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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第二部 10年ぶりの日常、そして再び

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第158話 Sランクダンジョンの報酬

受付の奥。以前にも入ったことのある部屋へ。四人は案内された。


 扉が閉まる。そこには。支部長が待っていた。


「お疲れさまです」


「お疲れさまです」


 美月が答える。玲奈とひなたも頭を下げた。


 蓮は。少し遅れて。


「……こんにちは」


「はい。黒瀬さんも、お疲れさまです」


「……うん」


 支部長は。四人が座ったのを確認すると。手元の資料を開いた。


「まずは《白樹の迷宮》の依頼、お疲れさまでした」


「もう聞いてるんですか?」


 玲奈が聞く。


「先ほど完了報告が上がりました。第20階層まで問題なく巡回されたそうですね」


「はい」


 美月が頷く。


「異常もありませんでした」


「それは何よりです」


 支部長の視線が。蓮へ向いた。


「黒瀬さんにとっては、初めての通常依頼だったとか」


「……うん」


「いかがでしたか?」


「…………」


 蓮は。少しだけ考えた。


「……楽しかった」


「…………」


 支部長が。僅かに目を見開く。


 隣で。玲奈が小さく笑った。


「何?」


「いや。ちゃんと言うようになったなって」


「……?」


「何でもない」


 支部長も。少しだけ笑う。


「それなら良かったです」


「……うん」


「では」


 支部長が資料へ視線を戻した。


「本題に入りましょう」


 部屋の空気が。少しだけ変わった。


      ◆


「先日のSランクダンジョンの件について、内部での確認と精算が終了しました」


 美月の表情が。真剣なものへ変わる。


 あの日。《アストラ》の三人が受けたのは。Aランクダンジョンでの依頼だった。


 だが。依頼の途中。ヴァルゼインの影響によって。ダンジョンそのものが変異した。


 Aランクから。Sランクへ。


「今回の支払いは、いくつかに分かれています」


 支部長が。一枚目の資料を四人の前へ置いた。


「まず、《アストラ》が当初受注していたAランク依頼の報酬です」


【Aランク依頼報酬】


 六百万円。


「こちらは、当初の契約どおり支払われます」


 美月が頷く。


「はい」


 蓮は。静かに聞いていた。


 この依頼を受けた時。自分はまだ。《アストラ》のメンバーではなかった。


「次に」


 支部長が。二枚目の資料を置く。


【Sランク変異・追加危険報酬】


 二千四百万円。


「受注後に発生した、想定外のSランク変異に対する追加危険報酬です」


「二千四百万……」


 玲奈が数字を見る。


「はい」


 支部長が頷く。


「皆さんが受注した時点での危険度はAランク相当でした。しかし、その後はSランク相当の環境に長時間取り残されることになりました」


「…………」


 ひなたの表情が。僅かに硬くなる。


 あの時。三人は。本当に。地上へ戻れるかどうかも分からなかった。


「さらに」


 三枚目の資料。


【特別補償金】


 一千二百万円。


「こちらは?」


 美月が聞いた。


「今回のように、依頼開始後に危険度が大幅に変化し、当初の契約条件では想定されていなかった危険に晒された場合の特別補償です」


 玲奈が聞く。


「ギルド側のミスってことですか?」


「いいえ」


 支部長は。はっきりと首を振った。


「受注時点で確認されていたダンジョンの危険度は、間違いなくAランク相当でした」


「…………」


「今回の変異について、事前に予測できる情報も確認されていません」


 ヴァルゼインによる。ダンジョンへの干渉。


 それによって。依頼開始後に。状況そのものが変わった。


「ですので、これはギルドの過失に対する賠償ではありません」


 支部長が続ける。


「想定を大きく超える危険に巻き込まれた冒険者へ支払われる、制度上の補償です」


「なるほど」


 美月が頷いた。


「分かりました」


      ◆


「そして、もう一つ」


 支部長が。最後の資料を取り出した。


【調査協力報酬】


 八百万円。


「これは、黒瀬さんを含む四名が対象です」


「……俺も?」


 蓮が聞く。


「はい」


 支部長が頷く。


「先日、皆さんには正式な調査協力をお願いしました」


「……うん」


「そこで提供していただいた証言や情報は、今回の異常を整理する上で非常に重要なものでした」


 ヴァルゼインが。どのようにダンジョンへ干渉していたのか。


 内部で。何が起きていたのか。


 その情報は。今後。同様の事態が起きた時の資料にもなる。


「正式な協力をお願いした以上、無償で情報を提供していただくわけにはいきません」


「……そっか」


 蓮が頷いた。


 支部長が。四枚の資料を並べる。


【Aランク依頼報酬】

六百万円


【Sランク変異・追加危険報酬】

二千四百万円


【特別補償金】

一千二百万円


【調査協力報酬】

八百万円


 合計。五千万円。


「…………」


 玲奈が。しばらく数字を見つめる。


「五千万……」


「かなり大きいですね……」


 ひなたも。驚いたように資料を見る。美月も。僅かに目を見開いていた。


 蓮は。


「…………」


 資料を見ている。けれど。それだけだった。


「蓮」


 玲奈が呼ぶ。


「……なに?」


「驚かないの?」


「……?」


「五千万だよ?」


「……うん」


「分かってる?」


 蓮は。もう一度数字を見る。


「……大きい金額」


「それだけ?」


「……うん」


「やっぱりだ」


 玲奈が苦笑した。


      ◆


「支払い対象について説明します」


 支部長が続けた。


「まず、Aランク依頼報酬六百万円」


 美月が頷く。


「追加危険報酬二千四百万円」


「はい」


「そして、特別補償金一千二百万円」


 三つを合わせて。四千二百万円。


「こちらは、当時依頼を受けていた神崎さん、水野さん、小川さんの三名が対象です」


 三人で分ければ。一人。一千四百万円。


「そして、調査協力報酬八百万円については」


 支部長が蓮を見る。


「黒瀬さんを含む四名が対象となります」


 一人。二百万円。


 つまり。ここまで説明された金額だけなら。


 美月。玲奈。ひなたには。それぞれ一千六百万円。


 蓮には。二百万円。


「この配分で――」


「すみません」


 支部長が言い終える前に。美月が口を開いた。


「その前に、一つ確認してもいいですか?」


「はい」


 支部長が美月を見る。美月は。資料へ視線を落とした。


「蓮への支払いは」


 一度。言葉を区切る。


「これだけですか?」


「…………」


 玲奈の表情も。すでに険しくなっていた。


 ひなたも。資料を見つめている。


「私も、それが気になりました」


 ひなたが静かに言う。支部長が三人を見る。


「黒瀬さんに対する支払い、という意味でしょうか」


「はい」


 美月が答える。


「調査協力の二百万円だけなら……私は納得できません」


「私も」


 玲奈が。すぐに続いた。


「むしろ、そこが一番気になる」


「…………」


 蓮が三人を見る。


「俺は――」


「蓮はちょっと待って」


 玲奈が止める。


「……?」


「たぶん、蓮は『別にいい』って言うでしょ」


「……うん」


「ほら」


「玲奈」


 美月が少し苦笑する。だが。すぐに。表情を戻した。


「でも、玲奈の言いたいことは分かる」


「ですよね」


 玲奈が支部長を見る。


「私たち三人には、一人一千六百万ですよね?」


「ここまで説明した内容では、そうなります」


「蓮は二百万」


「はい」


「…………」


 玲奈の眉が寄る。


「蓮が来なかったら」


 部屋が静かになった。


「私たち三人、生きて帰れてなかったかもしれないんですよ?」


「…………」


「いや」


 玲奈は。首を振る。


「たぶん、無理だった」


 ひなたも。小さく頷いた。


「私も……そう思います」


 あの時。玲奈とひなたは。完全に追い詰められていた。


 そして。美月は。一度。本当に命を失った。


 蓮が来なければ。三人が今ここにいることは。なかったかもしれない。


「蓮が来てくれなかったら」


 美月が静かに言う。


「私は、ここにいません」


「…………」


「玲奈とひなたも、どうなっていたか分からない」


 美月の声は。落ち着いていた。


 けれど。その表情は。真剣だった。


「それなのに」


 玲奈が続ける。


「助けられた私たちには、追加危険報酬も補償金も出る」


 そして。蓮を見る。


「助けた蓮には、調査協力の二百万だけなんですか?」


「……俺は別に」


「ほら、言った」


「……?」


 玲奈が。すぐに返す。


「蓮が気にするかどうかの話じゃないの」


「…………」


「私たちは」


 玲奈の声が。少しだけ強くなる。


「蓮に助けてもらった側なんだから」


「私も同じ気持ち」


 美月が言う。


「蓮が報酬を欲しがってるかどうかとは、別の話だと思う」


「私もです」


 ひなたも頷く。


「黒瀬さんが来てくれなかったら、私は今ここにいなかったかもしれません」


「…………」


 蓮は。三人を見る。


 自分の報酬の話なのに。自分より。三人の方が。ずっと真剣だった。


 美月が。もう一度。支部長を見る。


「救助に対する評価は、ないんでしょうか」


「…………」


 支部長は。三人の言葉を。最後まで聞いた。


 そして。静かに頷いた。


「ご安心ください」


「え?」


「その点についても、当然検討しています」


 玲奈が止まる。


 支部長は。別の資料を一枚。机の上へ置いた。


「ここまで説明したのは、当初の依頼と、その後の調査協力に関する支払いです」


 美月が。新しい資料を見る。


「ということは……」


「はい」


 支部長の視線が。蓮へ向く。


「黒瀬さんが行った救助、およびSランクダンジョンの異常終息については、別に評価しています」


【特別救助・討伐功労金】


 一千万円。


「…………」


 玲奈が。数字を見る。


「用意してたんですか」


「はい」


「なら最初から言ってくださいよ……」


「玲奈」


 美月が苦笑する。


「支払いの性質が異なりますので、順番に説明していたんです」


 支部長が答えた。


「……すみません」


「いえ」


 玲奈が。少しだけ気まずそうに座り直す。


 ひなたが。小さく笑った。


「玲奈さん、完全に怒ってましたね」


「だって納得できなかったんだから」


「私もですけど」


「でしょ?」


 美月も。資料を見ながら。小さく息を吐く。


「私も、これがなかったら聞くつもりだった」


「…………」


 蓮は。自分の前に置かれた資料を見る。


 一千万円。


「……俺に?」


「はい」


 支部長が答える。


「三名の冒険者の救助、およびSランクダンジョンの異常終息に対する特別功労金です」


「…………」


「正式な救助依頼として発注されたものではありません。そのため通常の依頼報酬とは扱いが異なります」


「……うん」


「ですが」


 支部長は続ける。


「三名を救助し、異常の原因となった存在を討伐した。その功績を、ギルドとして何も評価しないということはありません」


 蓮は。少し考える。


「……助けたのは」


「はい」


「……助けたかったから」


「承知しています」


「……報酬が欲しくて行ったんじゃない」


「それも承知しています」


 支部長は。穏やかに答えた。


「ですが、黒瀬さんが報酬を求めるかどうかと、ギルドが功績を評価するかどうかは別の話です」


「…………」


「あなたが三人を救い、異常を終息させた。その事実は変わりません」


 蓮は。資料を見る。


 そして。少し考えてから。


「……そっか」


 頷いた。


「……分かった」


 玲奈が。ようやく息を吐く。


「それならいい」


「……玲奈がもらうわけじゃないよ?」


「分かってる!」


「……?」


 美月が。思わず笑った。


「玲奈らしいね」


「だって、本当に納得できなかったんだから」


「私も同じです」


 ひなたが言う。


「私も」


 美月も続いた。


「…………」


 蓮は。三人を見る。


「……変なの」


「蓮が気にしなさすぎるの」


 玲奈が即座に返した。


      ◆


 これで。今回の支払いは。


【Aランク依頼報酬】

六百万円


【Sランク変異・追加危険報酬】

二千四百万円


【特別補償金】

一千二百万円


【調査協力報酬】

八百万円


【特別救助・討伐功労金】

一千万円


 総額。六千万円。


 美月。玲奈。ひなたには。それぞれ一千六百万円。


 蓮には。調査協力報酬二百万円と。特別救助・討伐功労金一千万円。


 合わせて。一千二百万円。


「この内容で処理させていただきます」


 支部長が言う。


「はい」


 美月が答える。


「お願いします」


      ◆


 これで。話は終わる。


 そう思った時。支部長は。まだ資料を閉じなかった。


「そして」


「?」


 美月が支部長を見る。


「もう一件あります」


 蓮も。顔を上げた。


「黒瀬さん」


「……うん」


 支部長の視線が。蓮へ向く。


「以前、お預かりした魔石についてです」


「…………」


 蓮は少し考える。そして。思い出した。


「……十億の?」


「はい」


 以前。蓮は。美月を助けるために。その魔石をギルドへ渡すと約束した。


 だが。後日。支部長から。無償では受け取れないこと。


 正式な手続きを通して。ギルドが買い取らせてほしいことを告げられた。


 その時。蓮は。美月に聞いた。


 買い取ってもらっても。約束を守ったことになるのか。


 美月は。なると答えた。


 だから。蓮も。正式な買い取りを受け入れた。


「正式な鑑定と、上部組織の承認がすべて終了しました」


「……そっか」


「はい」


 支部長が。新しい資料を取り出す。


「そして」


 一度。蓮を見る。


「買い取り価格が、正式に決定しました」


「…………」


 玲奈とひなたが。自然と資料へ視線を向ける。


 美月も。僅かに身を乗り出した。


 蓮だけは。いつもとほとんど変わらない。


「……いくら?」


 支部長が。資料を机の上へ置いた。


「こちらです」


「…………」


 蓮以外の三人が。そこへ書かれた数字を見る。


 最初に聞いていた。十億円という評価。


 それだけでも。十分に現実離れした金額だった。


 だが。正式な鑑定と審査を経て。決められた買い取り価格は。


 その十億円という数字さえ。上回っていた。

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― 新着の感想 ―
Aランク依頼報酬六百万円 追加危険報酬二千四百万円 そして、特別補償金一千二百万円 、、、うーん、これで蓮君1000万は安いのでは?Sランクに変異した所に行かせるならSランク依頼だろうし追加危険…
いつにも増して。句読点の配置が。おかしすぎる。 戦闘シーンでの。緊迫感を表現するための。体言止め目的としての。句点には。文句はないが。 戦闘シーンほど。緊迫感が。求められないシーンであるのに。あまりに…
いや、ギルドじゃなくて助けられたの自分達なんだから自分達で払うべきなのでは?アストラに責任はなくても、ギルドにも大して責任ないし、素材も得られてないしでギルドとしては大赤字すぎる…基本自己責任でしょう…
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