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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第二部 10年ぶりの日常、そして再び

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第132話 古龍を越えた日

玲奈が蓮を見る。


「《超越者》を手に入れた直後に?」


「……うん」


 蓮が意識を取り戻したあと、古龍は、まだ百階層にいた。


 ただ、先ほどまでとは、明らかに様子が違っていた。


「……警戒してた」


「古龍が?」


「……うん」


 《無限成長》と、《生存適応》。二つのスキルが融合した時、蓮の魔力は、一気に膨れ上がった。


 百階層を揺らし、地面を砕き、岩壁に亀裂を走らせるほどの魔力。


 それを感じた古龍が、蓮を見据えたまま、わずかに、後退した。


「さっきまでとは、反応が違った?」


 玲奈が聞く。


「……うん」


「どんな感じ?」


「……もっと、警戒してた」


 古龍にも、分かったのだろう。先ほど倒したはずの人間が、もう、同じ状態ではないことを。


「蓮自身は、何が変わったか分かった?」


「……すぐ分かった」


「どんな感じ?」


 蓮は少し考える。


「……全部、分かりやすくなった」


「全部?」


「……音とか」


 空気の流れ。地面の僅かな振動。周囲を流れる魔力。


 それまでも、感じ取ることはできた。けれど、《超越者》を得たあとは、そのすべてが、以前とは比べものにならないほど、鮮明になっていた。


「……古龍の魔力も見えた」


「見えた?」


「……どこに集めてるか、分かった」


 攻撃する直前、どの場所へ、どれだけの魔力を集めているのか。


 身体の動き。筋肉の僅かな変化。魔力の流れ。


 それらを感じ取ることで、次に何をしてくるのか、以前より、遥かに分かるようになっていた。


 ひなたが息を呑む。


「予測できるようになったってことですか?」


「……近いと思う」


 さらに、魔力の扱いも、変わっていた。


 黒月へ魔力を流せば、以前より、遥かに自然に、思った場所へ、思っただけの魔力が流れる。


「それで、もう一度?」


「……うん」


 古龍が、先に動いた。巨大な身体が、一気に蓮へ迫る。振り下ろされる爪。


 さっきまでなら、避けるために、全神経を集中させていた攻撃。


 けれど。


「……遅く見えた」


 玲奈が目を見開く。


「さっきまで苦戦してた相手が?」


「……うん」


 大きく避ける必要すらなかった。一歩。半歩。僅かに身体をずらす。


 それだけで、爪は、蓮の横を通り過ぎる。


 もう一撃。避ける。尾。避ける。噛みつき。


 それも、当たらない。


「一回も?」


「……当たらなかった」


 玲奈が言葉を失う。


 ついさっきまで、真正面から受ければ、身体ごと吹き飛ばされていた。避けるために、全神経を集中させなければならなかった。


 その古龍の攻撃が、《超越者》を得たあとの蓮には、はっきりと見えていた。


 古龍が、大きく翼を広げる。空へ、一気に舞い上がった。


 そして、上空から、巨体そのものを武器にするように、急降下する。


「それも?」


「……避けた」


 古龍が、地面へ激突する直前。蓮は、僅かに横へ動いた。


 巨大な身体が、地面へ突き刺さる。百階層が、大きく揺れる。


 その横を、蓮が走り抜ける。黒月を振るう。刃が、古龍の鱗を、深く裂いた。


「……前より、簡単に斬れた」


「《超越者》になる前は?」


「……硬かった」


「それが?」


「……普通に斬れた」


 古龍が、明確な苦痛の声を上げた。


 玲奈は、黙って蓮を見る。一度、本当に殺されかけた相手。その相手との力関係が、僅かな時間で、大きく変わっていた。


「……それから」


 蓮が続ける。


「古龍が、今までと違う攻撃を使った」


「違う攻撃?」


「……三つの属性を、一緒に使ってきた」


「三つ?」


「……火と、風と」


 少し間を置く。


「……雷」


 玲奈の表情が変わる。


「三属性を同時に?」


「……うん」


 古龍の周囲へ、膨大な魔力が集まった。炎。風。雷。


 三つの属性。それらを、古龍が操る。


 混ざり合った魔力は、先ほどまでとは、比べものにならないほど大きな、破壊の力へ変わっていった。


「さっき蓮を倒した攻撃より?」


「……強かったと思う」


 美月の表情が強張る。


「それを……どうしたの?」


「……斬った」


「え?」


 玲奈が聞き返した。


「今、斬ったって言った?」


「……うん」


「その攻撃を?」


「……うん」


 古龍が、口を開く。次の瞬間、炎。風。雷。


 三つの属性を含んだ、巨大なブレスが、百階層を埋め尽くすように、蓮へ迫った。


 逃げ場は、ほとんどない。


 けれど、蓮は、逃げなかった。黒月を構える。刀身へ、魔力を集中させる。


「……前より」


 蓮が言う。


「魔力が、ちゃんと言うこと聞いた」


 一本の刃へ、魔力を、極限まで凝縮する。


 そして、振る。


 一閃。


 巨大なブレスが、真ん中から、二つに裂けた。


 玲奈が、完全に黙った。ひなたも、何も言えない。


「……本当に?」


 美月が尋ねる。


「……うん」


「古龍のブレスを?」


「……斬った」


 左右へ分かれた、巨大な魔力の奔流。その間に、蓮は、無傷で立っていた。


「……そこからは」


 蓮が続ける。


 戦況は、完全に変わった。


 古龍が、爪を振るう。避ける。蓮が斬る。鱗が裂ける。


 古龍が、尾を振るう。避ける。また、斬る。


 古龍が攻撃するより、蓮の方が、先に動く。


「《自己再生》は?」


 玲奈が聞く。


「……動いてた」


「じゃあ、また傷が治る?」


「……治る前に斬った」


「……え?」


 古龍の傷が、塞がり始める。その前に、次の傷を作る。


 再生する。さらに、斬る。また、再生が始まる。


 その速度より、さらに速く、攻撃を重ねる。


「再生速度を上回ったの?」


「……うん」


 一撃。さらに、一撃。もう一撃。


 古龍の鱗が裂ける。血が流れる。傷が増える。


 再生が、追いつかない。古龍は、反撃する余裕すら、次第に失っていった。


 玲奈が、小さく呟く。


「さっきまで……蓮の方が死にかけてたんだよね?」


「……うん」


「それが《超越者》を手に入れたあとには……」


 蓮は、静かに答えた。


「……俺の方が強かった」


 古龍が、それでも、立ち上がろうとする。


 蓮は、黒月を構えた。そして、最後の一撃を、振り抜いた。


 古龍の巨体が、大きく揺れる。そのまま、地面へ、崩れ落ちた。


 巨大な音が、百階層に響く。それきり、古龍は、動かなかった。


「……倒した」


 蓮が言う。


 玲奈も、ひなたも、しばらく、何も言わなかった。


 美月は、静かに蓮を見る。あの日、蓮が、手のひらへ出して見せた、巨大な魔石。


 その持ち主が、今、蓮が話した、この古龍だった。


「……あの魔石」


 美月が呟く。蓮が、美月を見る。


「……うん」


「古龍のだったんだね」


「……うん」


 玲奈が、美月を見る。


「待って」


「うん?」


「美月、古龍の魔石見たことあるの?」


「……ある」


「ある!?」


 玲奈が声を上げる。ひなたも、驚いて美月を見る。


「蓮が前に、見せてくれたの」


「古龍の魔石を!?」


「……うん」


 玲奈は、ゆっくり蓮を見る。


「……あんた」


「……?」


「古龍倒して、その魔石まで持って帰ってきたの?」


「……うん」


「……そっか」


 玲奈は、それ以上、何も言えなくなった。


 世界ランキング一位。Unknown。今日まで、その名前だけが、世界中に知られていた。


 けれど、その強さが、どこで、どうやって作られたのか、誰も知らなかった。


 今、玲奈とひなたは、ようやく、その一端を、知った。


 十年間、一人きりのダンジョンで、蓮が、本当に、死ぬ寸前まで戦い、それでも生き残り、最後には、古龍すら倒したことを。


 玲奈が、しばらくしてから尋ねる。


「……百階で古龍を倒して」


 蓮を見る。


「それで、終わりだったの?」


「……うん」


 蓮は頷いた。


「……戦うのは、そこで終わり」


「じゃあ……」


「……あとは」


 蓮は、少しだけ視線を落とす。


「……帰った」


 美月が、静かに蓮を見る。


「地上に?」


「……うん」


 十年間、一人で進み続けたダンジョン。その最後の敵を倒して、蓮は、ようやく、地上へ帰ることになった。

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― 新着の感想 ―
1から10まで説明するの蛇足すぎる……想像の余地がなさすぎて喜怒哀楽皆無…感情の振れ幅まったくない、説明会だと割り切るにしてもムダ描写が多すぎる、言い方悪いけど文字数稼ぎにしかみえない
みんな疲れてるのに、説明長すぎません?
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