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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第三部 世界第二位来日編

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第176話 世界一位らしくない

 しばらく話しているうちに、最初にあった硬さは少しずつ薄れていた。


 クロフォードは、蓮が想像していたよりも話しやすかった。世界ランキング二位だからといって偉そうにすることもなく、美月たちにも自然に接している。


 蓮も、最初ほど言葉に迷わなくなっていた。


「黒瀬」


「……はい」


「一つ、気になっていることがある」


「……何ですか?」


 クロフォードは、少しだけ視線を美月たちへ向ける。


「君が《アストラ》に入ったことだ」


「…………」


 蓮も三人を見る。


「正式に冒険者になったばかりの世界一位が、すぐに既存のパーティーへ入った」


「珍しいことなんですか?」


「かなりな」


 クロフォードは答える。


「君なら、他にもいろいろな選択肢があったはずだ」


 蓮は少し考える。


 そんな話をされたことはある。けれど、自分にとってはあまり重要ではなかった。


「でも」


「うん」


「俺、《アストラ》がいいので」


「…………」


 クロフォードが、少しだけ目を細める。


「理由を聞いても?」


「理由……」


 蓮は考える。


 美月がいる。玲奈がいる。ひなたがいる。


 一緒に戦った。一緒に食事をした。次の依頼も、四人で行きたいと思っている。


「一緒にいるの」


 少し言葉を探す。


「……楽しいから」


「…………」


 今度は、美月たちが黙った。


 玲奈が蓮を見る。


「蓮」


「……何?」


「普通に言えるようになったね」


「…………」


 蓮は、少しだけ困った。


「だめだった?」


「逆」


 玲奈が笑う。


「いいと思う」


「……そっか」


 クロフォードは、そのやり取りを静かに見ていた。


 世界一位。Unknown。七年間、自分の上に存在し続けた名前。


 その本人が、パーティーを選んだ理由は強さでも名声でもなかった。


 一緒にいるのが楽しい。


 ただ、それだけ。


「本当に」


 クロフォードが口を開く。


「君は、私が想像していた人物とは違うな」


「……どんな人だと思ってたんですか?」


 蓮が聞く。


「もっと、自分の強さに自信を持っている人間だと思っていた」


「…………」


「世界一位であることも当然だと思っていて、周囲からどう見られるかも気にしない。そんな人物を想像していた」


「……違いました?」


「ああ」


 クロフォードは、迷わず答える。


「かなり」


「…………」


 蓮は少し考える。


「俺」


「そんなに変ですか?」


「変というより」


 クロフォードが、僅かに笑う。


「世界一位らしくない」


「…………」


「世界一位らしいって」


 蓮は首を傾げる。


「どんな感じですか?」


「難しい質問だな」


「……そうなんですか?」


「ああ」


 クロフォードは少し考える。


「少なくとも、自分が世界一位だと聞いて『よく分からない』と言う人間は少ないと思う」


「……なるほど」


 蓮は頷く。


 けれど、やっぱり自分が世界一位である実感はなかった。


 ランキングを見ても、数字が一番上にあるだけ。世界二位がどれくらい強いのかも、まだ分からない。


「クロフォードさん」


「何だ?」


「世界二位って」


 蓮は少し考える。


「自分では、どれくらい強いと思ってるんですか?」


「…………」


 美月たちが、僅かにクロフォードを見る。支部長も黙ったまま視線を向けた。


 クロフォードは、少しだけ考えてから答える。


「少なくとも」


「冒険者の中では、かなり強い方だと思っている」


「かなり?」


「ああ」


「世界二位ですからね」


 玲奈が思わず口を挟む。


「…………」


 蓮は、クロフォードを見る。


 本人も、自分が強いことは分かっている。


 それでも、自慢しているようには聞こえない。ただ、事実としてそう認識している。


「……そうなんですね」


 蓮は、もう一度クロフォードを見る。


 長身の身体。隙のない立ち姿。戦い慣れていることは、最初に見た時から分かっていた。


 けれど。


 実際に、どれくらい強いのか。


 それは、まだ分からない。


「…………」


 蓮は、目の前にいるクロフォードを、もう一度静かに見た。

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