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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第一部 10年ぶりの帰還

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第13話 魔物の巣

 それから、また時間が過ぎた。


 蓮は以前よりも慎重になっていた。


 魔物を見つけても、すぐには近づかない。


 まず観察する。


 どこから来たのか。


 どこへ向かうのか。


 何を食べるのか。


 そして、どこへ戻っていくのか。


 それを繰り返しているうちに、蓮はあることに気づいた。


 魔物には、それぞれ決まった行動がある。


     ◇


 その日。


 蓮は一匹の小さな魔物を追っていた。


 倒すためではない。


 その魔物がどこへ行くのかを知りたかった。


 距離を十分に取って、後を追う。


 魔物は何度か立ち止まり、周囲を確認する。


 そして、細い通路へ入っていった。


「……こっちか」


 蓮も慎重についていく。


 しばらく進むと、通路の先が少し開けた場所になっていた。


 蓮は岩陰から様子を見る。


 そこには、何匹もの魔物がいた。


「……こんなに?」


 蓮は思わず息を止めた。


 今まで見たことのない数だった。


 魔物たちは互いに争うこともなく、その場所で過ごしている。


 奥には小さな魔物もいる。


「ここが……巣?」


 蓮は動かない。


 戦うという選択肢は最初からなかった。


 あの数を相手にしたら、間違いなく危険だ。


 蓮は静かに後退した。


 一歩。


 また一歩。


 十分に離れてから、ようやく息を吐く。


「危なかった……」


 もし何も考えずに進んでいたら。


 知らないうちに巣へ入り込んでいたら。


 どうなっていたか分からない。


     ◇


 蓮は少し離れた場所に座った。


 そして、頭の中で今見たことを整理する。


 あの通路には魔物が多い。


 ということは、あそこを通るのは危険。


 逆に考えれば。


「あの辺りは、魔物が少ないかもしれない」


 蓮は周囲の地形を思い出す。


 魔物が集まる場所。


 魔物がいない場所。


 水場。


 食料がある場所。


 安全に休める場所。


 少しずつ、それぞれの位置が頭の中で繋がっていく。


 蓮はまだ知らなかった。


 それが、ダンジョンを攻略するための最初の一歩になっていることを。


     ◇


 その日の夜。


 蓮は岩陰で休んでいた。


 いつものように、今日一日のことを思い返す。


 最近は、魔物を見ることよりも。


 ダンジョンそのものを見ることが増えていた。


「……この場所にも、決まりがあるのかも」


 水場がある。


 魔物が集まる場所がある。


 魔物が避ける場所もある。


 通路にも、よく使われる道がある。


 ただの偶然ではないように思えた。


「もっと調べてみよう」


 蓮はそう決めた。


 魔物を倒すだけではない。


 このダンジョンを知る。


 それが、生き残るためにも必要だった。


     ◇


 翌日から。


 蓮は歩き方を変えた。


 ただ前へ進むのではなく、周囲を観察する。


 壁の形。


 通路の幅。


 魔物の足跡。


 水の流れ。


 空気の変化。


 少しでも気になるものがあれば覚える。


 そして、安全そうな場所へ戻る。


 一日では、ほとんど何も分からない。


 二日でも。


 三日でも。


 それでも蓮は続けた。


 少しずつ。


 自分が生きている場所を理解していく。


 それはやがて。


 蓮だけの地図になっていった。

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