第14話 蓮の地図
その日の探索中。
蓮は見覚えのない通路を見つけた。
「……ここ、通ったことない」
少し迷った。
進むか。
戻るか。
蓮は周囲を確認する。
魔物の気配はない。
危険な匂いもしない。
それでも慎重に進む。
十歩。
二十歩。
三十歩。
やがて通路の先に、広い空間が見えてきた。
「……何だ、ここ」
蓮は足を止めた。
そこには大きな岩がいくつも並んでいた。
そして、その奥には淡く光る植物が生えている。
「……食べられるかな」
蓮は近づかず、まず観察する。
匂い。
色。
形。
以前食べた植物と似ている。
けれど、同じとは限らない。
「……やめておこう」
蓮は手を出さなかった。
食料が欲しい。
でも、知らないものを食べるのは危険だ。
今の蓮が食べているのは、これまでに安全だと確認した木の実だった。
味は決して良くない。
酸っぱいものもあれば、苦いものもある。
それでも、食べられるだけありがたかった。
一方で、倒した魔物の肉は食べられなかった。
最初の頃、空腹に耐えきれず、一度だけ生の肉を口にしたことがある。
噛んだ瞬間。
「……まずい」
硬い。
臭い。
口の中に嫌な味が残る。
何度噛んでも飲み込めず、結局吐き出してしまった。
それ以来、魔物の肉には手をつけていない。
「……火があれば食べられるのかな」
そんなことを考えたこともある。
けれど、蓮には火を起こす方法が分からなかった。
だから今は、食べられる木の実を探すしかない。
蓮は新しく見つけた植物をもう一度見た。
「……これは、まだやめておこう」
無理に食べる必要はない。
食べられるものが分かっているなら、それを探せばいい。
蓮はその場を離れた。
◇
帰り道。
蓮はふと立ち止まった。
後ろを見る。
来た道が見える。
そして、さっき見つけた空間の場所を頭の中で思い出す。
「覚えた」
帰ったら地図に書き加える。
それだけでも、少しずつダンジョンが分かってくる。
◇
夜。
蓮は地面に描いた地図を見ながら、今日見つけた場所を追加していた。
最初は小さかった地図が、少しずつ広がっている。
「ここからこっち」
「水場はここ」
「魔物の巣はこの辺」
そして。
まだ分からない場所には、何も描かない。
分からないことを、分かったことにしない。
それも蓮がこの場所で覚えたことだった。
地図を描き終えると、蓮は今日の食事を取り出した。
昨日見つけた木の実。
蓮は一つ口に入れる。
「……酸っぱい」
顔をしかめながら、それでも食べる。
美味しくはない。
けれど、生きるためには必要だった。
木の実を食べ終える。
蓮は残った食料を見つめた。
「……もっと食べられるもの、探さないとな」
そして、少し離れた場所に転がっている魔物の死骸を見る。
肉はある。
けれど、生では食べられない。
「……火があればな」
蓮は小さく呟いた。
その言葉をきっかけに、蓮は考え始めた。
火。
どうすれば作れるのか。
何を使えばいいのか。
まだ何も分からない。
けれど。
明日から、火についても考えてみようと思った。
蓮は地図を大切にしまった。
そして、また眠りについた。




