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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第一部 10年ぶりの帰還

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第15話 火

 翌日。


 蓮は昨日の夜に考えていたことを試してみることにした。


 魔物の肉。


 生では、とても食べられなかった。


 硬くて、臭くて、噛んでもなかなか飲み込めない。


 けれど、火があれば。


「……焼いてみたい」


 問題は、その火をどうやって作るかだった。


 蓮は周囲を探した。


 乾いた草。


 細い枝。


 そして、硬い石。


 使えそうなものを集める。


「これで……できるのかな」


 蓮は石を二つ手に取った。


 ぶつけてみる。


 カンッ。


 小さな音が響く。


 もう一度。


 カンッ。


 何も起こらない。


「……無理か」


 蓮は別の石を拾った。


 今度は少し違う組み合わせでぶつけてみる。


 カンッ。


 カンッ。


 何度も繰り返す。


 手が痛くなってきた。


 それでも続けた。


 そのとき。


 小さな光が飛んだ。


「……!」


 蓮は目を見開いた。


 もう一度。


 カンッ。


 また小さな光が飛ぶ。


「火花……?」


 蓮は地面に乾いた草を集めた。


 その上に細かくした植物を置く。


 そして、さっきの石を打ち合わせる。


 カンッ。


 火花が落ちる。


 しかし、何も起こらない。


「……」


 もう一度。


 カンッ。


 また失敗。


 さらにもう一度。


 カンッ。


 煙が少しだけ上がった。


「……煙?」


 蓮は慌てて顔を近づける。


 まだ火はない。


 けれど、何かが変わった。


「もう少し……」


 乾いた草をさらに細かくする。


 何度も火花を落とす。


 それでも、なかなか燃えない。


 火花が消える。


 また失敗する。


 それでも蓮は諦めなかった。


 何度目だったか。


 小さな煙が立ち上った。


「……!」


 蓮は息を止めた。


 煙の下で、小さな赤い光が生まれている。


 蓮は急いで乾いた草を少しずつ重ねた。


 息を吹きかける。


 赤い光が強くなる。


 そして――


 小さな炎が生まれた。


「……火だ」


 蓮はじっと炎を見つめた。


 揺れている。


 小さい。


 少し風が吹けば消えてしまいそうなほど弱い。


 それでも。


 確かに火だった。


 蓮は嬉しそうに笑った。


「……できた」


 何度も失敗した。


 手も痛い。


 それでも、自分の力で作った。


 蓮にとって、それは大きな一歩だった。


     ◇


 しばらくして。


 蓮は小さな火を消さないように、周囲に石を並べた。


 火が燃え移らないように乾いた草から少し離す。


 そして、昨日倒した魔物の肉を取り出した。


 今までは食べられなかった肉。


 今日は違う。


 細い枝に肉を刺し、火の上にかざす。


 しばらくすると、肉から音が聞こえてきた。


 ジュッ。


「……!」


 匂いが変わった。


 生のときとは違う。


 蓮は何度も肉を回しながら、じっと焼き続けた。


 表面が茶色くなる。


 中まで火が通ったことを確認してから、蓮は小さくちぎった。


 恐る恐る口に入れる。


 噛む。


「……」


 蓮はもう一度噛んだ。


「……うまい」


 思わず声が出た。


 もちろん、普通の料理とは比べものにならない。


 味付けもない。


 肉も硬い。


 それでも。


 生で食べたときとは、まるで違った。


 蓮は夢中になって食べた。


 一口。


 また一口。


 あっという間に肉がなくなった。


 最後に木の実を一つ食べる。


「……これも悪くないけど」


 蓮は小さな炎を見る。


「肉の方がいいな」


 少しだけ笑った。


     ◇


 その夜。


 蓮は火のそばに座っていた。


 小さな炎が、岩壁を淡く照らしている。


 昨日までの暗闇とは違う。


 少しだけ暖かい。


 そして、何より安心する。


 蓮は炎を見つめた。


「……火って、すごいな」


 けれど、薪は少しずつ短くなっていた。


 炎も次第に小さくなっていく。


 蓮は慌てて周囲を見る。


 まだ乾いた枝はある。


 けれど、今日はもう十分に動いた。


 身体も疲れている。


「……明日、もっと薪を集めよう」


 蓮は火を見つめながら考えた。


 ずっと燃え続けるわけじゃない。


 薪がなくなれば消える。


 だから、火を使うには準備が必要だ。


 そんなことも、今日初めて知った。


 やがて炎はさらに小さくなった。


 蓮は最後まで火を見届ける。


 小さな炎が消えた。


「……消えた」


 蓮は少し寂しそうに呟いた。


 けれど、もう一度作れる。


 それだけでも十分だった。


 蓮は岩陰に横になる。


「明日も火を起こそう」


 そう呟いて、目を閉じた。


 暗闇の中。


 蓮は静かに眠りについた。

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