第162話 家族みたいなもの ①
すいません。
ちょっと聞きたいのですが、今まで通り①web小説的な書き方で改行多め
改行を減らして地の文をつなぎ、会話と心理描写を自然にまとめる②
内容が同じなんで連投します。
どちらの方が読みやすかったですか?
アイスを食べ終えて。
少し経った。
さっきまで。
蓮の感情について話していた四人は。
今は。
少しだけ。
いつもの空気に戻っていた。
「…………」
玲奈が。
空になったカップを見ながら。
ふと思い出したように。
顔を上げる。
「じゃあさ」
「……?」
蓮が見る。
「蓮にとって」
一度。
美月を見る。
「美月って特別なの?」
「玲奈?」
美月が。
すぐに反応した。
「何、その聞き方」
「いや」
玲奈は。
少し笑う。
「ちょっと気になって」
「何が?」
「だって」
玲奈は。
蓮を見る。
「Sランクダンジョンの時もそうだったでしょ」
「……?」
「美月が取り残されてるって知って」
「…………」
「すぐに助けに来た」
「……うん」
玲奈の表情が。
少しだけ真面目になる。
「あの時の蓮」
「…………」
「美月を助けることしか考えてなかったじゃん」
「…………」
蓮は。
何も言わなかった。
「もちろん」
玲奈が続ける。
「私とひなたも助けてもらったけど」
「はい」
ひなたも。
小さく頷く。
「でも」
玲奈は。
美月を見る。
「最初に蓮を動かしたのって、美月だったんでしょ?」
「…………」
美月も。
蓮を見る。
ニュースで。
美月たちが。
Sランクへ変異したダンジョンに取り残されていると知った。
その直後。
蓮は。
冒険者登録をするために。
ギルドへ向かった。
迷ったわけでも。
考えたわけでもない。
美月を。
助けるために。
「だからさ」
玲奈が聞く。
「蓮にとって、美月って」
「…………」
「やっぱり特別なのかなって」
「……特別」
蓮が。
小さく繰り返す。
「うん」
「…………」
「美月だけ、ちょっと違うでしょ?」
「玲奈」
美月が。
少し困ったように笑う。
「変な意味に持っていかないでよ」
「まだ何も言ってないじゃん」
「顔が言ってる」
「そんな顔してないし」
ひなたが。
隣で笑う。
「少ししてますね」
「ひなたまで!?」
「…………」
蓮は。
三人のやり取りを見ていた。
けれど。
玲奈にもう一度聞かれる。
「違う?」
「…………」
蓮は。
今度は。
ちゃんと考えた。
◆
美月。
幼い頃から。
ずっと一緒だった。
学校へ行く時も。
帰る時も。
遊ぶ時も。
秘密基地にいる時も。
気づけば。
いつも近くにいた。
特別だから。
一緒にいたわけではない。
幼い蓮にとっては。
美月がいること自体が。
当たり前だった。
「……昔から」
「うん」
「……ずっと一緒だった」
美月の表情が。
少しだけ変わる。
「どれくらい?」
玲奈が聞く。
「…………」
「……小さい時から」
「うん」
「気づいたら」
蓮は。
美月を見る。
「……いつもいた」
「…………」
「学校でも?」
「……うん」
「遊ぶ時も?」
「……うん」
それだけではない。
家族を失って。
蓮の周りから。
当たり前だったものが。
一つ消えたあとも。
美月は。
変わらず。
そこにいた。
「…………」
蓮は。
少しだけ視線を落とす。
「……ずっと」
「うん?」
「……美月はいた」
部屋が。
静かになった。
玲奈は。
それ以上。
昔のことには踏み込まなかった。
しばらくして。
静かに聞く。
「じゃあ」
「……うん」
「蓮にとって、美月ってどういう人?」
「…………」
蓮は。
長く考えた。
幼馴染。
友達。
仲間。
どれも。
間違ってはいない。
でも。
どれもしっくりこない。
「……昔は」
「うん」
「美月がいるの」
言葉を探す。
「……当たり前だった」
「…………」
「朝会って」
「……うん」
「一緒に帰って」
「…………」
「次の日も、いる」
「…………」
そんなことを。
疑ったことすらなかった。
美月は。
そこにいる。
それが。
蓮にとっての。
日常だった。
「だから」
蓮が。
小さく言う。
「……家族に近い」
「え?」
美月が。
蓮を見る。
「家族?」
「…………」
蓮は。
少し考えて。
「……家族みたいなもの」
「…………」
玲奈も。
ひなたも。
静かに蓮を見る。
「美月が?」
「……うん」
「どうして?」
「…………」
蓮は。
もう一度。
美月を見る。
「……ずっといたから」
「…………」
「いるのが」
少し間を置いて。
「……当たり前だったから」
美月は。
何も言えなかった。
玲奈も。
もう。
からかうような表情はしていない。
「そっか」
静かに。
そう答えた。
「……うん」
◆
少し。
間が空いた。
玲奈が。
今度は静かな声で聞く。
「じゃあ」
「……?」
「もし美月がいなくなったら?」
「…………」
その瞬間。
蓮の表情が。
止まった。
さっきまでとは。
明らかに違う。
答えが。
すぐには出てこない。
「玲奈」
美月が。
玲奈を見る。
「ごめん」
玲奈も。
言ってから。
少し踏み込みすぎたと思ったらしい。
「別に変な意味じゃなくて――」
「……嫌」
三人が。
蓮を見る。
「え?」
「……嫌」
「美月がいなくなるのが?」
「……うん」
ひなたが。
静かに聞いた。
「怖いんですか?」
「…………」
蓮が。
ひなたを見る。
「……怖い?」
「はい」
「…………」
蓮は。
自分の中にあるものを。
確かめる。
楽しい。
悲しい。
寂しい。
怖い。
さっきまで。
そんな感情について。
話していた。
「…………」
やがて。
蓮が頷く。
「……たぶん」
そして。
視線を落とす。
「……もう」
「…………」
「……家族を失いたくない」
三人が。
黙った。
蓮は。
ゆっくり続ける。
「……あんな思い」
声が。
僅かに止まる。
「……もう、したくない」
「…………」
美月の表情が。
変わった。
家族を失った時。
蓮が。
何を感じていたのか。
今まで。
詳しく話したことはなかった。
けれど。
忘れたわけではない。
昨日まで。
そこにいた人が。
いなくなる。
もう。
会えない。
声も。
聞けない。
戻ってこない。
それを。
蓮は。
一度。
知っている。
「だから」
蓮が。
小さく言う。
「……美月まで」
そこで。
言葉が止まる。
「……いなくなるのは」
「…………」
「……嫌」
美月は。
何も言わず。
蓮を見ていた。
◆
「美月は」
蓮が続ける。
「……家族みたいなものだから」
「…………」
「家族は」
もう一度。
ゆっくり。
「……二度と失いたくない」
美月の目が。
僅かに揺れる。
「それに」
「……?」
「……俺も」
「…………」
「美月の前から」
蓮は。
少しだけ言葉を止める。
「……いなくなった」
「…………」
十年前。
蓮自身も。
美月の前から消えた。
蓮の意思ではない。
それでも。
美月からすれば。
ある日突然。
ずっと一緒にいた蓮が。
いなくなった。
「だから」
蓮が。
静かに言う。
「……人って」
「…………」
「いなくなる」
それは。
考え方ではない。
蓮が。
実際に知っていることだった。
家族が。
いなくなった。
そして。
自分も。
いなくなった。
だから。
目の前にいる人が。
明日も。
同じ場所にいる。
そのことを。
蓮はまだ。
当たり前だとは思えない。
◆
「私が」
美月が。
静かに聞いた。
「一番、いなくなってほしくない?」
「……うん」
蓮は。
迷わず頷いた。
「美月は」
「うん」
「……昔からいるから」
「…………」
「家族みたいで」
「…………」
「だから」
蓮の眉が。
僅かに寄る。
「……いなくなるの」
「…………」
「……一番、嫌」
玲奈とひなたは。
何も言わなかった。
「…………」
蓮が。
ふと。
玲奈を見る。
「……でも」
「え?」
「玲奈も」
今度は。
ひなたを見る。
「ひなたも」
「私も?」
「……うん」
「いなくなるのは」
蓮は。
少し考えて。
「……嫌」
玲奈の表情が。
柔らかくなる。
「そっか」
「……うん」
「でも美月は別?」
「……うん」
今度も。
迷わなかった。
「昔から」
「…………」
「……ずっといるから」
「なるほどね」
玲奈が。
小さく笑った。
ひなたも。
柔らかく頷く。
美月は。
何も言わず。
蓮を見ていた。
◆
その時。
美月が。
何かを思い出したように。
蓮を見る。
「そういえば」
「……?」
「蓮」
「……なに?」
「私が出かける時」
美月は。
少し考えながら言う。
「どこに行くの、とか」
「…………」
「何時に帰るの、とか」
「…………」
「よく聞くよね」
「……聞いてる?」
「うん」
「…………」
蓮は。
少し考えた。
「……そうかも」
「もしかして」
美月が。
静かに聞く。
「ちゃんと帰ってくるか、気になってた?」
「…………」
蓮が止まる。
「……分からない」
「うん」
「でも」
言葉を探す。
「朝」
「うん」
「……いる」
「…………」
「帰ったら」
「……うん」
「……いる」
「…………」
「それだと」
蓮は。
自分の中にあるものを。
考える。
「……大丈夫って思う」
美月の表情が。
少しだけ柔らかくなる。
「それ」
「……?」
「安心っていうんだと思う」
「……安心」
「うん」
「…………」
蓮が。
小さく繰り返す。
「……安心」
玲奈も。
ようやく。
さっきの話とつながったように。
頷いた。
「美月がいなくなるのは怖くて」
「……うん」
「美月が帰ってくると安心する」
「…………」
蓮は。
少し考えた。
「……両方」
「そっか」
◆
「蓮」
美月が。
静かに呼ぶ。
「……なに?」
「私」
「……うん」
「出かける時は、ちゃんと言うね」
「…………」
「どこに行くか」
「……うん」
「何時くらいに帰るか」
「…………」
「遅くなるなら、連絡する」
「…………」
「それで」
美月が。
少し笑う。
「帰ってきたら、ちゃんとただいまって言う」
「…………」
蓮が。
美月を見る。
「……毎回?」
「毎回」
「……忘れない?」
「忘れない」
「…………」
蓮は。
僅かに。
肩の力を抜いた。
「玲奈とひなたも」
蓮が。
二人を見る。
「ん?」
「はい?」
「…………」
言葉に迷う。
「……何も言わずに」
そして。
「……いなくならないで」
「…………」
玲奈が。
一瞬だけ。
目を見開いた。
ひなたも。
蓮を見つめる。
それから。
玲奈が。
柔らかく笑った。
「分かった」
「私もです」
ひなたも頷く。
「……うん」
「でも」
ひなたが続ける。
「蓮さんもですよ」
「……俺?」
「はい」
「蓮さんだって」
ひなたは。
静かに言う。
「何も言わずに、いなくならないでください」
「…………」
蓮が。
止まった。
十年前。
自分は。
美月の前から。
突然。
いなくなった。
自分の意思では。
なかった。
それでも。
残された美月にとっては。
突然だった。
「……俺も」
「はい」
「……言う?」
「言ってください」
玲奈も。
少し笑う。
「出かけるなら、出かけるって」
「……うん」
「帰ってきたら、美月にはただいま」
「…………」
蓮が。
美月を見る。
美月も。
静かに頷いた。
「私も、おかえりって言う」
「…………」
蓮は。
三人を見る。
美月。
玲奈。
ひなた。
「……分かった」
「約束ね」
美月が言う。
「……うん」
◆
家族を。
一度。
失った。
あんな思いは。
もう。
したくない。
そして。
自分自身も。
十年間。
大切な人の前から。
いなくなった。
だから。
蓮にとって。
誰かが。
今日そこにいることは。
明日もいるという。
保証にはならない。
美月は。
その中でも。
特別だった。
幼い頃から。
ずっと一緒にいた。
蓮にとって。
いることが。
当たり前だった。
だから。
家族に近い。
そして。
家族みたいな存在を。
蓮は。
もう二度と。
失いたくなかった。
玲奈も。
ひなたも。
今では。
いなくなってほしくないと思う。
けれど。
美月とは。
やはり。
少し違う。
「…………」
蓮は。
三人を見る。
今。
三人とも。
ここにいる。
何も言わずに。
いなくならない。
そして。
自分も。
いなくならない。
そんな。
小さな約束。
それだけで。
胸の奥にあったものが。
ほんの少し。
軽くなった。
「……安心」
蓮が。
小さく呟く。
「ん?」
美月が見る。
「……なんでもない」
蓮は。
首を振った。
誰かがそばにいることを。
蓮はまだ。
当たり前だとは思えない。
それでも。
帰れば。
美月がいる。
出かける時は。
ちゃんと伝える。
戻ってきたら。
ただいまと言う。
そして。
自分も。
もう。
何も言わずに。
いなくならない。
そんな日々を。
蓮は。
少しずつ。
信じ始めようとしていた。




