↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第二部 10年ぶりの日常、そして再び

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
136/492

第136話 ギルドからの呼び出し

ここからギルドマスター→支部長に変更します。

今までの話も少しずつ修正していくつもりです。

見逃しがあったら報告してくれたら助かります。

朝食を終えても、家の外の騒ぎは収まっていなかった。窓の向こうには、相変わらず報道陣がいる。


 玲奈がカーテンの隙間から外を覗く。


「……これ、普通に玄関から出るの無理じゃない?」


「たぶん囲まれるね」


 美月も外を確認しながら答えた。


「どうするんですか?」


 ひなたが聞く。


 三人が考えている横で、蓮が口を開いた。


「……飛んでいけば?」


「え?」


 美月が振り返る。


「……ギルドまで」


「蓮が?」


「……うん」


「蓮だけ?」


「……うん」


 玲奈が蓮を見る。


「私たちは?」


 蓮は少し考えた。


「……車?」


「じゃあ最初から全員車で行けばいいでしょ」


「……そっか」


 玲奈が吹き出した。美月も少し呆れたように笑う。


「それに蓮がこの家から飛んで出ていったら、それこそ大騒ぎになるから」


「……なんで?」


「あれだけカメラがいる前で、世界ランキング一位が空飛んで出ていったらどうなると思う?」


 蓮が窓の外を見る。


「……だめ?」


「絶対だめ」


「……分かった」


 納得したのかは分からないが、蓮は頷いた。


 結局、美月がギルドへ連絡し、人目につきにくい場所まで迎えの車を回してもらうことになった。


「裏から出れば、まだ何とかなるかな」


「表よりはマシじゃない?」


 玲奈も頷く。


「蓮、記者に何か聞かれても答えなくていいからね」


「……うん」


「あと、飛ばない」


「……分かった」


「そこは本当にお願いね」


 蓮は少しだけ眉を寄せた。


      ◆


 しばらくして、四人はタイミングを見計らって家を出た。表側にはまだ多くの記者がいる。


 できるだけ目立たないように裏手へ回り、迎えの車が待つ場所へ向かう。


 あと少しというところで。


「黒瀬さん!」


 大きな声が響いた。蓮が足を止める。


「Unknown本人ですよね!」


「昨日のSランクダンジョンについてお話を!」


「本当に世界ランキング一位の黒瀬蓮さんですか!?」


 数人の記者がこちらへ走ってくる。蓮はその様子を見たまま動かない。


「……俺?」


「そう、蓮」


 美月がすぐに蓮の前へ出た。


「今はお答えできません」


「神崎さん! 黒瀬さんとはどういうご関係ですか!」


「昨日のダンジョンで何があったんですか!」


「Unknownは以前から日本にいたんですか!」


 次々に質問が飛んでくる。


 蓮は、どう答えればいいのか分からない。知らない人間に突然囲まれて質問されること自体、ほとんど経験がなかった。


「蓮、行くよ」


「……うん」


 美月に促され、そのまま車へ向かう。玲奈とひなたも続いた。


 記者たちがさらに近づこうとするが、迎えに来ていたギルド職員が間に入り、四人を車へ乗せる。


 ドアが閉まると、外の声が少し遠くなった。蓮は窓の外を見る。


「……いっぱい聞かれた」


「これからもっと増えると思うよ」


 玲奈が言う。


「……もっと?」


「世界一位の正体が突然判明したんだから」


「……いつまで?」


「それは分かんない」


 蓮は明らかに嫌そうな顔をした。美月がそれを見る。


「だから、しばらく一人で勝手に出歩かないでね」


「……子供じゃない」


「分かってる」


「……一人でも平気」


「戦う話じゃないの」


 美月が少し真面目な顔になる。


「蓮なら、自分の身は守れると思う。でも、記者とか、これから近づいてくる人たちにどう対応するかは別だから」


 蓮は黙って美月を見る。


「強ければ何でも解決できるわけじゃないの」


「……難しい」


「うん」


 美月は少しだけ笑った。


「だから、そういうのは私たちにも頼って」


 蓮は少し考えてから頷いた。


「……分かった」


      ◆


 車がギルドへ到着する。建物の前にも何人かの記者がいたが、自宅前ほどではない。


 ギルド職員に案内され、四人はそのまま中へ入った。扉をくぐった瞬間、周囲の視線が一斉に集まる。


 受付にいる職員も、依頼を確認していた冒険者も、休憩スペースにいた者たちも、誰もが蓮を見ていた。


「……見られてる」


 蓮が小さく言う。


「そりゃ見るよ」


 玲奈が答える。


「……なんで?」


「まだ言う?」


 玲奈が呆れたように蓮を見る。


「昨日まで正体不明だった世界一位が、普通にギルドの中歩いてるんだから」


「……そう」


 蓮は周囲を見回す。何人かと目が合う。そのたびに、相手の方が先に視線を逸らした。


「黒瀬さん」


 職員が声をかける。


「こちらです」


「……はい」


 四人は受付には向かわず、そのまま上階へ案内された。


 通された会議室には、ギルド支部長をはじめ、ダンジョン管理担当や記録担当など、数人の上級職員が待っていた。四人が入ると、その視線が蓮へ集まる。


「黒瀬蓮さんですね」


「……はい」


「本日は来ていただき、ありがとうございます」


「……うん」


 美月が蓮を見る。


「蓮」


「……?」


「こういう時は『はい』でいいよ」


「……はい」


 玲奈が小さく笑いそうになり、口元を押さえた。四人が席につく。


 しかし、支部長はすぐには資料を開かなかった。


「その前に」


 支部長が立ち上がり、美月、玲奈、ひなたへ向き直った。


「神崎さん。水野さん。小川さん」


 三人が支部長を見る。


「昨日の件について、まずギルドを代表してお詫びします」


 それに続いて、他の職員たちも立ち上がった。


「皆さんにはAランクダンジョン調査依頼として入場していただきました。しかし、内部で発生した異常を事前に把握することができず、結果として極めて危険な状況に置いてしまいました」


 支部長が深く頭を下げる。


「異常を確認したあとも、十分な速さで救助を到達させることができなかった。管理する立場として、本当に申し訳ありませんでした」


 職員たちも一斉に頭を下げた。会議室が静かになる。


 玲奈も、ひなたも、すぐには何も言わなかった。美月は少しだけ視線を落としたあと、支部長を見る。


「……頭を上げてください」


 支部長たちがゆっくり顔を上げる。


「ダンジョンが突然変わったことまで、ギルドのせいだとは思ってません。予測できなかったことなら、仕方がない部分もあると思います」


「……ありがとうございます」


「でも」


 美月の表情が少しだけ真剣になる。


「私たちが戻れなくなってから、外で何が起きていたのか。どうして救助が届かなかったのか。それはちゃんと知りたいです」


「もちろんです」


 支部長が頷く。


「今回の異常発生の原因については現在も調査中です。また、異常発生後の対応と救助体制についても、すでに検証を開始しています」


 玲奈が腕を組む。


「次に同じことが起きた時、今回みたいにならないようにするってこと?」


「はい」


「なら、そこはちゃんとやってください」


「必ず」


 ひなたも静かに頷いた。支部長は三人へもう一度頭を下げてから席につく。


 そして、今度こそ資料を開いた。


「そのうえで、今回の原因究明と今後の対策のために、昨日ダンジョン内部で何が起きたのか、事実確認をさせてください」


「はい」


 美月が代表して答えた。


 最初はアストラ三人への確認から始まった。Aランクダンジョンとして入場したこと。攻略途中で内部構造が変化し、上層へ戻ることが困難になったこと。


 そして、四十五階層で三人では対処できないほど強力な魔物と遭遇したこと。


 管理担当者が資料へ視線を落とす。


「その戦闘で、神崎さんが重傷を負ったと報告を受けています」


 美月は少し黙った。


「……重傷じゃありません」


 管理担当者が顔を上げる。


「え?」


「私、一度死にました」


 会議室が静まり返った。支部長の表情が変わる。


「……死亡した、と?」


「はい」


「心肺停止という意味でしょうか」


 美月が答える前に、ひなたが口を開いた。


「私が確認しました」


 全員の視線がひなたへ向く。


「呼吸もありませんでした。脈もなくて、心臓も止まっていました」


 ひなたは少しだけ表情を曇らせる。


「……完全に亡くなっていました」


 職員たちの表情が一変した。


「では……」


 支部長が美月を見る。


「なぜ今、ここに?」


 美月は蓮を見た。


「蓮が助けてくれました」


 今度は全員の視線が蓮へ向く。


「黒瀬さんが?」


「……はい」


「どのような方法で?」


 蓮が答えようとする。その前に、美月が口を開いた。


「蓮が持っていた特殊なアイテムです」


「特殊なアイテム……」


 管理担当者の表情が変わる。


「死亡した人間を蘇生できるということですか?」


 美月は少しだけ間を置く。


「少なくとも、私が助かったのは事実です」


「そのアイテムについて、詳しくお聞きしても?」


 美月の声が僅かに硬くなる。


「それは今回のダンジョン異常の原因究明に必要ですか?」


 職員が黙った。支部長が少し考えてから答える。


「……いえ。少なくとも、異常発生の原因を調べるうえでは必要ありません」


「なら、蓮の持ち物についてはここまでにしてください」


 美月は蓮を一度見てから続けた。


「本人が話したいなら別です。でも、私たちから詳しく話すことではないと思っています」


 支部長は静かに頷いた。


「分かりました。これ以上は追及しません」


「ありがとうございます」


 その後、玲奈とひなたも、蓮が持っていた回復用のアイテムによって完全に回復したことが確認された。


「つまり、黒瀬さんが四十五階層へ到達した時点で、神崎さんは死亡。水野さんと小川さんも戦闘継続が困難な状態だった」


「はい」


 玲奈が答える。


「それを黒瀬さんが全員回復させた、と」


「そうです」


 担当者は記録を取りながら、次の項目へ移る。


「その後、皆さんは五十階層へ向かったのですね?」


「はい」


 美月が答える。


「上へ戻ろうとはしなかったのですか?」


「戻ろうとはしました」


「しかし?」


「道が変わっていて、上へ戻れる保証がありませんでした」


 担当者が蓮を見る。


「そこで、黒瀬さんが下へ進む判断を?」


「……はい」


「なぜ下へ?」


 蓮は少し考える。


「……このダンジョンが、五十階層までって聞いてたから」


「五十階層まで?」


「……はい」


「それで?」


「……上には戻れなかったから」


 蓮は少しだけ考えて続ける。


「……最後までクリアしたら、出られると思った」


 担当者が蓮を見る。


「ダンジョンを攻略すれば、脱出できる可能性があると考えたんですね」


「……はい」


 担当者はそれを記録した。


 いくつか確認が続いたあと、質問が蓮本人へ移った。


「黒瀬さん」


「……はい」


「あなたは昨日、ダンジョンへ入場してから非常に短い時間で四十五階層へ到達しています」


「……はい」


「どのように?」


「……走って」


 会議室が静かになった。記録担当の職員が手を止める。


「……走って?」


「……はい」


「四十五階層まで?」


「……はい」


「途中には多数の魔物がいたはずですが」


「……いた」


「それらは?」


「……倒した」


「すべて?」


 蓮は少し考える。


「……邪魔だったのは」


 玲奈が横を向く。笑ってはいけないと思っているのが、表情で分かった。


「何体ほど倒したか覚えていますか?」


「……覚えてない」


「……そうですか」


 職員が記録へ何かを書き込む。支部長が次の資料へ目を移した。


「では、五十階層について改めて確認します」


 会議室の雰囲気が少し変わる。


「昨日、帰還直後にも伺いましたが、最深部にいたのは《ヴァルゼイン》と呼ばれる上位悪魔」


「……はい」


「そして《鑑定遮断》Lv.10を持っていたにもかかわらず、黒瀬さんは《鑑定》で情報を確認できた」


「……はい」


 支部長は蓮を見る。


「我々の監視では、最後まで種族すら特定できませんでした」


 昨日の帰還直後。そこまではすでに報告を受けている。


 今回確認したいのは、その先だった。


「昨日は詳しい戦闘内容まで確認できませんでした」


 支部長が続ける。


「そのヴァルゼインを倒したのは、黒瀬さん一人で間違いありませんか?」


「……はい」


「神崎さんたちは?」


「見ていただけです」


 美月が答える。


「正確には、私たちが参加できる戦闘ではありませんでした」


 職員たちの視線が蓮へ集まる。


「黒瀬さん。ヴァルゼインとの戦闘で、苦戦はしましたか?」


「……してない」


 即答だった。一人の職員が思わず聞き返す。


「……していない?」


「……はい」


「《鑑定遮断》Lv.10を持ち、こちらでは種族すら判別できなかったほどの存在です。それでも?」


「……弱かったから」


 会議室が静まり返る。


 支部長がゆっくり聞く。


「……何と比較してですか?」


 蓮は普通に答えた。


「……古龍」


 完全な沈黙。記録担当者の手が止まり、ダンジョン管理担当も蓮を見たまま固まる。


「……古龍?」


「……はい」


「戦ったことがあるのですか?」


「……あります」


「まさか……倒した、と?」


「……はい」


 その瞬間、会議室の空気がさらに重くなった。


 玲奈が小さく呟く。


「やっぱりこうなるよね……」


 ひなたも静かに頷いた。


 二人は昨夜、その話を聞いている。だからこそ、ギルド側の反応がよく分かった。


 支部長が一度息を整える。


「黒瀬さん」


「……はい」


「あなたは一体、どこでその力を?」


 蓮が黙った。


 昨夜、美月、玲奈、ひなたには話した。十年間、何があったのか。どうやって生き残ったのか。どうやって強くなったのか。


 けれど、目の前にいる人たちへ同じことをどこまで話せばいいのか、蓮には分からなかった。


 その沈黙を見て、美月が口を開く。


「その質問に、全部答える必要はありますか?」


 支部長が美月を見る。


「神崎さん」


「昨日のダンジョンについて必要なことなら、私たちもできる限り答えます」


 美月は落ち着いた声で続ける。


「でも、蓮が十年間どこで何をしていたのか。どんなスキルを持っているのか。何を持っているのか」


 一度、蓮を見る。


「そこまで全部話す義務はありませんよね?」


会議室が静かになる。


 支部長は少し考えたあと、頷いた。


「……その通りです」


 美月の表情が少し和らぐ。


「我々としても、黒瀬さんの過去や、保有しているスキル、アイテムについて無理に聞き出すつもりはありません」


 蓮が支部長を見る。


「ただ」


 支部長は資料へ視線を落とした。


「今回のSランク化したダンジョンについては、今後の対策のためにも、できる限り情報を残しておきたい」


「……はい」


「ですので、黒瀬さん」


 支部長が蓮を見る。


「話せる範囲で構いません」


「……?」


「五十階層で何があったのか。そして、そこにいた《ヴァルゼイン》について、あなたが《鑑定》で確認した情報を教えていただけませんか?」


 蓮は少しだけ考える。


「……ステータスも?」


「可能であれば」


「……分かりました」


 美月が蓮を見る。蓮は小さく頷いた。


「……それなら、話せる」


 支部長が資料を開く。


「ありがとうございます」


 そして、五十階層で何が起きたのか。


 その詳細な確認が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
なんのアイテム持っているかは話す必要ないですよね(キリッ は良いけど美月ちゃんや、、、 私死にました、でも今ピンピンしてみんなの前にいまーす!じゃないんだわ、、、そんなフリ入れたら生き返らせる方法持っ…
ギルドが情報集めるのって、何でだろう。 冒険者が命懸けで戦った時の情報を無料で得て、「今後のため」? 命懸けで得たものを勝手に無料配布されるのか…?せめて情報への対価を出すと事前に言わないと。
うーん さすがに もう少し流暢にコミュニケーションとってもらわないと読みにくい。 知能レベルはダンジョンでは上がらなかったのかな。今の状態が3歳レベルくらいだから せめて1話のレベルくらいには回復して…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。