「…………」


 蓮は少し考える。


 会う前は、世界ランキング二位ということしか知らなかった。


 実際に会って。話して。《鑑定》で能力を見て。戦い方も聞いた。


「思ってたより」


 一度止まる。


「……話しやすかった」


「そっち?」


 玲奈が笑う。


「強さの話じゃないんだ」


「強いのも分かった」


「かなり?」


「……うん」


「まあ、世界二位だからね」


 美月が言う。


「……うん」


 蓮は小さく頷いた。


 世界二位。


 その意味も、今なら会う前より少し分かる。


「それで」


 玲奈が蓮を見る。


「模擬戦、どうするの?」


「…………」


 蓮はすぐには答えなかった。


「まだ分からない」


「断りたい?」


「それも」


 少し考える。


「……分からない」


 玲奈が首を傾げる。


「じゃあ、戦いたい?」


「…………」


 蓮は、もう一度考える。


「戦いたい、とは」


 一度止まる。


「まだ、思ってない」


「うん」


「でも」


 クロフォードから聞いた戦い方が、蓮の頭に浮かぶ。


「実際に動いたら」


 蓮が呟く。


「どんな感じなんだろうって」


「…………」


 美月が蓮を見る。


「気になってるんだ」


「……少し」


 蓮は素直に頷いた。


 それは、勝ちたいという気持ちではない。


 世界一位だから、二位と戦わなければならないとも思っていない。


 ただ、実際にどう戦うのかは少し見てみたい。


「……帰ってから話そうか」


 美月が言う。


「模擬戦のこと」


「うん」


「玲奈とひなたも一緒に」


「もちろん」


「私も」


 玲奈とひなたが答える。


 蓮は三人を見る。


「……分かった」


 まだ、答えは出ていない。


 蓮は、閉じた扉をもう一度見た。


 ただ断るのではなく。


 一度、ちゃんと考えてみよう。


 今は、そう思っていた。

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