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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第一部 10年ぶりの帰還

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第12話 初めての戦い方

 ダンジョンに閉じ込められてから、どれくらい経ったのか。


 蓮には正確には分からなかった。


 ただ、毎日を生きることだけは続けていた。


 水を探す。


 食料を探す。


 身体を休める。


 そして、魔物から逃げる。


 時には戦う。


 そんな生活を繰り返していた。


     ◇


 ある日。


 蓮はいつもの通路を歩いていた。


 すると。


 前方から物音が聞こえた。


「……」


 蓮はすぐに足を止めた。


 岩陰に身を隠す。


 耳を澄ます。


 足音が近づいてくる。


 一つ。


 いや、二つ。


 蓮は槍を握った。


 しばらくすると、二匹の小さな魔物が姿を現した。


 以前なら、二匹いるだけで逃げていただろう。


 しかし今は違う。


 蓮は二匹の動きを観察した。


 一匹が前。


 もう一匹が少し後ろ。


「……一匹ずつなら」


 蓮はゆっくりと後退する。


 二匹が近づいてくる。


 そして。


 前にいた一匹が走り出した。


 蓮は横へ避ける。


 魔物が通り過ぎる。


 その瞬間。


 槍を振る。


 魔物が倒れた。


「……一匹」


 もう一匹が飛びかかってくる。


 蓮は槍を構えた。


 しかし。


 魔物の動きが予想より速い。


「……っ!」


 蓮は咄嗟に身体をひねった。


 爪が腕をかすめる。


「痛っ……!」


 血が流れる。


 蓮は距離を取った。


 腕を見る。


 傷は深くない。


 まだ戦える。


「……大丈夫」


 蓮はもう一度構えた。


 魔物が走ってくる。


 今度は焦らない。


 足を見る。


 身体の向きを見る。


 跳ぶ直前の動きを見る。


 そして。


 魔物が跳んだ。


 蓮は一歩横へ動く。


 魔物の身体が目の前を通り過ぎる。


 その瞬間。


 槍を突き出した。


 魔物が倒れる。


 静かになった。


「……」


 蓮はその場に座り込んだ。


 腕の傷を見る。


 痛い。


 けれど。


 生きている。


「……勝った」


 蓮は初めて、自分から魔物と戦い、勝ったことを実感した。


 最初にスライムを倒したときとは違う。


 あのときは、必死だった。


 何も分からなかった。


 ただ生きるために戦った。


 今は違う。


 相手を見て。


 動きを読んで。


 自分で考えて戦った。


     ◇


 蓮は傷口を水で洗った。


 そして、持っていた植物の葉を巻く。


 これも以前の経験から覚えたことだった。


 少しずつ。


 本当に少しずつ。


 蓮はこの場所で生きる方法を覚えていた。


「……次は、もっと上手くできる」


 そう呟く。


 怖くなくなったわけではない。


 魔物と戦うたびに怖い。


 死ぬかもしれない。


 傷つくかもしれない。


 それでも。


 逃げるだけでは、いつか生きられなくなる。


 だから蓮は戦い方を覚えていく。


     ◇


 その日の夜。


 蓮は槍を眺めていた。


 粗末な武器。


 けれど、今の蓮には大切なものだった。


「もっと丈夫な武器が欲しいな……」


 蓮は呟いた。


 魔物の身体。


 骨。


 硬い石。


 使えそうなものはたくさんある。


 今まではただ生きることで精一杯だった。


 けれど。


 これからは違う。


 武器を作る。


 戦い方を覚える。


 身体を鍛える。


 この場所で生き残るために必要なことを、一つずつ覚えていく。


 蓮の生活は、少しずつ変わり始めていた。


 ただ逃げ続ける少年から。


 自分の力で生き残る少年へ。


 蓮は、ゆっくりと成長していた。

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