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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第二部 10年ぶりの日常、そして再び

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第123話 地上帰還

白い光の中へ、四人は足を踏み入れた。


 視界が白に染まる。足元の感覚が、一瞬だけ消える。


 浮いているような。引き上げられているような。


 不思議な感覚。


 美月は反射的に、蓮の袖を掴んだ。


 蓮が少しだけ美月を見る。


「……大丈夫」


「うん」


 美月は小さく頷いた。


 玲奈とひなたも、すぐ後ろにいる。誰も欠けていない。


 四人で。地上へ帰る。


 次の瞬間。


 白い光が弾けた。


 冷たい夜気が肌に触れる。足元に硬い地面の感触が戻る。


 視界が開けた。


 そこは、ダンジョンの入口前だった。


 封鎖線。投光器。救助隊。ギルド職員。医療班。警備の冒険者たち。


 少し離れた場所には、報道陣まで集まっている。


 誰もが、入口を見ていた。


 そして。


 白い光から四人が現れた瞬間。


 その場の空気が止まった。


「……出てきた」


 誰かが呟いた。


 次の瞬間。


「《アストラ》だ!」


「神崎美月だ!」


「水野玲奈もいる!」


「小川ひなたも!」


「全員、生きてるぞ!」


 叫び声が広がった。


 医療班が一斉に走り出す。ギルド職員も駆け寄ってくる。


 救助隊の冒険者たちは、信じられないものを見るように四人を見つめていた。


 Sランクへ変異したダンジョン。突入すら困難だった場所。


 その奥に取り残された《アストラ》。


 全員生存。


 ありえない結果だった。


「神崎さん!」


 医療班の一人が、美月の前に膝をつく。


「意識はありますか? 痛むところは?」


「大丈夫です」


 美月は答えた。


 けれど、医療班はすぐには納得しない。


「検査します。こちらへ」


「私もですか?」


「もちろんです。全員です」


 玲奈が苦笑する。


「まあ、そうなるよね」


 ひなたも小さく頷いた。


「一度、ちゃんと見てもらった方がいいです」


 蓮は美月を見ていた。周囲の騒ぎには、ほとんど反応していない。


 美月の顔色。呼吸。歩き方。


 それだけを確認している。


「……美月」


「何?」


「……痛いところは」


「大丈夫だよ」


「……本当に?」


「本当に」


 美月は少し笑った。


「蓮のおかげで、もう痛くない」


「……そうか」


 蓮は頷いた。


 だが、それでも視線は美月から離れない。


 医療班の女性が蓮を見る。


「あなたも検査を受けてください」


「……俺は大丈夫」


「しかし、ダンジョン深部から帰還したばかりです」


「……怪我してない」


 短い返事。


 医療班は困惑した。


 確かに、蓮の身体に目立った傷はない。服に汚れはある。


 だが、血もない。呼吸も乱れていない。


 Sランク変異ダンジョンの最深部から帰還した直後には見えなかった。


 その異様さに、周囲の職員たちが言葉を失う。


 そのとき。


 人垣が割れた。


 支部長が歩いてくる。周囲の職員が自然と道を開ける。


 その表情は硬い。だが、目には安堵もあった。


 支部長は、まず美月たちを見る。


「神崎美月。水野玲奈。小川ひなた」


 三人が姿勢を正す。


「よく戻った」


 その一言に、ひなたの目に涙が滲んだ。玲奈も小さく息を吐く。


 美月は静かに頭を下げた。


「……ありがとうございます」


 支部長は頷き、それから蓮へ視線を向けた。


 周囲の空気が変わる。


 職員たち。冒険者たち。警備に立っていた者たち。


 誰もが、蓮を見ていた。


「黒瀬蓮」


「……うん」


 蓮はいつも通りだった。


「君が、攻略したのか」


「……うん」


 短い返事。あまりにも軽い。


 周囲がざわつく。


「攻略って……」


「本当に一人で?」


「最深部まで行ったのか?」


「《アストラ》を救助して、そのまま攻略……?」


 支部長は続ける。


「最深部に何がいた」


「……悪魔」


 その言葉に、近くの職員の表情が変わる。


「悪魔……?」


 支部長の声も低くなる。


「名前は分かるか」


「……ヴァルゼイン」


 周囲に緊張が走った。


 ギルド職員が慌てて端末へ入力する。


「ヴァルゼイン……該当データなし」


「上位悪魔種の記録に照合を」


「現在照合中です!」


 蓮はそのやり取りを見ても、特に反応しなかった。


 支部長は目を細める。


「なぜ名前が分かった」


「……鑑定した」


 職員たちの手が止まった。


「鑑定……?」


「最深部反応、解析不能だったはずでは……」


「監視システムでも種族判定すら出なかったぞ」


 ひなたが小さく言う。


「ヴァルゼインには、《鑑定遮断》Lv.10がありました」


 その場が一瞬、静まった。


「Lv.10……?」


「鑑定遮断が?」


「そんなものを……」


 ざわめきが広がっていく。


 支部長の表情も変わった。


「それを、君は見抜いたのか」


「……うん」


 蓮は頷く。


「……見えた」


 それだけ。それだけだった。


 だが、その場にいた者たちは違った。


 鑑定遮断Lv.10。世界でも一握りしか到達しないLv.10スキル。


 それを突破して情報を読み取る。


 それがどれほど異常なことか。冒険者であればあるほど分かる。職員であればあるほど分かる。


 もちろん、玲奈にも分かっていた。


 ダンジョンの中にいた時点で、蓮が常識外れの存在であることは嫌というほど見せつけられている。


 死者を戻す霊薬。HPとMPを完全回復させるエリクサー。Lv.10の《鑑定遮断》を突破する鑑定。


 古龍を倒したという事実。そして、Sランク変異ダンジョンの最深部を圧倒した力。


 分からないはずがない。蓮が異常だということくらい。


 だが。


 外に出て初めて分かったことがある。


 周囲の視線が。ギルド職員の緊張が。冒険者たちのざわめきが。


 玲奈に、それを教えていた。


 蓮は、ただ強いだけではない。


 地上の冒険者社会においても、すでに特別な意味を持つ存在だった。


「……ねえ、美月」


 玲奈が小声で言う。


「何?」


「外の反応、おかしくない?」


 美月は答えなかった。答えられなかった。


 玲奈は周囲を見る。


 冒険者たちが蓮を見ている。


 恐れ。驚愕。畏怖。好奇心。


 そのすべてが混ざった視線。


 ひなたも不安そうに呟いた。


「蓮さんって……本当に、何者なんですか?」


 その問いに、美月はすぐには答えられなかった。


 答えようとした、そのとき。


 封鎖線の向こう。


 報道陣の方から声が上がった。


「黒瀬蓮さんですか!」


 カメラが一斉に向けられる。


「Unknown本人というのは本当ですか!」


 その言葉に。


 玲奈の表情が止まった。


「……Unknown?」

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 汝の正体見たり! 前世魔神Unknown!   ……バーレーたーかー。 
ここで切るか! 続き早く!
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