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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第三部 世界第二位来日編

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第178話 世界二位の戦い方

 蓮がクロフォードを見る目は、さっきまでとは少しだけ変わっていた。


 Lv154。複数のLv9。そして、《天嵐剣》Lv10。


 地上へ戻ってから見た人間の中では、明らかに違う。


「クロフォードさん」


「何だ?」


 蓮は少し考えてから口を開く。


「戦う時って」


「うん」


「剣を使うんですか?」


 クロフォードが僅かに目を細めた。


「ああ。基本は剣だ」


「魔法も?」


「使う」


「……どんな?」


 今度は、玲奈が蓮を見る。


「蓮、珍しいね」


「……何が?」


「自分から戦い方聞くの」


「…………」


 言われて、蓮は少し止まった。確かに、今まで他の冒険者がどう戦うのかを、自分から詳しく聞いたことはほとんどない。


「……気になったから」


「へえ」


 玲奈が少し楽しそうに笑う。


 クロフォードも、そのやり取りを見てから答えた。


「風魔法を使う」


「風……」


「ああ。身体強化と組み合わせて、速度を上げることが多い」


「剣にも魔力を?」


「使う」


 蓮は黙って聞いていた。


 《身体強化》。


 《高速移動》。


 《魔力剣》。


 《風魔法》。


 鑑定で見たスキルと、クロフォード自身が話す戦い方が繋がっていく。


「速さが得意なんですね」


「ああ」


 クロフォードは迷わず頷いた。


「近距離で、相手に自由に動かせないことを意識している」


「自由に……?」


「相手が剣を振る前に距離を詰める。魔法を使うなら、発動する前に崩す。距離を取ろうとするなら、その動きより先に追う」


「…………」


 玲奈の表情が少し変わった。


「それ」


「かなり嫌な戦い方ですね」


「よく言われる」


 クロフォードは平然と答える。


「相手に主導権を渡さない。それが基本だ」


「……主導権」


 蓮が呟く。


 敏捷、28,900。


 そこへ《身体強化》Lv9と《高速移動》Lv9。さらに《風魔法》Lv8。


 数字だけで見ていたものが、少しずつ戦い方として形になっていく。


「じゃあ」


 玲奈が口を開く。


「基本的には、一気に近づいて決める感じですか?」


「相手による」


「違う時も?」


「ああ。速さだけで倒せる相手ばかりではない」


 クロフォードは少し考える。


「硬い相手なら攻撃に重点を置く。動きが速い相手なら、こちらも移動を優先する。魔法主体の相手なら、まず発動させないことを考える」


「戦いながら変えるんですか?」


 ひなたが聞く。


「ああ」


「その場で?」


「もちろん」


「…………」


 玲奈が、小さく息を吐いた。


「それをあの速さでやるんだ……」


 クロフォードは、特別なことを話しているという様子もなく頷いた。


「クロフォードさん」


 蓮が聞く。


「一番得意なのは?」


「一番?」


「はい」


 クロフォードは少しだけ考える。


「剣と風を組み合わせた近距離戦だ」


「速さだけじゃなくて?」


「ああ」


 クロフォードは静かに答える。


「速く動くだけなら、それだけでは上には行けない」


「…………」


「相手を見て、剣、魔法、動きを切り替える。それをどこまで自然に繋げられるかが重要だ」


 蓮の目が僅かに動く。


 剣だけではない。


 魔法だけでもない。


 速度だけでもない。


 高い能力を、一つずつ使うのではなく、相手に合わせて繋いでいく。


「……だから」


「ん?」


「強いんですね」


 クロフォードが、少しだけ目を細める。


「そうありたいとは思っている」


「…………」


 蓮は小さく頷いた。


 玲奈も黙っていた。


 剣を使う。


 速く動く。


 それだけなら、自分にも理解できる。


 けれど、高速で戦いながら相手を見て、その場で最適な動きを選び続ける。それは単純なステータスの高さだけではできない。


「玲奈と少し似てると思ったけど」


 蓮が隣を見る。


「やっぱり違うかも」


「今さら!?」


「剣だから似てるかなって」


「最初からそこしか共通点なかったからね!?」


 美月とひなたが小さく笑う。


 クロフォードも僅かに口元を緩めた。


「水野も剣士なのか?」


「はい。一応、前衛です」


「一応じゃないでしょ」


 美月が言う。


「《アストラ》の前衛は玲奈一人なんだから」


「まあ、そうだけど」


 玲奈は少し照れたように視線を逸らした。


 クロフォードは三人を見る。


「神崎は魔法使い。小川は後衛支援だったな」


「知ってるんですか?」


 ひなたが少し驚く。


「ああ。日本へ来る前に、公表されている範囲は確認した」


「…………」


 蓮がクロフォードを見る。


「俺のことも?」


「もちろん」


「何が分かりました?」


 その質問に、クロフォードは少しだけ黙った。


「ほとんど何も」


「……何も?」


「ああ」


 クロフォードは淡々と答える。


「黒瀬蓮。二十五歳。日本人」


 そこで一度言葉を切る。


「冒険者登録の際に、七年間世界ランキング一位だったUnknown本人だと判明した」


「《アストラ》に所属していること。そして、変異したSランクダンジョンへ一人で入り、三人を連れて帰還したこと」


「…………」


「公表されている情報を集めても、その程度だ」


 蓮は少し考える。


「少ないんですか?」


「私から見れば、かなり少ない」


「……そうなんですね」


「私のように長く活動していれば、攻略したダンジョンや戦い方についても、ある程度は情報が残る」


 クロフォードは、蓮を見る。


「だが、君にはそれがほとんどない」


「…………」


 蓮は答えなかった。


 支部長も、静かに二人の会話を聞いている。


 クロフォードは、それ以上踏み込まなかった。


「だから」


「?」


「実際に会ってみたかったというのもある」


「…………」


 蓮は、少しだけ頷く。


「クロフォードさんは」


「うん」


「自分の戦い方、知られてるんですか?」


「かなりな」


「嫌じゃないんですか?」


 クロフォードは少し考える。


「隠せるなら、その方が有利ではある」


「でも?」


「七年間も活動していれば、完全に隠すのは難しい」


「……なるほど」


 蓮には、まだよく分からない世界だった。


 自分がどんなスキルを使うのか。どんな武器を持っているのか。それを他人が知っている。


 原初ダンジョンでは、考える必要すらなかったことだ。


「…………」


 蓮は、もう一度クロフォードを見る。


 話を聞く前よりも、戦い方は分かった。


 高い敏捷だけではない。剣も、魔法も、身体能力も高い。そして、それらを相手に合わせて使える。


 Lv154。


 複数のLv9。


 そして、《天嵐剣》Lv10。


 世界二位という順位にも、それだけの理由がある。


 蓮は、目の前のクロフォードを静かに見つめた。

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