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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第三部 世界第二位来日編

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第169話 面会希望

エイドリアン・クロフォード。


 世界ランキング二位。


 その人物が、黒瀬蓮に会うため日本へ来た。


 そのニュースは、すぐに日本中へ広がった。


『世界ランキング二位、来日』


『目的はUnknown――黒瀬蓮』


『世界一位と世界二位、対面なるか』


 テレビ。インターネット。SNS。


 どこを見ても、二人の名前が並んでいる。


 世界ランキング一位、黒瀬蓮。


 世界ランキング二位、エイドリアン・クロフォード。


 七年間、ランキングの一番上と、そのすぐ下にいた二人。


 その二人が、初めて会うかもしれない。


 そして、その騒ぎの影響は冒険者ギルドにもすぐに現れていた。


「問い合わせ」


「また増えてます」


「どれくらいだ?」


「朝からかなり来ています」


「内容は?」


「ほとんどが」


「黒瀬蓮とクロフォードが会うのか、です」


「…………」


 支部長は机の上の資料を見る。


 黒瀬蓮。


 少し前までは、ほとんど世間に知られていなかった名前。


 それが今では、世界中から問い合わせが来る。本人の意思とは関係なく。


「黒瀬君の連絡先は?」


「出してません」


「住所も?」


「もちろんです」


「《アストラ》の三人についても?」


「個人情報は一切」


「……よし」


 支部長は小さく息を吐いた。


 黒瀬蓮が目立つことを望んでいない。それは、もう十分に分かっている。


 十五億円。それだけの金額が動いた時でさえ、黒瀬蓮が気にしていたのは、自分の名前がさらに広がるかどうか。家の前が騒がしくなるかどうか。


 そこだった。


 だから、ギルド側も勝手に話を進めるつもりはない。


「取材については」


「今まで通りだ」


「本人の許可なしでは受けない」


「はい」


「面会希望も」


「本人の意思確認が取れるまでは」


「こちらで止める」


「分かりました」


 その時、机の上の内線が鳴った。


「支部長」


「ん?」


「英国側からです」


「…………」


「クロフォード氏の件で」


 支部長が少しだけ眉を動かす。


「つないでくれ」


「はい」


 数秒後。


 通話がつながる。


『突然のご連絡、失礼します』


「いえ」


『エイドリアン・クロフォードの件で』


「はい」


『本人より』


 一度、言葉が切れる。


『黒瀬蓮氏との面会を希望しております』


「…………」


 支部長は少しだけ黙る。


 空港でも、本人がはっきりと来日の目的を口にしていた。だから、いずれ正式な連絡が来るとは思っていた。


「面会の目的は?」


『まずは』


『直接』


『黒瀬氏と話をしたいとのことです』


「話を」


『はい』


「…………」


 支部長は少し考える。


「一つ」


『はい』


「こちらから」


「黒瀬君の住所や」


「連絡先を伝えることはできません」


『承知しています』


「…………」


 返事はすぐだった。


『本人からも』


『黒瀬氏の私生活へ』


『勝手に踏み込むことはしないようにと』


『言われています』


「そうですか」


『はい』


『正式な手順を通して』


『本人へ意思確認をしていただければ』


『それで構いません』


「…………」


 支部長は少しだけ意外に思った。


 世界ランキング二位。


 もっと自分の希望を強く押し通す人物を想像していた。


 だが、少なくともそういう人物ではなさそうだった。


「分かりました」


「では」


「こちらから本人へ確認します」


『ありがとうございます』


「ただ」


「黒瀬君が断る可能性もあります」


『もちろんです』


「その場合は?」


『受け入れます』


 迷いのない返事。


「……分かりました」


『よろしくお願いします』


 通話が終わる。


「…………」


 支部長は受話器を置く。


 世界ランキング二位、エイドリアン・クロフォード。


 その人物が、黒瀬蓮とただ話をしたい。


 今のところ、伝えられているのはそれだけ。


 けれど、それだけでも十分大きな話だった。


 支部長は机の上の一枚の資料を見る。


 《アストラ》。


 神崎美月。


「…………」


 黒瀬君へ直接ギルドから連絡するより、まず彼女へ話した方がいい。


 支部長は電話を取る。番号を確認。発信。


 数回、呼び出し音が鳴る。


 そして。


『はい』


「神崎君か」


『支部長?』


「ああ」


『どうしました?』


「黒瀬君のことで」


『蓮の?』


 一瞬、美月の声が少し変わる。


「安心してくれ」


「何か問題が起きたわけじゃない」


『……はい』


「ただ」


 支部長は机の上の一枚の書類を見る。


 そこには、エイドリアン・クロフォード。


 その名前。


「世界ランキング二位から」


「正式に」


「黒瀬君への」


「面会希望が届いた」


『…………』


 電話の向こうで、美月が黙る。


「本人の意思を」


「確認したい」


 支部長は続ける。


「神崎君」


「黒瀬君に」


「話してもらえるか?」


『…………』


 少しの間。


 そして。


『分かりました』


 美月が答える。


『私から』


『蓮に話します』


 世界ランキング二位。


 エイドリアン・クロフォード。


 その存在が、ついに黒瀬蓮の日常へ直接近づき始めていた。

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― 新着の感想 ―
会話は単文ではしゃべらないから、すごく違和感です。全員主人公になってるw
 《『本人からも』 『黒瀬氏の私生活へ』 『勝手に踏み込むことはしないようにと』 『言われています』》  上記の様な場合、同一人物の台詞は  《『本人からも、黒瀬氏の私生活へ勝手に踏み込むことはしない…
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